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2004 年 8 月 のアーカイブ

第10回大会

2004 年 8 月 25 日 コメントはありません

第10回大会 2004年(平成16年)8月25日 参加校 19校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:佐藤 智子, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

音声音響分析による開咬を有する小児の構音評価

小児期において、開咬は最も一般的な不正咬合の一つである。開咬を有する小児の発音は、例えば無声歯茎摩擦音[s]が無声歯間摩擦音[θ]に聴こえるような違和感を覚えることが多い。歯科臨床においては、これまで小児の構音障害を音声学的に定量的に検査する方法はほとんど用いられていない。音声音響分析の一つであるフォルマント周波数分析は、母音における舌の位置が分かるとされており、第1フォルマントは舌の高低によって変化し、低舌母音では高く、第2 フォルマントは舌の前後によって変化し、前舌母音では高い。無声歯茎摩擦音[s]についてフォルマント周波数分析による比較を行った結果、第1フォルマント、第2フォルマントが有意に高いことより、開咬を有する小児は正常咬合を有する小児よりも構音時の舌尖が低く前に出ていることが推察された。このような開咬児の音声の定量分析は、将来的に不正咬合を有する小児の治療において発音機能をも含めた舌機能訓練を効果的に行うことができると考えられる。したがって容易かつ客観的な構音障害の診断方法として音声音響分析の歯科における応用と発展が望まれる。

準優勝:佐々木 健, 日本歯科大学新潟歯学部, 4年生

白色発光ダイオードを利用した歯科装置の開発

発光ダイオードは、電球のように球切れがない、電池の消費が少ない、発熱がない、安価であるなどの特徴を有している。しかし、発色が赤・緑の2色に限定されていたことにより歯科治療への応用は困難であった。本研究は白色発光ダイオード(W-LED)を用いた治療装置の実用性について検討した。
W-LEDを用いたミラーでは、室内照明のみで測定した場合、通常のミラーと比較し大変よく見える(30%)比較的よく見える(62%)であった。バイトブロックも同様に室内照明のみで行った場合大変よく見える(32%)比較的よく見える(44%)であり、75%以上が使いやすかったとの返答であった。隣接面カリエスの診断に用いたW-LEDを用いた診断では検出率は100%であった。しかし、カリエスメーターの検出率は33%であった。W-LEDを用いた自作プローベとWHO規格プラスチックプローブの比較では平均測定時間に有意差は認められなかったが、自作プローベの方が短い傾向が認められた。以上よりW-LEDを応用した歯科診療装置は治療時間の短縮やより正確な診断に有用であることが示唆された。

第3位:宮原 宇将, 日本大学歯学部

本人の希望により掲載せず

伊従 光洋, 北海道大学歯学部, 6年生

Toll-like receptor 2の微生物由来リポペプチド認識におけるロイシンリッチリピートの関与について

Toll-like receptor 2 (TLR2)は、微生物由来リポタンパク質、リポペプチド及びペプチドグリカンの認識において重要な役割を果たすことが明らかにされているが、その認識機構の詳細については不明な点が多い。我々はTLR2の細胞外ドメインに8個あるロイシンリッチリピート(LRR)の内、第3LRRに存在するLeu残基がリガンドの認識に関与していることを明らかにした。本研究ではその他のLRRに存在するLeu残基のリガンド認識への関与について検討した。FSL-1 [S-(2, 3-bispalmitoyloxypropyl) CGDPKHSPKSF]は以前と同様の方法で化学的に合成した。第1、2、4、5、6、7、8LRRに存在する50、83、367、394、415、 462、492番目のLeu残基をGluにした点変異体遺伝子を作成し、NF-κB依存性ルシフェラーゼレポーター遺伝子と共にHEK293細胞に導入し、FSL-1で刺激した後ルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、これらの点変異体は全て、第3LRRの場合と同様にFSL-1を殆ど認識しないことがわかった。従って、TLR2の細胞外ドメインに存在する全てのLRRはリガンド認識に関与していることが示唆された。

