2016年・夏

2016 年 8 月 3 日 コメントはありません

第22回日本代表選抜大会は2016年8月19日(金)に日本歯科医師会館にて開催されます。一般見学は14時頃~16時頃に予定されております。事前登録が必要になりますので、参加する/参加できるかもしれない方は8月5日(金)までに代表・三浦までご連絡ください。

また、公式プログラム終了後は新会員を歓迎する懇親会が日本歯科医師会館近くにて開催されます。都内近郊にいらっしゃるOB/OGの方々はぜひご参加ください。

懇親会詳細については、決定次第ML等で連絡します。
SCADA-Japan代表 三浦

カテゴリー: 未分類 タグ:

第21回大会

2016 年 6 月 5 日 コメントはありません

第21回大会 2015年(平成27年)8月21日 参加校27校

タイトルおよび発表内容要旨 (上位入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝/日本代表 – 基礎部門 第1位:田中 大貴,東京医科歯科大学歯学部,6年生

閉経後骨粗鬆症モデルにおけるFactor X発現制御機構

 

準優勝 – 臨床部門 第1位:大平 匡徹,新潟大学歯学部, 4年生

種々の条件刺激がもたらす嚥下機能の変化

 

基礎部門 第2位:成昌 ファン,鹿児島大学歯学部, 5年生

メカニカルストレスによる間葉系幹細胞の分化能維持

間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)は、自己複製能力を持つ多能性細胞であり、培養条件を変えることで、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞へと分化することができる。MSCは多継代培養によって分化能が喪失することが知られており、MSCの歯科臨床への応用を成功させるためには、幹細胞の分化多能性を維持させる新しい細胞培養法の開発が必要である。これまでの研究で、MSCを低出力超音波(LIPUS)によるメカニカルストレスで刺激すると、分化能維持に関わる遺伝子であるNanog, Oct4 , Sox2の発現が上昇することが分かった。そこでマウス脂肪組織由来MSC 及びマウス頭蓋冠由来骨芽細胞前駆細胞を継代する際、毎日120分間のLIPUSを照射しながら培養し、細胞の骨分化能の変化を解析した。その結果、LIPUSを照射することで、継代培養による石灰化基質形成の低下や骨分化マーカー遺伝子の発現レベルの減少が抑制され、MSCと骨芽細胞の骨分化能を維持できた。MSCを継代するとNanog,Oct4 ,Msx2の発現が減少していたが、LIPUS 刺激はこれらの遺伝子群の発現も回復させた。更に、この現象に関わるシグナル分子を探索したところ、MSCが骨や脂肪へ分化するに従って発現が減少する分子であるSykが、LIPUS 刺激によって強く活性化することが分かった。そこでMSCにSyk 阻害剤及びSyk 特異的siRNAを施すと、LIPUSによって誘導されるNanogの発現レベルの上昇が抑制された。MSCをメカニカルストレスで刺激しながら培養することで、細胞継代による分化能の喪失を防ぐことができる可能性がある。

臨床部門 第2位:中島 美咲,北海道医療大学歯学部, 6年生

歯科疾患予防のための『ムギネ酸抽出物含有“金平糖”』の開発

歯周病の予防には、現在ブラッシングが唯一の方法であるが、高齢者、要介護者などは、長期的に適切な
ブラッシングを継続することが事実上困難である。そこで、イネ科の植物根より分泌される鉄キレート物質であるムギネ酸を、食べやすく、親しみと懐かしさを覚える”金平糖”に添加したものを試作し、歯科応用、特に歯周病の予防に応用できないかと考えた。
ムギネ酸抽出物は、歯周病原性を示す4 種のグラム陰性桿菌(Porphyromonas gingivalis, Prevotella
intermedia, Fusobacterium nucleatum, Aggregatibacter actinomycetemcomitans )に対して抗菌性
を示し、歯周病原因子であるジンジパインの活性を有意に抑制することが確認された。また、その抽出物は、口腔由来培養生細胞に対して低為害性であることや炎症性サイトカインI L – 6の産生を抑制することが示された。さらに、試作した「ムギネ酸抽出物含有”金平糖”」が、唾液中のグラム陰性菌の増殖を著しく抑制したことから、「ムギネ酸抽出物含有”金平糖”」は歯周病の予防に有効であることが確認された。

