速報:第21回SCRP日本代表選抜大会

2015 年 10 月 12 日 コメントはありません

2015年8月21日(金),歯科医師会館に於いて,平成27年度(第21回)日本歯科医師会/デンツプライ スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラムが開催されました.

今年度は27校の参加があり,以下4名が上位入賞されました.

優勝/日本代表 - 基礎部門 第1位:田中 大貴さん,東京医科歯科大学歯学部 6年生 
閉経後骨粗鬆症モデルにおけるSema3A発言制御機構

準優勝 – 臨床部門 第1位:大平 匡徹さん,新潟大学歯学部 4年生
種々の条件刺激がもたらす嚥下機能の変化

基礎部門 第2位:成昌 ファンさん,鹿児島大学歯学部 5年生
メカニカルストレスによる間葉系幹細胞の分化能維持

臨床部門 第2位:中島 美咲さん,北海道医療大学歯学部 6年生
歯科疾患予防のための『ムギネ酸抽出物含有“金平糖”』の開発

その他および詳細は,追ってupdate予定です.

取り急ぎ,上位入賞者の情報のみを速報としてお知らせいたします.

【追記】
デンツプライ三金@Press東京医科歯科大学医療経済出版株式会社Ishiyaku Dent Webヒョーロン・ニュース,による記事等はそれぞれのリンク先をご参照ください.

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2015年・夏

2015 年 8 月 1 日 コメントはありません

第21回日本代表選抜大会は2015年8月21日(金)に日本歯科医師会館にて開催されます。一般見学は14時頃~16時頃に予定されております。事前登録が必要になりますので、参加する/参加できるかもしれない方は8月7日(金)までに代表・北詰までご連絡ください。

また、公式プログラム終了後は新会員を歓迎する懇親会がJDA会館近くにて開催されます。
都内近郊にいらっしゃるOB/OGの方々はぜひご参加ください!!

懇親会の詳細については、MLで配信された[SCADA:000704]をご覧いただくかCONTACT US から代表・北詰までお気軽にお尋ねください。

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第20回大会

2015 年 5 月 17 日 コメントはありません

第20回大会 2014年(平成26年)8月20日 参加校28校

タイトルおよび発表内容要旨 (上位入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝/日本代表 – 基礎部門 第1位:道家 碧,昭和大学歯学部,6年生

歯周病原細菌の産生するヌクレアーゼの解析

歯周病は、プラーク中の歯周病原細菌によって引き起こされる炎症性疾患である。歯周病原細菌は、宿主の免疫防御を回避して定着し、歯周病の病態の成立に関与している。
好中球から産生されるn e u t r o p h i l e x t r a c e l l u l a r t r a p s (N E T s)というD N Aやヒストンからなる網目状の細胞外構造体が病原微生物を捕捉し、排除を担うという自然免疫システムが報告された。歯周病原細菌が最初に直面する歯肉上皮においてもこのN E T sが形成されている。我々は、歯周病原細菌が細胞外に分泌するn u c l e a s eがN E T sを分解し、宿主の免疫防御を回避して、細菌の定着を可能にしているのではないか、という仮説を立てた。そこで、本研究では、まず歯周病原細菌のn u c l e a s e 産生能を調べ、n u c l e a s e 活性をもつP r e v o t e l l a i n t e r m e d i a のゲノムデータベースからn u c l e a s eホモログ(n u c D )を見出し、組換えタンパク質を用いて酵素学的性質を解析した。その結果、組換えタンパク質のn u c l e a s e 活性にはM g2 +とC a2 +が必須であり、一本鎖D N A、二本鎖直鎖D N A、二本鎖環状D N Aの分解活性が認められた。加えて、ヒト好中球から誘導したN E T sの分解活性を検討した。以上の結果から、P . i n t e r m e d i a はn u c l e a s e 活性によりN E T sの防御機構を回避する可能性が示唆され、他のn u c l e a s e 活性をもつ歯周病原性細菌も同様の機構を持つことが示唆された。

準優勝 – 臨床部門 第1位:神田 舞,日本大学歯学部,5年生

OCTを用いたバイオアクティブガラス含有歯磨剤がエナメル質の脱灰に及ぼす影響の検討

口腔内において、歯質は脱灰と再石灰化を繰り返しながら平衡状態を保っている。もし、この平衡状態が崩れて脱灰傾向が強くなると、結果的に齲蝕を形成する。近年、歯質の脱灰抑制効果を有するとされるバイオアクティブガラス含有歯磨剤が開発され、齲蝕抑制効果に期待がもたれている。しかし、この歯磨剤に関しては、市販から間もないこともあり効果の詳細については不明な点が多い。そこで、バイオアクティブガラス含有歯磨剤がエナメル質の脱灰抑制に及ぼす効果について、光干渉断層法 (O C T)を用いて検討した。
その結果、O C Tで得られたシグナルピーク強度ならびに1 / e2における波形の幅の変化は、コントロール群で実験期間の変化が認められなかったのに対して、バイオアクティブガラス含有歯磨剤塗布群では実験開始の7日間で大きく変化し、その後わずかに変化する傾向を示した。以上のように、本実験の結果から、O C T 装置を用いることによってバイオアクティブガラス含有歯磨剤の有する再石灰化および脱灰抑制効果を確認することができた。また、再石灰化能を有する口腔ケア用品を使用することによって、口腔環境の健康を維持および増進することが可能であることが示唆された。

基礎部門 第2位:本池 総太,広島大学歯学部,6年生

間葉系幹細胞集塊c l u m p s o f M S C / E C M c o m p l e xを用いた新規再生治療法開発

M e s e n c h y m a l s t e m c e l l s(M S C s)は多分化能を有し、組織再生治療法への応用が期待されている。私たちの研究室では、これまでにMSCs 自身が産生する細胞外基質(ECM)を利用して三次元的人工細胞集塊clumps of MSC/ECM complex(C-MSCs)を作成した。C-MSCsは細胞集塊の状態での培養が可能であり、人工の足場材料を用いることなく欠損組織へ移植できることが示された。
さらに、分化の方向性が移植部周囲の環境に影響されてしまうM S C sにとって、e x v i v oでその分化程度・細胞機能を制御することができれば、目的にあわせてより効率的な治療効果をもたらすことが可能になると考えた。本研究では、ex vivoにおいてC-MSCsの骨分化能、免疫調節能を制御し、新規細胞治療法としての有効性を評価することを目的とした。
1)骨分化誘導培地にてC-MSCsを培養し、Osteopontin mRNA 発現量、Alkaline phosphatase 活性、カルシウム含有量について分析を行ったところ、いずれも有意な上昇がみられた。
2)C-MSCsをIFN-γで刺激し、抗炎症性サイトカインIL-10および免疫抑制性酵素indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の産生量を測定したところIL-10の時間依存的増加とIDOの時間、濃度依存的増加が認められた。
以上の結果から、C-MSCsは治療用途にあわせてex vivoで骨分化能、免疫調節能を制御できる、より効率的な新規細胞治療法となりうることが示唆された。

臨床部門 第2位:三上 優,大阪歯科大学,5年生

睡眠中のアロマテラピーはS I g Aの分泌促進と唾液中細菌数の減少を促進する

睡眠時には唾液分泌量が減少するので、齲蝕や歯周病の発症頻度が上昇すると考えられている。一方、アロマテラピーは免疫強化作用や唾液分泌促進作用があることが知られていることから、本研究では睡眠時の口腔環境の改善を目的として、睡眠時に用いることができる唾液採取器の開発を試み、アロマ適用が睡眠時の唾液の抗菌作用にどのような成果があるかを検討した。アロマ非適用時では、唾液中のα-アミラーゼ活性は入眠時よりほとんど変化はなかったが、S I g A 濃度は徐々に増加し起床時に最大値に達した。一方、アロマ適用によって睡眠の深度に影響はなかったが、α-アミラーゼ活性およびS I g A濃度が顕著に増加し、総細菌数の増加は抑制された。以上の結果から睡眠中にアロマを適用すると、唾液による細菌の増殖抑制効果が上昇することが明らかとなり、歯科疾患の予防効果がある事が示唆された。また今回開発した唾液採取器は極めて有用であることがわかったので、今後はアロマの種類および上記以外の抗菌因子についても検討を重ね睡眠中の口腔環境の向上に寄与できると考える。

赤松 由佳子 大阪大学歯学部, 4年生

トリセルラータイトジャンクションを介した化膿レンサ球菌の上皮バリア突破機構

化膿レンサ球菌はヒトの咽頭炎や扁桃炎の起因菌として知られるが、時として、致死性の高い劇症型レンサ球菌感染症を惹起する。化膿レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症を発症させるためには、物理バリアである上皮細胞層を突破する必要がある。本研究では、化膿レンサ球菌がプラスミノーゲン存在下において、3つの細胞の角が接するトリセルラータイトジャンクションから上皮バリアを突破することに着目し、その分子メカニズムを解析した。トリセルラータイトジャンクションの主な構成分子であるトリセルリンとプラスミノーゲンの結合は、表面プラズモン共鳴解析で検討した。その結果、プラスミノーゲンはトリセルリンの細胞外ドメインと結合することを確認した。また、化膿レンサ球菌は表層タンパクであるエノラーゼとプラスミノーゲンの相互作用を介してトリセルリンに結合することをE L I S A 法で証明した。さらに、エノラーゼ変異体はトリセルラータイトジャンクションへの局在が観察されなかったことから、化膿レンサ球菌はエノラーゼとプラスミノーゲンの結合を介してトリセルラータイトジャンクションに局在し、この領域から上皮バリアを突破することが示唆された。