梅村 恵理, 鹿児島大学歯学部, 5年生

舌癌感受性の判定への手掛かり

口腔癌で最も発生頻度が高い舌癌発生に関連する遺伝子を見いだす事は、発癌機構の解明のみならず、発癌感受性の判定にも有用で、さらに発癌予防にも役立つと考えられる。ラットは疾病モデル動物として多用され、最近ゲノム解析が終り、多くの遺伝子座が決定された。また、主要組織適合遺伝子複合体 (MHC)は免疫機能のみならず発癌にも関与している事が示唆されている。
本研究では舌癌好発系DAラットと嫌発系WFラットを交配し得たF2ラット130匹について、4NQO化学発癌実験を行ない、舌癌発生数や大きさを計測した。さらに、MHCが存在する第20番染色体上の18領域についてPCR法で遺伝子多型を検索し、発生数と大きさの量的形質遺伝子座をQTL解析で検索した。結果、MHC遺伝子群(RT-1 s)が存在する第20番染色体短腕のテロメア近傍に有意な連鎖を認めた。これらの免疫機能に関与する遺伝子が舌癌発生にも関連しているものと考えられた。
今後ヒトにおいても同様の舌癌関連遺伝子を特定し、将来的に舌癌感受性の判定が可能になれば、発癌リスクの高い者に対する発癌予防についての口腔保健指導に役立つものと考えられる。

永川 賢司, 徳島大学歯学部, 4年生

青紫色半導体レーザーと二酸化チタンを用いた表面処理システムの開発-レジン表面での殺菌及び細菌付着抑制効果-

増加する高齢者の感染症予防のためには、歯や義歯などを清潔に保つことが重要である。今回、二酸化チタン(以下、チタン)と青紫色半導体レーザー(波長420nm)を用いた表面処理システムを考案し、レジン表面での殺菌効果、細菌付着抑制効果を検討した。
チタン塗布の有無、レーザー照射の有無の組み合わせによる4種のレジンディスクを用いた。細菌は高齢者の口腔から比較的よく分離される緑膿菌を用いた。レジンディスク上の菌液に対する殺菌効果は、レーザーとチタンの組み合わせで最も高かったが、レーザー単独でも効果があった。レジンに予め付着した細菌に対する殺菌効果は、レーザー単独でも認められたが、レーザーとチタンの組み合わせがより高かった。細菌付着抑制効果は、レーザー照射単独のみで認められたが、これはレーザー照射によるレジン表面の疎水性への変化のためと思われた。
以上の結果から、青紫色半導体レーザーと二酸化チタンを併用した場合の殺菌効果が確認され、持続的な殺菌、抗菌効果を期待する新しい歯面、材料の処理方法開発の可能性が示唆された。

小佐野 貴識, 鶴見大学歯学部, 5年生

介護用吸引式指歯ブラシの開発

要介護高齢者の口腔ケアを容易に介護者が指に装着して使用する安価で操作性の良い歯ブラシを開発した。市販の歯ブラシのヘッド部分を切断し、中央に穴をあけ、常温重合レジンで作製した指サックに連結させた。吸引器に接続することも想定し、歯ブラシのヘッド部分から指サックの末端まで指の腹側に沿って 14Frチューブをレジンで固定した。本指歯ブラシの清掃効果をマネキンの上下顎歯に食紅で着色したジェルを塗布し、5分間の清掃後、ジェルの残留状態を視覚的に評価した。なお、ガーゼを巻いた指による清掃法と市販歯ブラシと吸引器による清掃法と比較した。ガーゼでの清掃は小窩裂溝と歯頸部にジェルの取り残しがあった。市販歯ブラシと吸引器による清掃法は全ての部位のジェルが完全に除去できたが、歯ブラシの保持が不安定であり、両手を使用するための不便さがあった。今回開発した指歯ブラシは全ての部位のジェルが完全に除去できるだけでなく、片手のみの清掃であるので非常に操作性が良かった。

大下 尚克, 愛知学院大学歯学部, 5年生

モンゴル国における活動の環境衛生学的および口腔衛生学的評価

WHOや日本の水道法によると、歯、口腔の健康と地域の水の衛生には深い関係があるとされている。そこで2000年から毎年夏にモンゴル国においてある国際医療協力活動が展開されているので、モンゴル国における環境衛生と口腔衛生状態について明らかにするために水質調査および国際医療協力活動の評価を行った。水質調査はモンゴルの異なった場所における飲料水とウランバートル市域の水源の水を確保し調査を行った。国際医療協力活動では口腔内診査、CPI値の測定、ART法による処置、ブラッシング指導を行った。水質調査の結果は全体的にフッ化物濃度が高かったのものの、ある場所におけるフッ化物濃度が突出していた。さらにその周辺で行われた活動で歯フッ素症の患児が見られたため早急に何らかの対策を講じる必要がある。医療協力活動の追跡調査によってわかったART法による充填物の一年後の保持率は最高で33%と非常に低かったので、ART法に関する技術向上も含めた検討が今後必要である。一方、追跡調査によってCPI値が改善されていることがわかり、この国際医療協力活動から一定の効果が得られていると考えられる。

大杉 真澄, 松本歯科大学, 5年生

in vitroバイオフィルムモデルに抗生物質はどのように影響するか?