安部 彬彦, 長崎大学歯学部, 6年生

5種類の表面処理剤がコンピュータ支援製作用コンポジットレジンと前装用レジンの接着強さに与える効果について

コンピュータ支援設計/コンピュータ支援製作(C A D / C A M)システムで加工されたコンポジットレジンクラウンが広く補綴治療に使用されているが、単一色のC A D / C A M 用コンポジットレジンブロックのみを使用しても、天然歯の色調を完全には再現できない。患者の審美的要求に応え、隣在歯との接触点を調整し、さらに破損したコンポジットレジンクラウンを補修するためにも、機械加工されたC A D / C A M 用コンポジットレジンに光重合型コンポジットレジンを前装する必要がある。しかしながら、C A D / C A M 用コンポジットレジンに対するレジンの接着に関する研究は少なく、表面処理剤の一成分として重合開始剤に着目した報告もなかった。そこで本研究では、5種類の表面処理剤がC A D / C A M 用コンポジットレジンと光重合コンポジットレジンとの接着強さに与える効果を調べることを目的とした。接着試験の結果、重合開始剤含有する2種類の表面処理剤を用いた場合、重合開始剤を含有しない3種類の表面処理剤に比べて接着強さが有意に高かった。また、シランモノマーの塗布よりむしろ界面の重合促進が、C A D / C A M 用コンポジットレジンと前装されたコンポジットレジンとの接着改善に寄与することが示唆された。

赤羽 由紀子, 日本歯科大学生命歯学部, 3年生

口腔レンサ球菌の病原因子とバイオフィルム形成の関連性

口腔レンサ球菌は口腔において最も優勢な細菌群で、口腔バイオフィルムである歯垢(デンタルプラーク)を形成する。その形成には、グルカン産生を触媒するグルコシルトランスフェラーゼ(G t f)などの付着・定着に関わる病原因子が重要な役割を果たしていると考えられている。この研究では、口腔レンサ球菌のバイオフィルム形成と病原因子との間に、実際に因果関係があるかどうかを明らかにすることを目的として行った。健康な被験者より口腔レンサ球菌を分離し、バイオフィルム形成能をポリスチレン製U底マイクロタイタープレートを用いて測定した。また、病原因子としてP C R 法によるg t f 遺伝子の検出を行い、バイオフィルム形成能との比較検討を行った。その結果、口腔レンサ球菌と思われる野生型3 6 菌株のうち、2 0 株P C R 法によるg t f 遺伝子由来のD N Aの増幅が認められた。これらの株は、増幅されない株に比べて、バイオフィルム形成能が有意に高かった。今回用いたプライマーによるP C Rは、バイオフィルム形成能を評価する手段として、う蝕活動性試験などに臨床応用できる可能性が示唆された。

飯塚 基晴, 岡山大学歯学部, 4年生

がん浸潤・転移イメージングモデルの確立を目指した研究

がんは本邦における死亡原因の第一位である。さらに、がんの浸潤・転移はがん治療における大きな問題であり、そのメカニズムに関する研究は、がん患者の生存率向上に必須である。がん浸潤・転移メカニズムの解明にはin vitro/in vivo イメージングモデルが極めて有用と考えられるので、我々は既報のがん浸潤・転移モデル系を用いて、浸潤・転移関連遺伝子発現の可視化を試みた。本研究では、既知の浸潤・転移関連遺伝子のプロモーター配列を蛍光レポーター遺伝子上流へ組み込んだプラスミドベクターの構築を行い、さらに蛍光ベクターの高転移性ならびに低転移性のがん細胞株への遺伝子導入によって、これら関連遺伝子プロモーター支配下で自ら蛍光発光する高転移性ならびに低転移性細胞の単離に成功した。本研究で得られたこれらの可視化細胞株は、in vitro/in vivo イメージング以外に、がん浸潤・転移制御因子の同定や新規抗がん剤の機能的スクリーニングなどにも極めて有用であると考えられる。