東根 まりい, 岩手医科大学歯学部, 3年生

上顎洞底挙上術の解剖学的リスクファクター -動脈-

上顎臼歯部で骨吸収が著しいケースに対するインプラント埋入手術に必要な骨の厚みを増成する上顎洞底挙上術ではシュナイダー膜を洞底から剥離、挙上するが、上顎洞内に分布する血管の詳細な報告はほとんどない。上顎洞粘膜に分布する動脈は4 種類あり、全て顎動脈の枝である。上顎洞内側壁から蝶口蓋動脈の枝、下行口蓋動脈の枝、後方から後上歯槽動脈、上壁と前壁から眼窩下動脈の枝であった。解剖実習で使用したご遺体1 0 体2 0 側の上顎洞外側壁で血管分布を検索した。後上歯槽動脈は歯槽孔より上顎洞内に入り、前方に向かって走行し、眼窩下孔付近の孔から侵入した眼窩下動脈の枝または前上歯槽動脈の枝と吻合していた。上顎洞底からの高さは平均6 . 2 ㎜( 2-9 ㎜)であった。この上顎洞外側壁を前後方向に走行する動脈は現時点では和名はつけられておらず、古い文献にM a l a r a r t e r yが記載されていたが、現在の教科書には記載がない。一方、上顎洞底挙上術が一般化され、それに伴い、1 5 年前にA l v e o l a r a n t r a l a r t e r yと命名されたが和名はない。私は歴史的にM a l a r a r t e r y という名称の復活を推奨したい。

内野 加穂, 長崎大学歯学部, 5年生

リクイリチゲニンによる破骨細胞形成抑制効果

【問題点】現在使用されている代表的な骨代謝治療薬は、ビスフォスフォネート製剤やエストロゲン製剤などであるが、これらは副作用が強く、副作用の少ない新しい予防薬・治療薬が求められている。
【仮説】我々は副作用が少なく強力な破骨細胞抑制活性を持つ天然化合物に着目しており、以前、抗炎症・抗酸化作用を持つ生薬、黄連に含まれるベルベリンが破骨細胞形成を抑制することを報告した。本研究では同様に抗炎症・抗酸化作用を持つ甘草に含まれるリクイリチゲニンに破骨細胞形成抑制作用があるのではないかと考え、実験を行った。
【方法】マウスより採取した骨髄細胞をM – C S FとR A N K Lで刺激する系を用いた。T R A P 染色により多核破骨細胞の形成を、細胞増殖試験により細胞増殖能を評価し、ウエスタンブロッテング法を用いて破骨細胞のマーカー蛋白の発現とR A N K L 刺激後のシグナルの活性化を比較した。
【結果】リクイリチゲニンは、主にR A N K L 刺激後のIκBαのリン酸化を阻害することでマウス骨髄細胞の破骨細胞形成を濃度依存的に抑制したが、破骨細胞に対する細胞毒性は認められなかった。
【結論】リクイリチゲニンは細胞毒性が極めて低く、比較的強い破骨細胞抑制活性を持つことが示唆される。

恵谷 陽介, 神奈川歯科大学, 4年生

新規生物学的歯内療法の開発に関する基礎研究

【目的】歯内療法の理想的治癒形態は根尖部の硬組織被蓋である。本研究は、M i n e r a l t r i o x i d ea g g r e g a t e(M T A)セメントを用いて、根尖歯周組織に存在する細胞の硬組織誘導を制御することによって生物学的に治癒可能な新規歯内療法を開発することを目的とした。
【材料と方法】MTAセメントの規格試料片を作製後、ヒトセメント芽細胞(HCEM)、ヒト歯髄細胞(HPulp)およびヒト歯根膜細胞(H P L C)と2 4~9 6 時間の共培養後に細胞を回収した。回収後の各細胞は、定量R T―P C R 法を用いてB o n e S i a l o p r o t e i n (B S P), O s t e o c a l c i n (O C N), A l k a l i n e p h o s p h a t a s e( ALP)の発現について解析を行った。
【結果】すべての供試細胞は、2 4時間後にB S P , O C N 発現が最大になることが示され, 石灰化組織(骨またはセメント質)の形成能力が確認された。また、A L P 発現上昇によりリン酸カルシウムの析出による硬組織形成誘導が促進される可能性が示唆された。
【考察】M T Aセメントは、根尖部歯周組織に存在するH C E M、H P u l p、H P L Cの分化誘導を促進し根尖孔封鎖時の硬組織誘導に関与する事が示された。

大山 剛平, 岡山大学歯学部, 4年生

舌苔スコアと口腔内アセトアルデヒド濃度の関係

アセトアルデヒドの発がん性が指摘されている。一方、口腔常在菌がアルコールやグルコースを代謝しアセトアルデヒドを産生すること、また、1日のブラッシング回数が多い人ほど上部消化管がん発症のオッズ比が低くなることが報告されている。しかし、実際のヒトの口腔内アセトアルデヒド濃度と口腔衛生状態との関係については明らかになっていない。
本研究では、口腔衛生状態が不良であると口腔内アセトアルデヒド濃度が高い、という仮説を設定し、口腔内アセトアルデヒド濃度と舌背表面の細菌数、舌苔の付着範囲、口腔内状態、生活習慣、アルコール代謝能力との関係を調べた。
その結果、舌苔の付着範囲が大きい者ほど口腔内アセトアルデヒド濃度が有意に高かった。また、1日のブラッシング回数が2 回以上の者のほうが、1 回の者と比較して口腔内アセトアルデヒド濃度が有意に低かった。一方、歯垢の付着状態など、その他の指標との関連は認められなかった。
以上より、口腔内アセトアルデヒド産生の主な原因は舌苔中の細菌であり、アセトアルデヒドの産生を減少させるためには、ブラッシングに加えて舌苔を除去することが重要であることが示唆された。

木村 太一, 松本歯科大学, 4年生

江戸時代の出土歯と現代日本人の比較解析

4000本を超える人間の歯が寺院の骨堂跡と思われる場所から出土した。これらの歯は同場所から出土した貨幣などより江戸中期の歯と推定される。
江戸時代の食生活は現代と異なり居住地域や階層により相違があった。主に米や粟、稗などの穀物が中心であったが、その反面、現代の食生活は多種の食品によって成り立っている。
我々は、食物の物理的性質の違いが現代と江戸時代の歯の構造や形態に反映されているのではないか、という仮説を立てた。また、江戸時代の平均寿命は現代より短かったため、歯が物理的刺激を受け、第三象牙質が形成される機会が少なかったと思われる。反面、江戸時代のヒトの口腔内は現代人に比べて衛生状態が不良であると想像され、第三象牙質の成因となる齲蝕の罹患率が増加しうる環境となっていたと推察される。これらの仮説をもとに江戸時代の歯と現代の歯の歯髄腔の形態比較や体積比をもとめ、比較解析を行った。
結果、江戸時代と現代人の違いは歯の内部構造に大きな影響を及ぼしていないという結論に至ったが、この結果からはサンプル数が少なく断定的なことをいうことはできず、今後はサンプル数を増やし確実なデータとする必要がある。

倉澤 馨, 東京歯科大学, 4年生

象牙芽細胞における細胞外H+ 感知機構: Gタンパク質共役型H+ 受容体は細胞外C a2 + 濃度依存性を示す

象牙芽細胞は様々な侵害刺激を受容し、第三象牙質・反応性象牙質を形成する。象牙質齲蝕により象牙細管が口腔へ露出すると、齲蝕原因菌が象牙細管内に侵入し、産生した酸が象牙質を脱灰する。本研究は、象牙芽細胞の細胞外H+ 受容タンパク質に着目し、象牙芽細胞機能を駆動する細胞内Ca2 + シグナル伝達の解明を目的とした。実験にはマウス由来の象牙芽細胞系細胞を用いた。細胞外刺激に対する細胞内Ca2 + 濃度 ([Ca2 + ]i) 変化は、fura-2を用いて記録した。細胞外Ca2 + 存在下と非存在下でのH+ 刺激は、[Ca2 + ]iを一過性に増加し、H+ 依存性を示した。pH 7 .0 – 6 .0の範囲における [Ca2 + ]iの変化は、Ca2 +の存在下・非存在下で変化は見られなかったが、pH 5 .5以下の刺激による[Ca2 + ]iの変化は、Ca2 + 非存在下で有意に増加した。Ca2 + 非存在下でのcyclopiazonic acidは、pH 5 .5による[Ca2 + ]iの増加を有意に抑制した。
同様にCa2 + 非存在下でのdantroleneは、pH 5 .5による[Ca2 + ]iの増加を有意に抑制した。牙質石灰化前線における細胞外Ca2 + 濃度の増減が、象牙芽細胞のH+ 刺激による[Ca2 + ]iの増加に対するフィードバック機構となることを示している。象牙質表面へのH+ 刺激は、象牙芽細胞のH+ 受容体で感知され、Ca2 + 濃度依存的なCa2 + 輸送が生じる結果、第三象牙質形成が促進することが示唆される。