本研究では、ハイドロキシアパタイトへの初期付着能の強いStreptococcus gordoniiと歯周病原因菌であるPorphyromonas gingivalisを共培養しin vitroバイオフィルムモデルを作成した。そのモデル系に、テトラサイクリン系抗生物質のミノサイクリンと、マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン、アジスロマイシン、ジョサマイシンを用い、バイオフィルムに対する薬剤効果を検討した。4種類すべての抗生物質がバイオフィルム形成抑制能を有していることが示された。また、これまで抗生物質に対して抵抗性を有するといわれてきたバイオフィルムに対して、アジスロマイシンとエリスロマイシンがバイオフィルム破壊能を示していた。この結果は走査型電子顕微鏡によっても観察することができた。本実験で用いた4種類の抗生物質は、浮遊細菌に対して抗菌活性をもつことと、エリスロマイシンとアジスロマイシンが、バイオフィルムに対して強い浸透性を持つ可能性を示唆した。

加藤 智崇, 日本歯科大学歯学部, 5年生

知的障害児に対する写真絵カードを用いたブラッシング指導の効果

「健康日本21」の目的にはQOLの向上があり、障害者でも重要な課題である。特に良好な口腔衛生状態の維持はQOLと密接であることから、本研究では障害者のQOLの向上を目指し、知的障害児に対する視覚素材を用いた新しいブラッシング指導法を検討した。今回考案した写真絵カード法は従来のイラストや歯式ではなく、実際の歯列の写真を用いて障害児がより視覚的に自分の口腔内状況を認識できるように工夫したものである。対象者は精神遅滞の小児で、絵カードを用いる群と鏡のみを用いる対照群の2群に分けた。まず2群とも口腔内染め出し後PCRを評価し、絵カード群では、汚れている部位を赤のペンで絵カードの歯列上に被験者と共に印記し、磨くべき部位を指導した。対照群では、汚れを鏡で見せながら指導した。そして4週後再度PCRを評価した。その結果、絵カード群ではブラッシングが必要な部位の認識が対照群より速やかで、また4週後来院時までの持続効果があった。これらの結果から、写真絵カードなどの視覚素材を用いたブラッシング指導は知的障害児でも有用で、また健常児と同様の知的発育段階を踏まえることで効果的に指導できることが示唆された。

岸野 香織, 明海大学歯学部, 5年生

培養口腔正常細胞の加齢に伴うフッ素感受性の変化

フッ素は、齲蝕予防や再石灰化促進などの好ましい作用を示す反面、細胞傷害作用などの好ましくない作用も有するため歯科臨床での使用に関して賛否両論がある。今回、ヒト口腔組織由来正常細胞の試験管内老化の過程で、フッ化ナトリウム(NaF)に対する感受性がどのように変化するかを検討した。歯肉線維芽細胞、歯髄細胞、歯根膜線維芽細胞は、大学倫理委員会規定に従い、矯正抜歯の第一小臼歯から採集した。毎週1:4の継代培養を行い、中間日に培地交換を行なった。細胞傷害活性およびミトコンドリアの活性は、MTT法により、アポトーシスの誘導は、DNAの断片化およびカスパーゼの活性化により検討した。継代培養が進むにつれ(老化の進行に伴い)細胞飽和密度が直線的に減少し、約20回の分裂後細胞増殖を停止した。NaFは、濃度依存的に細胞傷害活性を示したが、低濃度での増殖促進作用(hormesis)およびアポトーシスは誘導しなかった。老化に伴い、いずれの細胞でもNaFに対する感受性は低下し、ミトコンドリアの機能は、終末期において増加した。老化に伴う感受性変化の原因解明は、フッ素の歯科での適応を考える上で重要であると考える。