石倉 枝美里, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 4年生

細胞老化に対するコーヒー成分クロロゲン酸の効果
-コーヒーは歯周病に起因する老化をレスキューするか?-

 

大田 圭一, 北海道大学歯学部, 6年生

呼吸のリズムと量の随意的調節による唾液分泌促進の可能性

口腔乾燥に対する非薬物的な対症療法の確立が待たれる。本研究では呼吸のリズムや量を随意的に調節することによる自律神経活動の変化と唾液分泌促進との相関を検証した。健常成人2 1 名を被験者とし、5 分間の唾液分泌量と、唾液アミラーゼ活性を測定した。自律神経活動機能評価のために心拍変動( 心拍数、R M S S D)を測定した。呼吸条件は第1 回、第3 回、第5 回:自然呼吸、第2回:深呼吸( 6回/ 分)、第4 回: 頻呼吸( 3 0 回/ 分)とした。第1回と各回のデータを比較した。その結果、深呼吸による唾液分泌量変化率から唾液量増加群と唾液量減少群に分けられた。増加群は基本的な唾液分泌量が少なく、減少群は基本的な唾液分泌量が多かった。増加群は深呼吸時に唾液分泌量と心拍数が有意に増加した。減少群は深呼吸時、頻呼吸時に唾液分泌量が有意に減少し、深呼吸後、頻呼吸後にR M S S Dが有意に減少した。各測定項目に相関関係はみられなかった。随意的な深呼吸により唾液分泌促進に効果がある可能性が示されたが、基本的な唾液分泌量の個人差に大きく影響される事も明らかとなった。自律神経活動の変化と唾液分泌量との相関は現時点では未確定で、今後解明していく課題となった。

小方 昌平, 徳島大学歯学部, 5年生

ドクダミ(Houttuynia cordata Thunberg)の口腔領域への応用

う蝕、歯周病は1 3 歳でのう蝕有病者率が9 0%を越え、6 4 歳で歯周病の有病者率が8 2 . 5%( 平成2 6年度厚生労働省、歯の健康)となっており依然として大きな問題である。また、肺炎は平成2 3 年に死因の第3位となり、その中でも高齢者の誤嚥性肺炎は特に注目されており、この予防は歯科の大きな課題の一つとなっている。
ドクダミは、東アジア地域に分布し、日本の民間生薬のひとつとして古くから用いられてきた。効能としては抗菌活性を有していることから化膿性皮膚炎などにも利用されてきた。本研究ではドクダミを口腔領域へ応用することの可能性について検討した。
今回、2つのドクダミ試料(d H C、w H C P)を用いて、抗菌活性、バイオフィルム形成抑制能、L D H 細胞障害性試験、抗炎症作用について検討を行った。その結果、w H C Pは抗菌活性を有していた。バオフィルム形成抑制実験において、S . m u t a n s のバイオフィルム形成量は約1 / 6に減少しており、C . a l b i c a n s では、約1 / 1 0まで減少していた。細胞毒性は認められなかった。また歯肉上皮細胞に対しては、 I L – 8 産生量を減少させることから抗炎症作用を有していることが確認された。
以上よりドクダミは、口腔領域への応用が期待される植物であることが明らかとなった。