後藤 達哉, 日本歯科大学生命歯学部, 4年生

歯原性腫瘍の3次元組織構造解析

歯原性腫瘍は胎生期の歯胚組織に由来する。病理組織学的な特徴として成書の多くが歯胚組織との類似性に触れているが、各種歯原性病変がどの程度歯胚組織の形質を継承しているかは不明である。我々は、2次元組織像では捉えにくい腫瘍構造や進展様式を理解するため、上皮成分を検出するサイトケラチン免疫染色の連続切片画像に基づいてエナメル上皮腫、エナメル上皮線維腫の立体模型を作製し、直視観察した。
濾胞型エナメル上皮腫では、大小不同の腫瘍胞巣が間質組織に向かって伸長するのに対し、叢状型エナメル上皮腫では、網目状の腫瘍胞巣が間質を大小の空間に区画していた。エナメル上皮線維腫では、胞巣基部から複数の突起状胞巣が規則的に配列・出芽していた。歯胚立体模型との比較により、エナメル上皮線維腫の組織環境は歯胚発生の初期段階に相当することが確かめられた。対照観察した舌扁平上皮癌( 悪性腫瘍)では、間質空間に遊離・孤立した癌細胞が散在しており、組織空間内ですべて連結している歯原性腫瘍胞巣とは異なることも確認できた。本解析により、歯原性腫瘍の組織環境・構造を決定しうる要因は3次元的な胞巣形状の解析から推定できることが示された。

佐脇 有美, 東北大学歯学部, 6年生

酸素供給型培養デバイスによる三次元培養細胞の分化促進

近年、多孔性三次元担体に間葉系幹細胞を播種し、骨芽細胞に分化させて体内へ移植する組織工学的な骨再生治療法が開発され、自家骨移植に変わり得る新しい治療法として期待されている。しかし、移植前培養において担体材料に細胞を高密度で増殖させるため通常の培養法では酸素欠乏状態となり、移植用細胞の生存率や活性低下を引き起こす。また、骨芽細胞への分化に時間を要し、移植までに時間がかかることが問題点である。そこで本研究では、移植前培養に用いるための酸素供給型培養デバイスを開発し、間葉系幹細胞株の生存率及び骨芽細胞分化に与える影響について検討を行った。その結果、この酸素供給型デバイスを用いることで培地内酸素濃度を従来法よりも高く維持でき、細胞生存率を向上させることができることがわかった。さらに従来法よりも骨芽細胞分化を有意に促進することが示された。以上より、開発したデバイスは、間葉系幹細胞を生体外で迅速に分化させることができ、活性が高く、生存率の高い移植に適した細胞を調製できることが示唆された。本研究は、骨再生治療における治癒期間の短縮、コスト低減などを可能にすると期待できる。

鹿間 優子, 新潟大学歯学部, 3年生

K l f 4を含む巨大蛋白質複合体の精製

i P S 細胞の作製には、これまで4つの初期化遺伝子(O c t 3 / 4 , K l f 4 , S o x 2 , c – M y c)を導入し、細胞内で発現させる事が必要であった。細胞への遺伝子導入については、ウイルスベクター利用以外の比較的安全な手法が開発されつつあるが、癌化などの危険性を回避する事が難しいのが現状である。そこで、初期化に必要な遺伝子産物すなわちタンパク質を細胞の外から導入する手法を利用したp r o t e i n i P S 細胞(p i S P 細胞)が注目されている。H E K 2 9 3 細胞を用い、ビオチン化された初期化関連タンパク質(K l f 4 及びK l f 4 + S o x 2)の発現、および抽出を行った。s a m p l eを、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーにより分離・精製した。その後S D S – P A G EやN a t i v e – P A G Eさらにw e s t e r n b l o t、C B B 染色を行い複合体の構成するタンパク質について調べた。その結果、K l f 4が2種類の複合体を作ることが判明した。小さい複合体は、リプログラミングにおいて重要であると考えられる。またS o x 2の存在により、この複合体が消失することがリプログラミング効率を下げると考えられた。

成昌ファン, 鹿児島大学歯学部, 4年生

超音波により幹細胞の未分化能を維持させる

間葉系幹細胞(M e s e n c h y m a l S t e m C e l l s:M S C)は、自己再生能力をもつ多能性細胞である。M S Cは培養条件を変えることで、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞へと分化することが知られている。骨欠損に対して、M S Cを骨分化させた細胞を用いて骨再生を効率的に誘導することができれば、歯科臨床における非常に有用な治療法となる可能性がある。M S Cの細胞培養は比較的簡単であり、複数回の継代により大量の細胞数の確保も可能であるが、継代を重ねると、その可塑性や形態も徐々に失われる。しかし、臨床応用のために必要となるM S Cを未分化状態で維持できる技術の完成度はまだ不十分である。そこで、低出力超音波(L o w – i n t e n s i t y P u l s e d U l t r a s o u n d : L I P U S)による物理的刺激でM S Cの未分化を維持できないかという仮説を立てた。M S CにL I P U Sを照射したところ、M S Cを未分化な状態に保つ重要な遺伝子であるO c t 4の発現を上昇した。一方、O c t 4と同様にM S Cの未分化性の保持に関わるN a n o gとS o x 2の発現には影響をしなかった。L I P U Sを照射しながらM S Cの長期培養を行うと、O c t 4の高発現を保ちながら、M S Cの未分化性を保持できることが示唆された。L I P U SによるメカニカルストレスはM S Cの未分化性を調節できる有用なツールである可能性がある。

高橋 一寿, 鶴見大学歯学部, 3年生

唾液中の新規カリクレイン4の分離精製およびコラーゲンに対する分解能

カリクレイン4(K L K 4)は成熟期エナメル質形成過程において重要なプロテアーゼであるが、マウス顎下唾液腺においても遺伝子発現が確認されている。本研究ではヒト唾液中におけるK L K 4の分離精製および機能解析を行うことを目的とした。ヒト安静時唾液を上清と沈殿画分に分離した後、カゼインおよびゲラチンを基質としたザイモグラフィーをEDTA 存在下で行って、MMP 以外のプロテアーゼ(non-MMP)を検出した。さらにK L K 4 抗体を用いたウェスタンブロットを行ってK L K 4の存在を確認した。次いで唾液沈殿画分をヘパリンクロマトグラフィーおよび逆相- 高速液体クロマトグラフィー(R P – H P L C)にて分離し、K L K 4を精製した。このK L K 4を用いてⅠ型、Ⅲ型、Ⅴ型コラーゲンおよびヒト象牙質の不溶性コラーゲンに対する分解能を調べた。唾液K L K 4はゲラチンザイモグラフィーおよびウェスタンブロットにより唾液沈殿画分に含まれる分子量約2 0 k D aのバンドとして検出され、ヘパリンクロマトグラフィーおよびR P -H P L Cによりこのプロテアーゼを分離精製することができた。K L K 4を用いたコラーゲンに対する分解能実験では、いずれのコラーゲンも分解されることが判明した。本研究によりヒト唾液中のK L K 4はコラーゲン分解能を有していることが示された。

武末 康寛, 九州大学歯学部, 4年生

マウス胎生期下顎隆起器官培養法を用いた下顎形態形成の検討

【目的】下顎骨の成長発育は顎顔面骨格へ多大な影響を与えるため、その制御に関する分子メカニズムの解明が望まれる。本研究では、胎生期マウス下顎隆起の器官培養法を用いて、下顎形態形成をmi c r oRNA 2 0 0 a( miR- 2 0 0 a)の働きに着目し検討した。
【方法】胎齢1 0日I C Rマウス胎仔より下顎隆起を摘出し、m i R – 2 0 0 a m i m i cと緑色蛍光標識したc o n t r o l s i R N Aの遺伝子導入をエレクトロポレーション法により行い、器官培養を行った。蛍光顕微鏡による観察、リアルタイムP C R 法による発現量の検討、アルシアンブルー染色による下顎頭軟骨およびメッケル軟骨形成の観察を行った。
【結果】miR-200 a の遺伝子発現は経時的に上昇した。Control siRNAを導入した下顎隆起では導入部位における緑色蛍光が観察された。また、miR-200 a mimicを導入した下顎隆起では、miR-200 aの発現量が有意に上昇した。7日間器官培養をした下顎隆起では正常な下顎の発育が観察され、アルシアンブルー染色によりメッケル軟骨の形成が観察された。下顎頭軟骨の形成が認められない下顎隆起が観察された。
【結論】胎生期マウス下顎隆起器官培養に対するマイクロインジェクションとエレクトロポレーション法を用いた遺伝子導入を応用し、下顎形態形成の検討を行うことができる可能性が示唆された。

中村 知寿, 北海道医療大学歯学部, 4年生

ビールはS. mutansの増殖とバイオフィルムの形成を抑制するか?