木村 美穂, 神奈川歯科大学, 6年生

ミニ診療室模型による小児の歯科診療に対する心理評価の試み

歯科治療は少なからず不安感あるいは恐怖心を受診者に与える。特に小児にとっては、大きなストレスになっていると思われる。そこで、小児の歯科診療に対する不安あるいは恐怖を客観的に評価するためにミニ診療室模型を作製し、小児の心理状態を効果的に評価できるかどうかを検討した。
調査は、歯科治療に来院した3歳から5歳の小児48名を対象にして、ミニ診療室模型と歯科診療スタッフおよび家族の人形を用いて行った。評価は、小児が並べた人形の配置と保護者および小児へのアンケート調査によって行った。
その結果、人形の配置タイプはさまざまであったが、その中で治療椅子に自分を乗せるか、乗せないかは不安や恐怖を表現しているように考えられた。しかし、不安の大きさと人形の位置との距離的関係は明らかに出来なかった。
今後さらに検討を進めることによって、ミニ診療室模型を用いた小児の歯科診療に対する心理評価は、小児歯科臨床に役立つと考えられた。

齋藤 ゆかり, 朝日大学歯学部, 5年生

チェアーサイドTiny-SEMシステムで義歯プラークを観察することが介護士による老人ホームの入居者の口腔内清掃に対する動機付けに与える影響の評価

高齢者の口腔内清掃は、QOLの向上のみならず誤嚥性肺炎の発症に大きく影響を与えるものである。今回、介護士に対して、老人ホームの入居者の口腔内清掃の介助、援助に対する動機付けのために、チェアーサイドTiny-SEM(走査型電子顕微鏡)システムによる、義歯プラークの観察がどのように影響を与えるかを評価した。対象者は老人ホーム介護士42名で、口腔内清掃に対する意識調査(Pre-Q)を行った後、入居者の義歯プラークをTiny-SEMで観察し、口腔内清掃に対する意識調査(Post-Q)を再度行った。結果は、義歯プラークがTiny-SEMで明瞭に観察され、Post-Q17「実際に義歯プラークを観察して、口腔内清掃に対する気持ちが変化しましたか?」の質問への回答を目的変数とし、他の質問への回答を説明変数とし重回帰分析を行った中で、Pre-Q11「義歯プラークが肺炎の原因であることを知っていますか?」への回答に負の相関関係が認められた。このことからTiny-SEMによるプラークの観察が介護士に対して、入居者の口腔内清掃の介助、援助に対する動機付けに大きな役割を果たしたことが示唆された。

坂元 正樹, 北海道医療大学歯学部, 5年生

粉砕したエナメル質を配合した歯冠修復用硬質レジンの諸性質

近年、歯冠修復用硬質レジンの強度は、フィラーの高密度充填化によって飛躍的に向上した。しかし、多量に配合された硬いフィラーによって、対合関係にある天然歯のエナメル質が磨耗する可能性がある。そこで本研究では、対合歯を磨耗させない歯冠修復用硬質レジンの開発を目的として、エナメル質の粉末をレジンに配合し、高い強度を有するコンポジットレジンの作製を試みた。牛歯を粉砕した粉末からエナメル質粉末を分離して、UDMA系のレジンに80 mass %あるいは85 mass %配合した。光増感剤としてカンファーキノンを用いた。試験片を光重合あるいは光重合後に100℃で30分間加熱して作製し、硬さ(Hv)と圧縮強さを測定した。フィラー含有量の増加にともなって、Hvと圧縮強さの値は高くなった。フィラーを85 mass %含有した試料のHV は、加熱処理することによって95.2に達し、市販されているほとんどの硬質レジンよりも高い値を示した。これらの結果から、多量のエナメル質粉末をレジンに配合することによって、高い強度を有し、かつ対合歯を磨耗させない新しい歯冠修復用硬質レジンの開発が可能であることが明らかとなった。