大樹 慶太, 九州歯科大学歯学部, 6年生

培養細胞を用いたC O X 阻害薬の多様な作用の検討

酸性非ステロイド性抗炎症薬(N S A I D s)の主な作用はシクロオキシゲナーゼ(C O X)の活性阻害である。一方N S A I D sには糖尿病や癌の治療に効果を示すものもあり、C O X 以外の標的の存在が示唆される。新たな作用の発見や標的分子の同定はNSAIDsの有効利用を促進すると考えられる。私たちは、C O X 以外にも作用するN S A I D sは、抗炎症作用以外の細胞機能を指標に検索すればC O X 阻害活性に比例しない効果を示すと考えてこれを検証した。
ヒト口腔癌由来細胞株(C a 9 – 2 2、S A S)の細胞遊走能に対する種々のN S A I D sの影響を調べたところ、c e l e c o x i b、e t o d o l a cにて顕著に抑制されたが、他のN S A I D s では効果を認めなかった。マウス骨芽細胞様細胞株(M C 3 T 3 – E 1)を用いた骨芽細胞の分化についてはc e l e c o x i b 及びvaldecoxibがこれを強く抑制した。上記のNSAIDsの効果は各々のCOX 阻害活性と相関していなかったことから、C O X 以外の標的を介した作用であることが示唆され、仮説を支持するものであった。これらの作用の機序解明は、N S A I D sの新規利用法に繋がることが期待される。

川島 央暉, 日本大学松戸歯学部, 4年生

食生活が分泌型I g A 産生に与える役割

日々の食生活が免疫機能に与える影響は大きい。現在われわれの食事には多くの脂肪が含有されており、日々脂肪が蓄積されている。肥満者は種々の感染症や癌の発症率も高いことが報告されており、これは肥満によって生じる免疫機能の低下が関与していると推測されている。高脂肪食を食べ続けた場合、腸管内の細菌のバランスが崩れ、概日リズムが正常ではなくなり免疫機能に大きなダメージを与えるのではないかと考えた。我々はマウスを普通食群と高脂肪食群の2 群に分けて飼育した。マウスの唾液腺と腸を用いて、分泌型I g A 抗体の産生や関連因子の発現を検討した。その結果、高脂肪食摂取群では高濃度の分泌型I g A 抗体の産生を認めた。さらに、I g Aクラススイッチ関連遺伝子群の発現の上昇を認めた。他の方で、分泌型I g Aが管腔側へ輸送するp I g Rには発現リズムが通常食摂取マウスと大きく変動することを認めた。以上の結果から高脂肪食の習慣的摂取は、生体の恒常性を維持する概日リズムの変調を来すことで、免疫機能が破綻していくと考えられる。

甲山 尚香, 昭和大学歯学部, 5年生

妊娠マウスへの抗RANKL抗体の投与は新生仔の大理石骨病を誘発する

骨吸収抑制剤デノスマブは、破骨細胞の分化誘導因子であるR A N K Lに結合するモノクローナル抗体を主成分とし、骨転移を伴う癌や骨粗鬆症の治療に用いられている。しかし、妊婦には禁忌であるため、母体や胎児への作用は不明である。そこで我々は、抗R A N K L 抗体を妊娠マウスに投与し、それが骨組織に及ぼす影響について解析した。妊娠1週目のマウスに抗マウスR A N K L 抗体( 5 m g / k g)または生理食塩水( 対照群)を投与したところ、いずれも同じ日数経過後に生きた新生仔を出産した。それらの骨格標本を比較した結果、外見上の差は認められなかったものの、組織透明化試薬およびμC Tを用いた解析により、抗体投与マウスにおいて骨髄腔の閉塞を伴う大理石骨病の発症を認めた。また、抗体投与マウスの長管骨や脊椎骨では、対照群に比べ破骨細胞が著しく減少していた。一方、抗体投与した母マウスの骨量の増加も認められた。以上より、投与した抗R A N K L 抗体は胎盤を通過後、胎児の破骨細胞形成を阻害することによって新生仔の大理石骨病を発症させたと考えられる。すなわち、妊婦へのデノスマブ投与は胎児の骨代謝に異常をもたらすことが予想される。