近年、ビールの健康増進効果が明らかになりつつある。レンサ球菌に対する抗菌作用があるホップと殺菌作用のあるアルコールを含んでいるため、ビールにはS t r e p t o c o c c u s m u t a n sS . m u t a n s )の増殖と口腔バイオフィルム形成を直接阻害する効果もあると考えられる。本研究では、ピルスナー(PLS)、インディア・ペールエール(I P A)、ヴァイツェン(W e i s)の3 種類のビールとノンアルコールビール(N a b)についてS . m u t a n s の増殖とバイオフィルム形成を抑制する効果があるかについて検証した。
S . m u t a n s の2 4、4 8 時間培養では、コントロールと比較しP L S、I P A、W e i s、N a bに増殖抑制効果が認められた。1、2、5 分の殺菌処理では、コントロールと比較しP L S、I P A、W e i s、N a bに殺菌効果が認められた。共焦点レーザー顕微鏡による観察で、コントロールはバイオフィルムの形成が認められた。一方、I P Aはわずかなバイオフィルムの形成が観察されたが、P L S、W e i s、N a bは観察されなかった。gtf-Bの発現は、コントロールよりもIPAで有意な上昇を、Nabで有意な低下を認めた。gtf-Cの発現は、コントロールよりもP L S、W e i s、N a bで有意な低下を認めた。これらの結果から、ビールはS . m u t a n sの発育を阻害することが示唆された。バイオフィルム形成に対してのビールの効果は、ビールの種類に依存すると考えられる。ノンアルコールビールは口腔保健に有益な可能性がある。

野田 千織, 徳島大学歯学部, 5年生

運動による解糖系および乳酸輸送担体M C Tの遺伝子発現の変化
– S P O R T Sラットをモデルに-

糖尿病は歯周病とも関連する疾患で、その予防・治療法の一つに運動がある。そこで、自発的な運動量が増加したラットの株(S P O R T S)を用い、ライフスタイルにおける運動の意義について検討することにした。運動させたS P O R T Sラットとコントロールラットの遺伝子発現の違いを比較すれば、運動療法の標的遺伝子や運動の効果を遺伝子レベルで解析する手がかりが得られる可能性がある。実験として、それぞれの骨格筋から抽出したR N Aを用いて、マイクロアレイ解析を行った。その結果、解糖系の遺伝子群に顕著な発現上昇が認められた。一方、T C A 回路の遺伝子発現に変動はなかった。このことは解糖能の亢進によるA T Pの盛んな合成を示唆する。解糖能の亢進は、乳酸蓄積による細胞障害を招く可能性があるが、細胞外から細胞内への乳酸輸送担体M C T1の発現は低下し、細胞内から細胞外への乳酸輸送担体M C T 4の発現は上昇していた。これは、運動により細胞内への乳酸蓄積を防ぐシステムが増強されていることを示唆している。以上から、S P O R T Sラットでは解糖系関連遺伝子の発現を変化させることで、自発的・持続的な運動に対応していると考えられた。

長谷川 淳子, 愛知学院大学歯学部, 5年生

Lactobacillus 種と口腔内細菌の共凝集に関する一研究

歯周病は、歯周組織にバイオフィルムを形成して定着した細菌により引き起こされる慢性細菌感染症である。P o r p h y r o m o n a s g i n g i v a l i s , F u s o b a c t e r i u m n u c l e a t u m , および T a n n e r e l l af o r s y t h i a などが歯周病との関連が指摘されている。それらを制御する事で歯周病を抑制できると考えられるが、有効で持続可能な方法はない。一方、近年、乳酸菌がP . g i n g i v a l i s などを抑制させるということが報告されている。そこで乳酸菌を口腔内に定着させる事で歯周病関連細菌を抑制できるという事が示唆される。そこでL a c t o b a c i l l u s 種の口腔内定着の可能性を検討する目的で、種々の口腔細菌との共凝集性について検討した。その結果、 L a c t o b a c i l l u s 種は上記3菌種と強く凝集した。また、その凝集は二価のイオンの存在に依存し、 L a c t o b a c i l l u s 表面の糖鎖分子と歯周病関連細菌表面のタンパクが関与していると示唆された。以上より、 Lactobacillus 種の口腔内定着の可能性は示された。

朴 真実, 九州歯科大学, 6年生

飲酒による体温低下はプロスタグランジン系が関与する

酒を飲むと、体温の変化を感じる。飲み始めは温かく、次第に寒くなる。温かく感じるのは、エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドが血管を拡張させ皮膚血流が増加するのが原因だと考えられている。一方、エタノール摂取により皮膚血流は増加するが、皮膚温は増加しないこと、しかも、深部体温はむしろ低下することが示されており、温度感覚と実際の生理現象との間の乖離が起こっているようにみえる。このような温度に対する錯覚を起こすのは、体温調節中枢のセットポイント( 設定温度)が変わったことによると考えられる。セットポイントの上昇にはプロスタグランジンE2、低下にはプロスタグランジンD2( PGD2)が関与する。しかし、飲酒後の体温低下にP G D 2 が関与するメカニズムについてほとんど検討されていない。我々は、飲酒後の体温低下のメカニズムを調べるため、ラットを用いて実験を行った。実験結果より、エタノールによる体温低下は、アセトアルデヒドの体内蓄積量に比例して起こることが示唆された。アセトアルデヒドはP G D 2 産生を促し、脳の体温調節中枢に存在するプロスタグランジン受容体に作用し、セットポイントを低下させていることが考えられた。

秦 史子, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 2年生

唾液とストレスの関係

【問題点】現代はストレス社会と呼ばれている。ストレスが人体に及ぼす影響を歯科学生として身近な唾液から検証した。
【仮説】種々の唾液マーカーの検索がストレスなど全身状態に影響を及ぼすかの評価を可能にする。
【方法】1.温湿度検査紙による唾液分泌量の測定 2.白金電極法による酸化還元電位の測定 3.誘電泳動インピーダンス測定による菌数の測定 4.酵素分析法による唾液アミラーゼ活性の測定 5. パルスオキシメーターによる脈拍とS p O 2の測定 6.スマートフォンのアプリによるストレス度の測定
【結果】ストレス度合いと脈拍、唾液の分泌量と唾液酸化還元電位、唾液酸化還元電位とストレス度合い、唾液分泌量と唾液ストレス度合いには相関関係があった。
【結論】唾液の酸化度が高いと、ストレス度合いが高いことが導かれた。すなわち、唾液はストレスマーカーとして用いることが可能であるかもしれない。

安田 梨沙, 福岡歯科大学, 5年生

歯科用コーンビームC Tによるb i f i d m a n d i b u l a r c a n a l sの検出能

下顎管内を走行する下歯槽神経は下顎智歯部で臼後枝や臼枝を分枝する。これらの分岐した枝が走行する管がエックス線写真においても描出され、B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lと呼ばれている。この分岐導管を検出することは、智歯の抜去やインプラント埋入を安全に行う上で重要な術前情報である。本研究の目的は、歯科用コーンビームC TのB i f i d M a n d i b u l a r C a n a lの検出能と下顎智歯の埋伏状態との関連を評価することである。
対象は下顎智歯の抜去の術前検査としてパノラマエックス線撮影および歯科用コーンビームCTを行った1 7 0 例( 2 2 4 側)であった。
B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lの形態分類をタイプ1~4に分類し、下顎智歯の埋伏状態を1)水平 2)垂直 3)近心傾斜 4)遠心傾斜 5)埋伏せずの5 分類し、B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lのタイプ別の検出と下顎智歯の埋伏状態との関連を検討した。
B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lは2 2 4 側中1 0 8 側において検出された。また、下顎智歯の埋伏状態がB i f i d M a n d i b u l a r C a n a lの検出に影響を与えている可能性が示唆された。

安永 賢史, 北海道大学歯学部, 6年生

腫瘍血管内皮マーカーB i g l y c a nの発現制御システムに関する検討

血管新生は腫瘍の進展や転移に重要である。腫瘍血管は正常血管と比べて走行が乱雑であり、漏出性が高いことが報告されていた。これまで我々は、腫瘍血管内皮細胞 (T u m o r E n d o t h e l i a l C e l l s : T E C) が正常血管内皮細胞 (N o r m a l E n d o t h e l i a l C e l l s : N E C) と比較し血管新生能が高いなど様々な異常性を示すことを報告してきた。D N A m i c r o a r r a y 解析によりT E Cにおいて発現が亢進していたB i g l y c a nに着目し、B i g l y c a nがT E Cの高い遊走能、管腔形成能に関与していることを最近見出した。腫瘍微小環境ではT E Cは低酸素状態に陥っており、また腫瘍細胞から様々な増殖因子などの様々な因子の影響を受けている。本研究では、腫瘍微小環境においてT E CがB i g l y c a nを発現亢進するメカニズムと、B i g l y c a nの下流シグナルについて検討した。その結果、腫瘍細胞由来因子存在下および低酸素条件においてB i g l y c a nの発現が亢進した。また、B i g l y c a n存在下で下流シグナルが活性化した。腫瘍微小環境において血管内皮細胞はB i g l y c a nの発現を亢進し、高い血管新生能を獲得していることが示唆された。