柄 なつみ, 広島大学歯学部, 6年生

歯根膜の再生・保存法の確立と新たな歯の移植法の開発

本研究は、歯根膜の再生と長期保存のための凍結保存法の確立を目的とした。
まず、矯正歯科治療のために便宜抜去した小臼歯の歯冠側根面の歯根膜およびセメント質を除去した。無処置の抜去歯、全面にアテロコラーゲンを塗布したもの、さらにコラーゲンを塗布し、人工骨に埋め込んだものを14日間培養した。次に、8週齢Wistar系雄性ラット(180±20g)の右側上顎切歯を抜去し、プログラムフリーザを用いて3日間凍結保存を行った後、抜歯窩に再植したものを実験群、抜去直後に再植したものを対照群とし、再植7日後の歯周組織の組織学的変化について観察した。その結果、歯根表面にアテロコラーゲンを塗布し、人工骨に埋め込むことにより、歯根膜組織の再生がより広範囲に及ぶことが示された。一方、ラット上顎切歯再植7日後の実験群、対照群の歯周組織の再生は、比較的良好であった。これらの結果から、本方法により培養した歯根膜をプログラムフリーザにより凍結した後、長期的に保存することにより、任意の時期における歯の移植が可能となり、かつ歯根膜が完全に残存していることから、歯の自家移植の良好な成果が期待される。

永田 敦子, 日本大学松戸歯学部, 6年生

顎関節症児の顎運動と顎顔面形態の検討

顎関節症状を伴わない小児においてもMRI所見から関節円板前方転位が認められたという報告から本学において開発された簡便な顎運動解析装置を用いてわずかなクリックを呈する小児と不正咬合を主訴で来院し、顎関節症症状のない小児の顎運動解析を行った。加えて顎関節症児と非顎関節症児の顎顔面形態を検討するため頭部エックス線規格写真を用いて顎顔面の基準点間距離を比率で表したところN-Pogに対するA-B間距離は顎関節症群では非顎関節症群より有意に小さかった。
以上のことから、下顎上の3点の軌跡を描記することによってわずかな顎関節異常をも検出できることが解った。さらに、N-Pogに対するA-B間距離すなわちdeep biteが顎関節症の危険因子であることが明らかとなった。
以上のことから小児歯科臨床において顎運動解析を行い、早期に顎関節症の原因を運動軌跡から考察し、deep bite は顎関節症の発症を予防するために早期に治療することが必要であることが示唆された。

松田 弥生, 岡山大学歯学部, 4年生

矯正治療経験者と未経験者の矯正装置に対する認識の違いに関するアンケート調査

不正咬合を有する人の中には矯正装置に対する違和感のために矯正治療を受けない人がいると報告されているが、一般の人がどのような矯正装置を知っているのか、矯正装置に対してどのようなイメージを持っているのかについての調査はない。本研究では矯正装置を装着したエポキシ模型と女性の顔写真を作製し、これらの資料を使用して大学生を対象に矯正治療経験の有無、装置に対するイメージなどについてのアンケート調査を実施した。アンケート結果を矯正治療経験者(20%)と未経験者(80%)の2群に分け、比較検討した。矯正治療未経験者は経験者よりも矯正装置について知っている人が少なく、未経験者は経験者より、装置を装着することに抵抗感を持っていた。未経験者も経験者も他者が着けている装置から受ける印象に差はなく、気にしていないことが示唆された。以上より、未経験者は経験者よりも目立つ装置をつけることに抵抗感を持っているが、経験者も未経験者も自分自身が着けている矯正装置は気になるが、他人が着けている矯正装置にはあまり気にしないことが示唆された。

吉田 能得, 大阪大学歯学部, 4年生

バーチャルリアリティーデバイスを用いた教育的抜歯シミュレーション

最近、臨床実習において我々学生が直接患者さんの治療を行う機会は非常に少なくなっている。歯科で重要な手作業による医療技術が未習熟のままで、卒後臨床現場に立つ我々の不安は大きい。そこで、本研究ではコンピュータによるバーチャルリアリティー技術の中でも、特に力を感じることができるハプティックデバイスを応用し、歯科教育のトレーニング用シミュレーションシステムの開発をめざした。
今回は、埋伏智歯の抜歯のシミュレーションを対象とし、まず実際の患者さんのCT像を用いて3次元像を作成し、それから歯肉、智歯、顎骨、下顎管を個々のオブジェクトとして分離した。そして、ハプティックデバイスのツールを用いて、歯肉の切開、智歯周辺顎骨の削除、智歯の分割、抜歯のプロセスを手術時の感触に似た力覚を手に感じながらを進めることができた。今回のバーチャルリアリティーデバイスを用いた抜歯シミュレーションにおいて、医療事故の回避において重要な下顎管を抽出し、その走行を把握して下顎管を損傷しないように操作する方法をトレーニングできるなど、教育的な大きな意味があると考えている。

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