鹿間 聡子, 朝日大学歯学部, 4年生

歯科法医学研究
-災害犠牲者の身元確認のために歯科所見から得られる情報の検討-

2 0 1 2 年と2 0 1 3 年に施行された2つの法律では、大学における法医学/歯科法医学に係る教育および研究の充実、死因または身元究明のための科学的調査の実施体制の整備および身元究明に係る歯科医師の育成および資質の向上が明記されており、歯科法医学の重要性が示された。本研究では、実際の災害犠牲者の身元確認に利用できるような信頼できる歯科所見を得ることができるかどうかを確認するために、乾燥頭蓋骨と抜去歯を試料として歯科医学的な情報を採取し、デンタルチャートを作成して、その情報を検討した。
その結果、咬耗度分類に基づく推定年齢の調査により、実際の年齢に近い年齢が推定できると考えられた。また、乾燥頭蓋骨のデンタルチャートを作成し、検討したところ、年齢だけでなく生前の生活習慣が推定されることがあることが判明した。
歯の形態や歯列、治療痕などの歯科所見は万人不同であり、歯は白骨化遺体でも残るため、歯科所見は極めて特異性の高い個人識別法であることが確認された。将来、大規模災害が発生した際には、歯科医師として犠牲者の身元確認に貢献できるよう歯科法医学の知識や技術を習得しなければならないと認識した。

土屋 寛奈, 広島大学歯学部, 5年生

可溶型F G F R 2 bの組織特異的な分布が頭蓋顎顔面形態形成におけるF G F 1 0 – F G F Rシグナルを調節する

線維芽細胞増殖因子(F G F 1 0)は上皮- 間葉相互作用における間葉側因子として知られているが、間葉系細胞に直接作用するとの報告もあり、骨・軟骨形成を制御する可能性がある。そこで、F G F 1 0を過剰発現する遺伝子改変(T G)マウスを作製し、骨・軟骨への影響を解析した。T Gマウスは肥大軟骨、骨の低形成を伴う骨格系の劣成長を示した。これらの所見は頭蓋顎顔面で顕著であったが、一方で鼻中隔軟骨のように過形成を呈する組織も見られた。FGF 10の受容体FGFR 2の遺伝子発現解析から、骨・軟骨に新しいアイソフォームを同定した。しかし、このアイソフォームは鼻中隔に発現していなかった。予想される翻訳産物はF G F R 2 bの可溶型受容体(s F G F R 2 b)と推測され、前軟骨細胞株A T D C 5の培養上清中にも検出された。同細胞にsFGFR 2 bを過剰発現させると細胞増殖が促進されたことにより、同受容体はデコイ受容体として機能すると考えられた。以上より、T Gマウスでは、過剰なF G F 1 0 が特定の骨・軟骨においてs F G F R 2 bを捕捉することによりF G F – F G F Rシグナルのバランスが破綻し、骨・軟骨形成が障害されたものと推察される。

根本 恭利, 東北大学歯学部, 6年生

A T P – P 2 Rシステムを介した唾液腺細胞による炎症性サイトカイン産生の誘導

細胞外A T PはP 2 受容体(P 2 X RとP 2 Y R)を介して細胞を活性化し、炎症反応や組織障害を誘導する。唾液腺においてもA T P – P 2 Rシステムによる唾液腺障害の誘導が示唆されている。本研究では、ヒト唾液腺導管由来細胞株であるH S G 細胞を用いて、P 2 Rを介した炎症性サイトカイン産生の誘導について解析した。
A T P 刺激H S G 細胞では、刺激濃度に依存したI L – 6 産生の増加が認められた。A D P、U T PおよびU D P 刺激でもA T P 刺激と同程度のI L – 6 産生が誘導され、アゴニストの選択性から、P 2 Y 4の関与が示された。また、細胞外C aイオンをキレートすることにより、A T P 刺激によるI L – 6 産生誘導が部分的に抑制されたことから、イオンチャネル型受容体であるP 2 X Rの関与も示唆された。さらに、A T P 刺激H S G 細胞では、I L – 8、V E G Fおよびplasminogen activator inhibitor-1の産生増強も認められた。
以上の結果から、細胞外A T PはP 2 Rを介して唾液腺細胞による炎症性サイトカイン、ケモカインおよび血管新生促進因子などの産生を誘導し、唾液腺疾患に関与していることが示唆された。