山本 吉則, 朝日大学歯学部, 3年生

硬骨魚類三種における摂食器官のメカニズム

硬骨魚類の頭蓋は、他の脊椎動物に比べてより多くの骨と関節で構成され、複雑な運動を行う。硬骨魚類における顎筋の作用や頭蓋に存在する関節の可動性は、利用する食物と密接な関わりをもつものと考えられる。そこで本研究では、藻類食のアユ、他の魚類を食べるタチウオ、甲殻類・ゴカイ・クラゲなどを食べるウマヅラハギの頭部を解剖し、摂食機構と食性との関連性について考察を行った。タチウオは上顎と下顎、鰓蓋部と舌弓部の間に関節が存在しており、下顎の大きな下制を可能していることが明らかになった。アユでは下顎骨と舌弓部の間にのみ関節が存在し、上顎の可動性は認められなかった。ウマヅラハギでは、上顎・下顎が頭部の先端に位置し、それぞれ独立した運動が可能であった。また閉口筋である下顎内転筋が3部位に分化し、比較した三種の中では最も複雑な顎運動を示していた。今回の研究から、硬骨魚類は上顎・下顎の可動性や運動パターンを変化させることによって柔軟に食物に適応していることが明らかになった。また、我々の側頭筋と相同な閉口筋である下顎内転筋は、作用の異なるいくつかの部位に分化して食物処理能力を高めている場合があると考えられた。

尤 雅田, 明海大学歯学部, 3年生

歯の移動に伴う疼痛に対する漢方薬の効果

歯の移動に伴う痛みを抑えるとともに骨吸収を制御しない鎮痛薬として、歴史的に歯科で使われC O X阻害以外の作用機序を持つと考えられる立効散と半夏瀉心湯に注目し、既存の仮性疼痛反応モデルと新規に作成した歯の移動モデルを使って両者の鎮痛効果および有効濃度を既存の鎮痛薬と比較した。
マウスに立効散、半夏瀉心湯、アスピリン、アセトアミノフェンをそれぞれ経口投与し、酢酸腹腔内投与で発現する体躯の伸展反応を比較した。歯の移動の動物モデルとして、ラットの上顎右側第一臼歯に矯正力を負荷した。両側上顎第一大臼歯に電気刺激を与え、開口反射を誘発する強度( 閾値)を左右で比較した。薬物処置群には、矯正力負荷直後から立効散、半夏瀉心湯、アスピリンをそれぞれ反復投与し1日後に閾値の測定を行った。
立効散はいずれのモデルでも鎮痛効果を発現したが、半夏瀉心湯は歯の移動に伴う疼痛を緩和できず、立効散の有効性が示唆された。アスピリンは歯の移動モデルで右側閾値を有意に上昇させた事から、片側への矯正力負荷が反対側の感覚変調を起こしている可能性が示唆された。また、歯の移動に伴う疼痛への鎮痛薬効果の判定に本モデルが有効であることも示された。

米長 秀祐, 日本大学松戸歯学部, 4年生

抗体産生の日内変動に高脂肪食が与える影響

近年、食の欧米化に伴って日常的な高脂肪食化が進んでいる。また、肥満者は有病率が高いことが知られており、肥満者に多い癌や感染症の発病には、免疫機能の低調が関わると考えられている。本研究では食習慣に着目し、マウスをN o r m a l d i e t(N D)群とH i g h – F a t d i e t(H F D)群の2群に分けて高脂肪食が生体に与える影響を3週間後に調査した。その結果、H F D 群において血漿中I g Gには産生量の低下が見られた。血漿中I g Aでは産生リズムの変化が見られ、糞便中S – I g Aでは産生量の増加が見られた。一方で体重に大きな差は認められず、抗体産生量ないし産生リズムの変化は高脂肪食によるものであるといえる。これにより、高脂肪食の摂取が生体の恒常性に影響を与えていることが分かった。また、ストレスホルモンであるc r t i c o s t e r o n eのH F D 群での増加が見られ、またc o r t i c o s t e r o n eの日内変動と血漿中の抗体量には相関傾向が見られた。この事から、抗体産生がストレスによっても変化しうるといえる。以上の事から、高脂肪食の習慣的摂取が生体の恒常性に影響を与え、全身および粘膜面での免疫応答に変調をきたしたと考えられる。

渡辺 数基, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

メラトニンによるキンギョの血漿グルコース濃度低下作用

メラトニンは松果体ホルモンとして知られており、主な働きとして概日リズムの同調作用が挙げられる。また、その他にも免疫活性化作用や抗酸化作用を持つことや、骨芽細胞、破骨細胞に作用して骨形成を促進、骨吸収を抑制することなどが知られている。近年では、哺乳類を用いてメラトニンの糖代謝への関与が示唆されているが、その作用機序に関しては明らかでない部分が多い。そこで本研究では、雄キンギョ(C a r a s s i u s a u r a t u s )を用いて、血漿グルコース濃度及びブロックマン小体( 魚類におけるインスリン産生器官)におけるインスリンm R N Aの発現に対するメラトニンの影響を調べた。その結果、メラトニンの投与により糖負荷環境下における血漿グルコース濃度は対照群と比較し有意に低下したが、一方でブロックマン小体でのインスリンm R N Aの発現には有意な変化は見られなかった。このことから、メラトニンにはインスリンを介さない経路で血漿グルコース濃度を低下させる作用があると考えられた。

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速報:第20回SCRP日本代表選抜大会

2014 年 8 月 21 日 コメントはありません

2014年8月20日(水),歯科医師会館に於いて,平成26年度(第20回)日本歯科医師会/デンツプライ スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラムが開催されました.

今年度は28校の参加があり,以下4名が上位入賞されました.

優勝/日本代表 - 基礎部門 第1位:道家 碧さん,昭和大学歯学部 6年生 
歯周病原細菌の産生するヌクレアーゼの解析

準優勝 – 臨床部門 第1位:神田 舞さん,日本大学歯学部 5年生
OCTを用いたバイオアクティブグラス含有歯磨剤がエナメル質の脱灰に及ぼず影響の検討

基礎部門 第2位:本池 総太さん,広島大学歯学部 6年生
間葉系幹細胞集塊clumps of MSC/ECM complex を用いた新規再生治療法開発

臨床部門 第2位:三上 優さん,大阪歯科大学 5年生
睡眠中のアロマテラピーはSIgAの分泌促進と唾液中細菌数の減少を促進する

 

その他および詳細は,追ってupdate予定です.

取り急ぎ,上位入賞者の情報のみを速報としてお知らせいたします.

【追記】
デンツプライ三金@Press医療経済出版株式会社Ishiyaku Dent Webヒョーロン・ニュースQuint Dental GateDental Now!,による記事等はそれぞれのリンク先をご参照ください.

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第19回大会

2013 年 12 月 13 日 コメントはありません

第19回大会 2013年(平成25年)8月21日 参加校22校

タイトルおよび発表内容要旨 (上位入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝/日本代表 – 臨床部門 第1位:王 碩,岡山大学歯学部,4年生

なぜ煙草をやめると太るのか?

煙草の主成分であるニコチンは、交感神経系への薬理作用を示し、交感神経の神経伝達物質であるノルアドレナリンは摂食を抑制すると考えられている。われわれは「煙草をやめると太る」機序を明らかにするため、シナプス間隙でノルアドレナリン量の調節に重要なノルアドレナリントランスポーターに着目し、ノルアドレナリントランスポーター発現に対するニコチンの影響をラットおよび培養細胞を用いて検討した。その結果、ニコチンは、短期的にはノルアドレナリントランスポーター発現を増加させるが、長期的には減少させるという二相性の効果を示すことが明らかとなった。これは、慢性的な喫煙はノルアドレナリントランスポーター発現を抑制し、シナプス間隙のノルアドレナリンを増加させることにより摂食を抑制しているが、禁煙はニコチンによるノルアドレナリントランスポーター発現抑制作用を解除することになり、シナプス間隙のノルアドレナリンの減少による摂食量の増加を介して、体重増加に繋がる可能性を示すものである。さらに、ニコチンはノルアドレナリントランスポーター転写活性には影響しないことから、その作用点として転写後修飾に関与することが示唆された。

準優勝 – 基礎部門 第1位:坂本 真一,広島大学歯学部,6年生

Porphyromonas gingivalis (P.g.)の歯性感染によって非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態が増悪する
- 肝臓に到達したP.g.-LPSやP.g.が肝細胞に与える影響 -

肥満者の脂肪肝から発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝硬変や肝癌へと進展するため重大な健康問題である。私の研究している教室では、高脂肪食(HFD)誘導脂肪肝モデルを用い、P.g.歯性感染がNASHの炎症、線維化、脂肪沈着などを増悪することを報告した。私は、歯性感染病巣から侵入したP.g.P.g.-LPSが肝細胞に作用し、これらの変化に関与すると考え、P.g.P.g.-LPSが肝細胞に及ぼす影響を調べた。①P.g.-LPSの影響:脂肪化肝細胞ではP.g.-LPSの受容体であるTLR2発現が著しく上昇し、IL-1b, IL-6, MCP-1などの炎症性サイトカインが過剰に産生され、炎症や線維化が進行する可能性が示唆された。②P.g.感染の影響:P.g.は肝細胞に感染・侵入した。特に脂肪化肝細胞ではP.g.感染数が増加した。また、P.g.感染によって肝細胞の脂質代謝関連受容体(LDLR、LRP1)の発現が増加し、脂肪の取り込みを促進する可能性が示唆された。
以上、P.g.P.g.-LPSは肝細胞のサイトカイン産生や脂質沈着を促進し、NASHの病態増悪に関わることが明らかとなった。

臨床部門 第2位:岡部 佑妃子,日本歯科大学生命歯学部,5年生

新たに考案した歯肉血流測定法と歯肉マッサージによる血流量の変化

歯ブラシによる口腔清掃はプラークを除去だけでなく、歯肉の血流促進を期待した歯肉マッサージ効果もあると考えられている。そこで、歯肉マッサージの効果を報告した文献検索したところ、レーザードップラー血流計で歯肉血流量を測定しているものが多かった。しかし、その測定法の再現性には疑問があった。
そのため、まず、レーザードップラー血流計の測定プローブの固定法を自身で考案し再現性を検討することにした。素材の違う3種類の固定法;(1)スポンジ、(2)箸、(3)シリコン印象材で測定プローブを固定したところ、最も再現性の得られたのはシリコン印象材を使用した固定法であった。次に、6名の被験者に市販されている3種類の専用歯ブラシと自身の指で歯肉マッサージを行ってもらった。そして、レーザードップラー血流計とシリコン印象材を使用した固定法を用いて最も血流促進効果の得られる方法を検討した。その結果、専用の器具を使用すると個人差が大きく、むしろ自身の指で歯肉マッサージをする方が確実な血流促進効果を得られることが示唆された。

基礎部門 第2位:清水 綾,北海道医療大学歯学部,4年生

P.gingivalis由来LPSの長期刺激によるマラッセ上皮細胞のDNAメチル化

DNAのメチル化はエピジェネティクス修飾の一つであり、環境因子によって変化が引き起こされることがある。これまで主に悪性腫瘍で報告されてきたが, 最近になり悪性腫瘍以外の疾患での関与も報告されてきている。エピジェネティクス修飾の歯周病への関与も示唆されているが、その詳細はほとんど明らかになっていない。
歯垢中のリポポリサッカロイド(LPS)は、歯周病の発症や進行の主な原因である。DNAのメチル化は、環境因子の長期刺激によって引き起こされる。
本研究では、マラッセ上皮細胞をP.gingivalis由来LPSで長期間刺激することにより、p14、p15、p16、p53、IL-6およびIL-8のDNAメチル化に変化が起きているか否かについて検討した。
1ヶ月間、LPS(1μg/ml)で細胞を刺激すると多くの細胞が死に陥ったため、3日間LPSで刺激し3日間は刺激せず1ヶ月間培養を行った。このLPSによる長期刺激で、コントロールと比較しIL-6およびIL-8mRNAの有意な発現低下が認められたが、 p14、p15、p16、p53mRNA の発現に変化は認められなかった。メチル化特異的PCRで、コントロールと比較しIL-6遺伝子のメチル化は有意に上昇していた。
P.gingivalis由来LPSの長期刺激により、IL-6 遺伝子で、DNAの高メチル化が関与する可能性が示された。

井上 真紀, 九州歯科大学, 6年生

歯周病細菌貪食マクロファージの細胞死におけるβ-グルカンとデクチンの役割について

Gordonらにより、マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞上にデクチン-1とよばれるβ-1,3グルカン受容体が発現されていることが報告されて以来、デクチン-1の自然免疫系における役割が注目されるようになった。近年、デクチン-1は、自然免疫制御という点で生体防御機能に深く関わっていることを示唆する報告が散見される。そこで今回、我々はデクチン強発現マクロファージを用い、in vitroの実験系にて、歯周病原性細菌A. actinomycetemcomitansを貪食したマクロファージに見られる変化を調べた。
MTT assayにて、デクチン強発現細胞がA. actinomycetemcomitansを貪食した後、コントロール細胞に比べ致死活性の低下が見られた。さらに炎症性サイトカインIL-1βの産生を検証したところ、デクチン強発現細胞では遺伝子発現の減少およびELISA 法にて産生低下が認められた。一方で、デクチン強発現細胞におけるインフラマソームの関与を検証したところ、関連遺伝子およびタンパクの発現減少が認められた。
以上の結果から、デクチン-1は、A. actinomycetemcomitans感染マクロファージで誘導されるインフラマソームの活性を抑えることにより、細胞死を抑制することが明らかとなった。さらに、A.actinomycetemcomitans感染マクロファージの細胞死がpyroptosisにより誘導されることが示唆された。

大河 里沙, 大阪大学歯学部, 4年生

翻訳制御による細菌必須遺伝子の解析

近年、歯科領域においても薬剤耐性菌の蔓延が懸念されており、新たな抗菌薬の開発が期待されている。これまで抗菌薬の標的として、細菌の生存に必須の因子が候補として挙げられてきた。必須遺伝子の解析に変異株を作製することは不可能であるため、特定の条件下において発現抑制が可能なコンディショナル変異株が供試されてきた。本研究では、これまで変異が不可能であったレンサ球菌の転写因子に着目した。レンサ球菌では、大腸菌や枯草菌で用いられる遺伝子発現のon/offシステムを必須遺伝子の解析に用いることは困難であった。そこで、リボスイッチによる翻訳制御機構に着目し、低分子化合物を認識する人工リボスイッチを染色体DNA上のプロモーター領域に組込み、低分子化合物の存在下で翻訳が行われるコンディショナル変異株を作製した。培養系から低分子化合物を除去し、転写因子の翻訳量を減少させたところ、レンサ球菌の生育は抑制された。電子顕微鏡による菌体の観察から、細胞形態の異常が認められた。これらの結果から、リボスイッチを用いた翻訳制御は必須遺伝子群の解析に有用であり、解析を行った転写因子は抗菌薬の標的になりうることが示唆された。

小澤 諒, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

充填方法と材料が根管充填の到達度や充填率に与える影響

根管充填において、根尖部の封鎖性や充填材の緊密度は治療の予後を左右する大きな要因である。本実験では、充填材料と充填方法の違いが根管充填材の根尖到達度や側枝への侵入度、根管充填率に与える影響について調べた。充填材量はガッタパーチャとレジン系充填材を比較し、充填方法は側方加圧充填法と垂直加圧充填法を比較した。結論として、根尖への到達度および根管充填率を向上させるには、メインポイントを加熱し、より細かい部分に根充材を到達させることができる垂直加圧充填法が有利である。レジン系充填剤はガッタパーチャと比較して、充填率と根尖孔到達度において有意差が無く、側枝到達度は高いため、より低温度で使用できるレジン系充填剤の方が、垂直加圧根管充填に適していると思われる。

梶原 里紗, 昭和大学歯学部, 4年生

咬筋運動ニューロンに対するシナプス入力の生後発育変化

摂食行動は、発育に伴い吸啜運動から咀嚼運動へと大きく転換する。この転換期には、口腔諸器官の生後発達とともに、顎運動を制御する中枢神経機構も大きく変化すると考えられる。我々は、閉口筋運動ニューロンへの興奮性シナプス入力が生後発育に伴い増加するという仮説を立てた。そこで本研究では、幼若期ラット咬筋運動ニューロンからパッチクランプ記録を行い、咬筋運動ニューロンに誘発される興奮性微小シナプス後電流(mEPSC)の生後発育変化を解析した。
記録ニューロンの膜電位を-70mVに保持した状態で膜電流を記録したところ、tetrodotoxin、SR95531およびstrychnine投与下でmEPSCが観察された。mEPSCの振幅は、生後2-4日齢から生後9日齢の間で有意に増加した。さらに、個々のmEPSCが発生する間隔は、生後2-4日齢から生後9日齢の間で有意に小さくなり、mEPSCの発生頻度が増加した。また、mEPSCの減衰時間は生後2-4日齢から生後9日齢の間で有意に短縮した。
以上の結果から、ラット咬筋運動ニューロンへの興奮性シナプス入力の強度と頻度が生後発育とともに増加することが示された。このような咬筋運動ニューロンへのシナプス入力の発育変化は吸啜から咀嚼の転換に関与する可能性が考えられる。

北中 祐太郎, 徳島大学歯学部, 5年生

genipinがヒト歯根膜細胞のIL-6産生に及ぼす影響の解析

【目的】IL-6は歯周炎の炎症性骨吸収に関与しているサイトカインである。TNF-αは炎症性サイトカインであり、ヒト歯根膜細胞(HPDLC)のIL-6 産生を誘導することが報告されている。genipinはクチナシに含まれる成分であり、様々な生理作用を有していることが報告されている。しかしながら、genipinがHPDLCに与える影響については不明な点が多い。そこで、我々はgenipinがHPDLCのTNF-α誘導IL-6 産生に与える影響について検討した。
【材料および方法】HPDLCのIL-6産生はELISA法にて、IL-6産生に関与しているとされるNF-κBp65のリン酸化についてはwestern blot法を用い解析した。
【結果および考察】genipinはHPDLCのNF-κBp65のリン酸化を抑制することにより、TNF- α誘導IL-6産生を減少させることが明らかとなった。IL-6は破骨細胞を活性化し歯槽骨破壊に関与していることにより、genipinを歯周炎治療に用いる事ができる可能性が示された。