長谷川 祥, 東京歯科大学, 6年生

鎖骨頭蓋異形成症患者の抜去過剰歯歯髄細胞由来i P S 細胞の作製

鎖骨頭蓋異形成症( C C D )は、常染色体優性遺伝の疾患であり、鎖骨低形成、頭蓋骨縫合骨化遅延、歯の放出異常などを特徴とする大変稀な疾患である。i P S 細胞はその増殖能と多分化能から再生医療の移植細胞のソースとしてだけでなく、治療法の確立されていない遺伝性疾患に対する病態再現や創薬への応用にも期待されている。本研究は本学倫理審査委員会にて承認済みである( 承認番号5 3 3 )。
患者に研究の目的・趣旨を十分説明し同意を得て、本学口腔外科外来において口腔組織あるいは治療目的に過剰埋伏歯を抜去し、口腔粘膜組織から作製した細胞(C C D 3 1 8 – M)および過剰埋伏歯歯髄から作製した細胞(C C D 3 1 8-P)いずれも線維芽細胞様形態をもつ細胞を得た。これらをi P S 細胞作製における4因子を発現させるセンダイウイルスベクターで処理し、各々から密集した小さな細胞質を持つi P S 細胞様のコロニーを確認し、クローンを得ることに成功した。口腔は細胞活性の高い結合組織に富んでおり、i P S 細胞の製作に適した細胞を得ることが可能である。治療において得られる抜去歯の歯髄細胞は、i P S 作製の有用なソースとなり得ることが示された。

濵田 歩実, 鶴見大学歯学部, 3年生

コンパニオン・アニマルの歯周病予防
-抗歯周病菌活性をもつ餌材料の発見-

コンパニオン・アニマルであるイヌとネコの8 0 %が4 才までに歯周病を発症すると推定されており、歯周病予防はペットの健康管理上重要な課題である。ヒトと異なり歯ブラシによる口腔ケアは難しく、飼い主の高齢化ではさらに難易度が上がるが、簡便な予防方法が存在しない。そこで、餌に利用される天然の材料中に、歯周病菌に対し抗菌性があるものを見出し、餌に配合しペットの毎日の食生活で歯周病を自然に予防する可能性について検討した。被検菌株はPorphyromonas gingivalis ATCC 33277 とPorphyromonas gulae ATCC 51700で、ココアまたはテオブロミン除去ココア粉末、p Hを中性に調整したキウイ果汁、タマネギ乾燥粉末を用い、抗菌試験とトリプシン様酵素活性の検出を行った。その結果、すべての試験材料に両菌種に対する抗菌性とトリプシン様活性抑制効果が認められた。したがって、ココアとともにキウイとタマネギを餌に配合することで歯周炎の発症予防に有効と考えられた。また、異なる複数の天然成分を低濃度ずつ含有させることで、生体に対して為害作用を抑えることができるものと考えられた。