國兼 勉, 神奈川歯科大学, 3年生

歯内治療とBRONJ発症の関係について

【問題点】ビスフォスフォネート製剤誘発顎骨壊死(BRONJ)は, 一般的な歯科疾患に関連すると言われているが、決定的な治療法は未だ確立されていない。今回我々は、BRONJ実験モデルを用いた歯槽骨変化を組織学的に検討した。
【方法】Ovariectomy(OVX)を行ったICRマウスに対しAlendoronateを投与した。BRONJ誘導法として実験的に根尖性歯周炎を誘導しマイクロCT解析と病理組織学的解析を行った。
【結果】病理組織学的解析では、臼歯咬合面を露髄後、根尖周囲歯槽骨には、形態が不明瞭な破骨細胞および、根尖孔周囲には多形核白血球を中心とした細胞の集積が見られ、さらに歯槽骨内の血管と骨小腔が減少し、骨小腔内に存在する骨細胞が萎縮および欠損していた。歯槽骨のマイクロCT解析により、根尖性歯周炎の病巣部位においては、OVX+BPsの群は、OVXの群に比べ、根尖相当部骨吸収面積の拡大が認められた。
【結論】本研究の結果より、骨粗鬆症に対する経口BPs 製剤の投与により根尖性および辺縁性歯周炎を発症した歯槽骨には、骨髄内の血液循環障害による骨細胞機能不全が誘導されている可能性が示唆された。

栗栖 諒子, 日本大学松戸歯学部, 4年生

納豆摂取による歯肉粘膜からの抗菌ペプチドの発現

生体の粘膜上皮や好中球から産生される抗菌ペプチドは自然免疫の一環として生体の免疫機構の重要な役目を果たしている。そうした抗菌ペプチドは口腔内では唾液や歯肉溝滲出液に含まれ、生体における感染防御機構の初期に誘導される自然免疫機構へ関与している。本研究で納豆の胃内投与により代表的な抗菌ペプチドであるα-およびβ-ディフェンシンそしてカテリジシンの発現が口腔粘膜組織にも認められたことから、発酵食品である納豆の摂取は腸管免疫機構を誘導するのみではなく遠隔局所へも効果的に誘導されることが確認できた。α-、β-ディフェンシンは抗菌活性を持つだけではなく血管新生能や樹状細胞、T、B 細胞を炎症巣に遊走させることで自然免疫機構から獲得免疫特機構へ誘導することが知られている。さらにカテリジシンはインフラマゾームを形成阻害することで抗炎症作用をもつことが知られている。腸管免疫機構から口腔免疫機構を誘導・活性化する機序は明らかになっていないが、口腔粘膜組織に抗菌ペプチドが効率的に産生され歯科疾患を予防することができれば重篤化して全身疾患を誘発することもなく、臨床の場における応用が一層期待出来ると考える。

小松 貴紀, 新潟大学歯学部, 4年生

Streptococcus mutansのバイオフィルム形成に対するフッ化物歯面塗布剤の効果

歯面塗布剤に含まれるフッ化物は、形成期におけるエナメル質の耐酸性増強作用やフルオロアパタイトの生成や再石灰化の促進作用などを持つことが知られているが、Streptococcus mutansに対する効果に関しては、未だ不明な点が多く残っている。そこで、フッ化物歯面塗布剤がう蝕病原性細菌S.mutansに及ぼす影響を解析した。ジェル状と液体のフッ化物歯面塗布剤を添加した96ウェルプレート、あるいはガラスボトムディッシュにブレインハートインフュージョン(1.0%スクロース含有)培地とS.mutans MT8148株菌液を加え一晩培養した。クリスタルバイオレッド染色剤や蛍光顕微鏡を用いた解析の結果、フッ化物歯面塗布剤の添加によりバイオフィルムを構成する生きたS.mutans菌の密度を疎にすることが示された。さらに、増殖曲線の結果から、液体のフッ化物歯面塗布剤は、S.mutansの増殖を抑制するが、ジェル状のフッ化物歯面塗布剤はS.mutansの増殖を抑制しないことが示された。本研究により、液体のフッ化物歯面塗布剤は細菌の増殖を静菌的に抑制すること、さらに、ジェル状のフッ化物歯面塗布剤はS.mutansにより形成されたバイオフィルムの固着を抑制することが判明した。

小森園 杏奈, 鹿児島大学歯学部, 4年生

CXCL3は脂肪分化を正に調節する

脂肪細胞はアディポカインと呼ばれる生理活性物質を分泌し、生理的な代謝制御や代謝性疾患の病態形成に関与することが知られている。脂肪細胞の産生するケモカインとしてCCL 2が報告されているが、その他のケモカインの分泌や役割についてはよく分かっていない。そこで脂肪細胞分化に伴う種々のケモカインとケモカイン受容体のmRNA発現量の変化を調べ、その役割を検討した。
マウス脂肪前駆細胞株3T3-L1細胞を分化誘導し、ケモカイン遺伝子群の発現量の変化を解析したところ、CXCL3、CXCL13のmRNA発現が脂肪分化に伴って著明に上昇した。またケモカイン受容体群では、CXCL3受容体であるCXCR2のmRNA発現が高くなった。リコンビナントCXCL3を添加しながら3T3-L1細胞を分化させると、脂肪滴形成や脂肪分化マーカー遺伝子の発現が促進した。
一方、CXCL3と同様にCXCR2のリガンドであるCXCL2、CXCL13を加えた場合、分化への影響はみられなかった。さらにCXCL3およびCXCR2のsiRNAによるノックダウンを行うと、脂肪細胞分化は抑制された。3T3-L1細胞へのCXCL3投与によって活性化されるシグナル分子を検討したところ、ERK、JNKがリン酸化され、ERKの活性化がC/EBPδの発現に影響を与えていることが示唆された。
このように脂肪細胞が産生するCXCL3は、オートクライン/パラクラインの作用によって、脂肪分化を促進する新規アディポカインである可能性が示唆された。

清水 志保, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 5年生

ゴーヤによる口臭抑制作用の可能性

【問題点】近年人々の口臭に対する関心が高まっている。普段から私が飲んでいるゴーヤジュースには血糖降下作用や疲労回復効果があると言われている。そこでゴーヤに口腔内環境に与える影響があるか検証した。
【仮説】今回はゴーヤの抗酸化作用に着目し、口臭抑制作用もあるのではないかと考え、以下の実験を行った。
【方法】15%濃度のゴーヤ水を作成し水を比較対象として、一定の条件下で硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドをガスクロマトグラフィーで測定した。さらに、含嗽前後の口腔内の酸化還元値を測定した。
【結果】ガスクロマトグラフィーにおいて、すべての数値が含嗽直後に減少した。メチルメルカプタンは、含嗽20分後において、含嗽前に比べてゴーヤ水は23%回復したのに対し、水は126%になり、ゴーヤ水で含嗽した方が上昇程度は緩く、含嗽前の値を下回った。硫化水素の数値は、20分後ではどちらも同じように回復し、ほとんど変化がなかった。
【結論】ゴーヤ水を含嗽することにより、メチルメルカプタンを抑制することが示唆された。身近で安全な食物が口臭抑制剤になりうる可能性もある。

髙橋 謙次郎, 明海大学歯学部, 4年生

歯科矯正が及ぼす三叉神経への影響

矯正治療で生じる疼痛には有効な鎮痛手段がなく、歯の移動を制限しない鎮痛薬の開発が望まれている。本研究では、矯正装置装着で誘発される疼痛を定量評価可能な動物モデルを構築し、矯正装置装着が及ぼす三叉神経への影響を観察した。
ラットの上顎門歯と上顎右側第一臼歯を連結し矯正力を負荷した。負荷1(D1)、3(D3)、7(D7)日後に、左右の上顎第一大臼歯に電気刺激を与え、開口反射を誘発する刺激強度( 閾値)を測定した。
実験終了後、三叉神経節のサテライトグリア細胞(SGCs)活性を、glial fibrillary acidic protein(GFAP)免疫染色で観察した。
右側の開口反射閾値は左側に比較してD1で有意に低下し、D3で左右差は消失した。D7では開口反射閾値の左右差は消失、もしくは左側の開口反射閾値が低下した。両側三叉神経節においてGFAP 陽性SGCsに囲まれた神経細胞がD1で認められた。D7では、開口反射閾値の左右差が消失した個体ではGFAP陽性SGCsが観察されなかったが、開口反射閾値が逆転した個体では両側三叉神経節でGFAP陽性SGCsが観察された。
本モデルは矯正装置装着による疼痛感受性亢進を定量的に評価可能であり、疼痛感受性亢進には三叉神経節のS G C 活性が重要な役割を果たしている事が示唆された。