林 彩, 福岡歯科大学, 4年生

細胞老化に対するコーヒー成分クロロゲン酸の効果
-コーヒーは歯周病に起因する老化をレスキューするか?-

コーヒーポリフェノールの一種であるクロロゲン酸 (C G A)については、動脈硬化や癌の予防に働く等の効能が昨今報告されており、中でも抗酸化作用が注目を集めている。嗜好品としてコーヒーが飲用される機会は多く、本研究では、「コーヒー飲用が、口腔内の健康に良い影響を与える」との仮説に立ち、ヒト角化細胞株H a C a T 細胞を用いて細胞老化に与える影響を検討した。老化誘導剤として用いたエトポシドは、老化マーカー (β – g a l)陽性細胞を有意に増加させた。また、細胞老化の原因となるD N A 損傷の指標であるリン酸化型ヒストンγ – H 2 A X、および老化にリンクするp 5 3 活性化も有意に増加させた。エトポシドによるこれらの老化誘導現象は、C G Aによって濃度依存的に抑制された。更に、歯周病原因菌Porphyromonas gingivalis 由来リポポリサッカライド(p g L P S)によっても、β- g a l 陽性細胞が増加し、C G Aによる抑制が観察された。これは、p g L P Sが細胞老化を促進することを示唆している。これらのことから、C G Aが細胞老化抑制に有効であり、また、口腔の健康にも有用である可能性が示唆された。

原田 慎之介, 九州大学歯学部, 4年生

脱落歯の保存液がヒト歯根膜細胞の増殖ならびに表現型に及ぼす影響

外傷などにより脱落した歯を再植する際、再植までの時間と保存状態が予後に大きな影響を及ぼす。本研究ではヒト歯根膜細胞を用いた培養系を用いて、身近に入手可能な飲料水の、脱落歯の保存液としての適性の有無に関して検討することとした。飲料水には、オレンジジュース(O J)、スポーツ飲料(I D)、牛乳(M K)、水道水(T W)を使用し、これらに浸漬したヒト歯根膜細胞の生存率、増殖能、形態変化及び歯根膜関連遺伝子発現について解析した。
細胞生存率に関しては、OJ 浸漬群及びID 浸漬群で、浸漬2時間後にはほぼ0 %の値を示した。TW 浸漬群では、4時間浸漬後に細胞生存率が減少した。MK 浸漬群の生存率は、浸漬時間に影響を受けず100 %に近い値を示し、細胞形態にも変化はなかった。一方、細胞増殖能はOR 浸漬群及びID 浸漬群で喪失したが、TW 浸漬群は、浸漬後1時間までは増殖能を示した。MK 浸漬群の増殖能及び歯根膜関連遺伝子発現は浸漬時間に関係なく維持された。
上記結果より、MKが歯の保存液として最適であることが示唆された。臨床にて歯の脱落後にMKの入手が困難な場合、脱落後1時間程度であればTWでも代用できる一方、OR 及びIDは歯の保存液としては適さないと考えられる。

日置 崇史, 松本歯科大学, 5年生

咀嚼回数を意識すると食べ物の選択は変わるか?

現代社会では、個人の食品選択の基準の多くが、好き嫌い、値段および簡便さなどにあり、その選択の結果、多くの人が栄養の偏った食生活を送り、それが様々な生活習慣病の引き金となっている。そこで、食品選択の新たな基準として、咀嚼回数という項目の追加を提案したい。多くの人は野菜や肉類を良く噛むものと捉えているという考えの元から、食品を選ぶ際に噛む回数を増やす意識を持つと、これらの食品をより多く選択し、栄養バランスがとれた食事になると考えた。そこで、「咀嚼回数を多くすることを意識すると、栄養バランスの良い食事となるように食品を選択する」との仮説を立てた。バイキング形式で1回目は自由に、2回目は「噛む回数が多くなるように食事をして下さい。」との指示を付け加え、夕食を摂ってもらった。1 0 名の被験者を、2回目の食事において食品選択の段階から咀嚼回数を増やすことを考慮した群( 選択考慮群)と、しなかった群( 選択非考慮群)に分けて、2回の食事内容の変化を分析した。本結果から選択考慮群は、野菜とそれに伴う栄養素の摂取の割合が多くなった。咀嚼回数への意識が、栄養バランスの良い食事を摂ることに繋がる可能性が示された。