高橋 萌, 東北大学歯学部, 6年生

In vitro, in vivo試験によるセラミック系生体材料の血管形成への影響評価

骨欠損部における新生骨形成過程では、骨形成に先行して血管網の構築、改変が必要である。本研究では骨補填材である焼結ハイドロキシアパタイト(s-HA)とβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)顆粒を用い、血管形成の影響、効果を検討した。in vitro試験では、ヒト血管内皮細胞と線維芽細胞の共培養系に、顆粒を同量、浸漬し、血管の長さなどの形態計測を行った。またin vivo試験では、ラット頭蓋骨の骨欠損部に、顆粒を同重量、移植し、パラフィン包埋標本を作製して、血管数、断面積を計測した。in vitro試験では、血管の長さ、血管分岐の数、血管面積は、焼結HAよりβ-TCP顆粒が有意に高かった。一方in vivo試験では、顆粒周囲の肉芽組織の血管は、焼結HAがβ-TCPに比べ、有意に血管数が多く、有意に血管面積が大きかった。以上のことから、焼結HAがβ-TCPに比べ、血管形成に対して抑制的に作用していることが示された。一方で生体内では、焼結HAが異物として認識され肉芽組織形成において血管の成熟を抑制している可能性がある。生体材料は、直接的、間接的な作用によって血管形成に影響を与えると考えられた。

塚崎 敬介, 松本歯科大学, 3年生

骨堂跡より出土した歯に関する調査と研究 - 歯種の鑑別および測定 –

某寺院の参道脇の斜面にあったとされる骨堂の発掘調査が2012年5月に行われ、火葬後と思われる人体の一部、貨幣に加え4000本以上の歯が出土した。
現在の日本では死後において火葬が主流となっており、全国地方自治体(市町村)レベルで斎場を運営し、システマティックに埋葬・納骨まで執り行われている(行政の管理下)。しかし、江戸時代以前では火葬できるのは上位階級の限られた人間のみで多くの人間は土葬であった。火葬後と思われる僅かな人骨の一部と共に出土した歯は火葬されていないものがほとんどであった。
なぜ、山中の寺院の骨堂に大量の歯のみ(大部分が非火葬)が埋葬されたのかは不明である。骨堂跡より発見された歯の年代は副葬品から戦国時代末期から江戸時代を含み明治初頭までと推測されている。私たちは出土した4000本以上の歯などを丁寧に鑑別・観察し、どういった集め方をされたのか、歯の持ち主について歯の種別や咬耗・齲蝕、サイズについての調査を通して考察を行った。
まず出土した歯を注意深く洗浄し、歯に付着していた歯石などは極力回収すべく洗浄後の水はフィルターを通し、歯石など回収した。その後、4208本の歯を解剖学的な特徴により鑑別した。さらに2046本の歯について、全長・歯冠長・近遠心径・頬舌径をデジタルノギスで測定した。

松村 茉由子, 日本大学歯学部, 5年生

矯正力が破骨細胞の分化と機能に及ぼす影響

歯科矯正治療による歯の移動は、主に圧迫力と牽引力のメカニカルストレスが歯根膜を介して歯槽骨に伝達されることによって起こる。しかし、矯正治療を行うときに歯および歯周組織に過度なダメージを与えない矯正力を示唆する臨床的な指標はなく、臨床の場において、”適度な”矯正力を与えることは難しい。そこで、矯正力を想定し、圧迫力(CF)と牽引力(TF)を破骨細胞前駆細胞に負荷したときの影響を検討した。
その結果、破骨細胞前駆細胞にはCF負荷の影響がほとんど認められなかった。一方、TF負荷時においては骨の有機質を分解するプロテアーゼの遺伝子発現が増加することが示唆された。これらのことから、CFおよびTFは、破骨細胞前駆細胞に対して異なる影響を及ぼすことが示唆された。
したがって、歯科矯正治療を行う際には、これらの違いを理解し、歯および歯周組織に過度なダメージを及ぼすことがないよう、注意深く矯正力の選択や治療期間の決定を行うことが大切であると考えられた。さらに、今後はこれらの結果を発展させて適度な矯正力の臨床的指標(数値化など)を見つける研究が必要であるといえる。

三宅 真規子, 大阪歯科大学, 5年生

カタツムリに学ぶあたらしい歯科材料のかたち - バイオミメティクスという考え方 –

カタツムリの殻はミクロンオーダーの微細な表面構造を持っており、その特異な表面構造のために、カタツムリの殻は自浄作用をもつことが知られている。本研究では、清掃が簡便な自浄作用をもつ義歯を開発することを最終目的とし、カタツムリ殻の表面構造を付与したレジンの製作を試みた。その結果、カタツムリ殻から採得した印象を用い、重合条件を最適化することで、カタツムリ殻の表面構造を付与したレジンの製作に成功した。同レジンは、カタツムリ本来がもつ水の濡れやすさと油の濡れにくさを有することが明らかとなった。本研究の遂行によって得られた結果をもとに自浄作用をもつ義歯を製作することで、義歯床管理の容易化および口腔内環境の向上が期待される。本研究ではレジン床の表面への応用を想定して検討を行ったものであるが、本技術はレジン歯やレジン系成形修復材などへの転用も可能であることから、さらなる発展が期待できる。

向井 陽子, 鶴見大学歯学部, 5年生

玉ねぎのケルセチンは歯周病原菌に対する殺菌作用がある

日常生活の中で抗菌薬や消毒薬を使うと、副作用や耐性菌の出現が懸念される。天然由来のポリフェノールの一種であるケルセチンは、数種の細菌に対して抗菌性があることが報告されているので、ケルセチンは口腔病原微生物に対しても殺菌作用があるという仮説を立て、殺菌性を調べた。StreptococcusmutansCandida albicansCandida glabrataPorphyromonas gingivalisPrevotella intermediaFusobacter ium nucleatumの被検液に0 – 0.2mg/ml濃度の各ケルセチン希釈液を添加し、MBC(Minimum Bactericidal Concentration)を測定した。その結果からケルセチンはS.mutansC.albicansC.glabrataに対して殺菌作用がないことが明らかになった。P.gingivalisP.intermediaではMBCが0.5mg/mlで、F.nucleatumでは1.0mg/mlであった。次に0 – 50mg/ml濃度のケルセチン希釈液の経時的な殺菌力を測定した。その結果、P.gingivalisF.nucleatumに対し50mg/mlで30 分後に殺菌効果が現れた。P. intermediaは50mg/mlで1時間後に殺菌効果が現れた。以上より、ケルセチンは歯周病菌に対して、殺菌効果があることが分かった。また、30分~1 時間で十分な殺菌効果を示すので、ガムやトローチを開発することが、歯周疾患の予防に役立つと考えられる。

森谷 康人, 北海道大学歯学部, 6年生

活性酸素種(ROS)が血管内皮細胞に及ぼす影響

血管新生は腫瘍の進展・転移に必要不可欠である。腫瘍血管は正常血管に比べ、走行が無秩
序であること、血管内皮細胞とペリサイトの結合が疎であり血管透過性が亢進していることなどがある。また腫瘍血管内皮細胞 (Tumor endothelial cell : TEC)は正常血管内皮細胞(Normal endothelial cell : NEC)と比較して血管内皮増殖因子VEGFの発現が高く生存能が高いこと、血管新生能が高いことなどが報告されてきたが、TECがこれら特異性を獲得するメカニズムは未だ完全には解明されていない。本研究では腫瘍血管の特異性獲得にROSの蓄積が関わっていると考え、ROSの蓄積が血管内皮細胞に及ぼす影響について解析を行なった。その結果、低栄養状態におかれた血管内皮細胞ではROSが蓄積するとともにVEGFの発現が亢進し、オートクライン機構により自らの生存に利用している可能性が示唆された。このことから低栄養状態に陥っている腫瘍微小環境において血管内皮細胞が示す高い生存能、血管新生能の獲得にはROSの蓄積によるVEGFの発現亢進が関与していることが示唆された。

山本 梨乃, 朝日大学歯学部, 5年生

マウスによるジュースの味質弁別と味覚神経応答

味覚障害を訴える患者には味覚そのものではなく、嗅覚に原因がある場合がある。このことは、我々ヒトの意識する味覚は単純な生理学的味覚とは異なり、フレーバーに依存するようである。本研究では、C57BL/6マウスが各種ジュース類を弁別する際の生理学的な味覚への依存度を、味覚嫌悪条件づけを用いて検討した。さらに、各種ジュースには甘味受容器刺激成分がどの程度含まれているのかを、甘味抑制剤を用いて電気生理学的に検討した。その結果、100%オレンジジュースに味覚嫌悪を条件づけられたマウスは、5基本味のうちショ糖のみを忌避し、50%、10%あるいは無果汁のオレンジジュースのみならず、100%グレープジュースや野菜ジュースも忌避した。甘味抑制剤であるプロナーゼE 舌処理前後のマウス鼓索神経応答を比較したところ、0.3Mショ糖応答は81.1%抑制したが、各種ジュース類に対する抑制率は、ショ糖の1/2以下であった。以上の結果から、マウスの飲料水弁別は、ヒトとは異なり、フレーバーよりも生理学的な味質が優先されること、また、飲料水に含まれるそのコンポーネントがさほど大きくなくても十分に弁別できることを明らかにした。

 

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