東 健一郎, 奥羽大学歯学部, 5年生

虚血再灌流により発生した活性酸素は咬筋に障害を引き起こす

虚血再灌流障害は、対象の組織・臓器において虚血による酸欠状態、及びそれに続く再灌流により発現する活性酸素等によって引き起こされる。これまで虚血再灌流障害は主に中枢神経系において検索されており、口腔領域における虚血時間とその後の障害について検討した報告は国の内外に存在しない。そこで今回、虚血再灌流モデルラットを用い、咬筋における活性酸素の発現を活性酸素合成酵素(N o x)の局在から検討した。本研究ではラットの左側総頸動脈を3 0、6 0、1 2 0 分間結紮し、再灌流を6 0 分間施した。灌流固定後に咬筋を摘出し、切片を作製、各抗体により免疫組織化学的染色を行った。その結果、コントロール群ではN o x 4の微弱な反応がみられたのに対して、6 0 分結紮群では、コントロール群でみられなかったN o x 1、2の陽性反応が出現、N o x 4は反応性が増強していた。1 2 0 分結紮群ではN o x 1、2、4の反応性はさらに増強し、陽性部位は筋線維全体から辺縁部に限局した。以上のことから、咬筋における虚血再灌流障害でも多量の活性酸素が合成され、アポトーシスを引き起こすことが推測された。

藤尾 真衣, 大阪歯科大学, 5年生

きな粉は苦味マスキング剤となりうるのか?

苦味を有する薬剤は様々な方法でその苦味を抑制して使用される。その一つに苦味そのものを抑制する苦味マスキング剤を用いる方法がある。家庭で手に入る食品が苦味マスキング剤となれば、苦味を有する薬剤の摂取時に気軽に利用できるのではないかと考えた。様々な食品をスクリーニングした結果、きな粉に着目した。本研究では、きな粉の苦味抑制効果を官能評価および苦味センサーを用いて検証した。その結果、きな粉は多くの苦味成分を抑制し、特に疎水性の苦味成分を効果的に抑制することを明らかにした。また、苦味センサーを用いた苦味強度を定量的に評価する実験においても、塩酸キニーネや安息香酸デナトニウムに対してきな粉が有意に苦味を抑制していることが示された。次いで、きな粉が苦味を抑制するメカニズムをきな粉からマスキング成分を抽出し、得られた成分を動的光散乱法により評価した。その結果、抽出した懸濁液は数1 0 0 n mの粒子を形成していることを見出した。最後に、実際の薬剤に対する苦味マスキング効果の実現可能性について検討したところ、咳止めシロップ薬にきな粉を加え混和することで苦味強度が低下する結果が得られた。

尤 雅田, 明海大学歯学部, 4年生

歯の移動に伴う組織変化に対する漢方薬の影響

歯科矯正治療時に負荷される矯正力は、一週間程度継続する疼痛を誘発し矯正治療継続へのモチベーションを低下させる。しかしながら、歯の移動に影響を及ぼさず疼痛をコントロール可能な鎮痛薬は存在しない。そこで、演者は歯痛などに保険適応のある漢方薬で、C O Xを阻害しないことが報告されている立効散に着目し検討を加え、立効散は仮性疼痛反応( 酢酸W r i t h i n g s y n d r o m e 法)ならびに矯正力負荷によって生じる三叉神経領域の侵害受容反応( 開口反射)活性の上昇を抑制することを報告してきた。本実験では、矯正力負荷によって三叉神経領域に生じる組織学的変化に対する立効散ならびにアスピリン投与の効果を検討した。その結果、矯正力負荷直後に認められる歯の移動を立効散ならびにアスピリンは阻害しなかった。また、片側上顎臼歯への矯正力負荷は、両側三叉神経節Ⅱ枝領域のサテライトグリア細胞(S G C s)を活性化することが認められ、立効散ならびにアスピリンの投与は開口反射活性とS G C s 活性の両方を抑制することが明らかになった。これらのことは、立効散が矯正治療効果を妨げない鎮痛薬として適用が可能であることを示している。

横田 元熙, 大阪大学歯学部, 4年生

R E M 睡眠でも実験的に咬筋活動を誘発できる

R E M 睡眠では、興奮性ニューロンの活動が停止し、抑制性ニューロンが三叉神経運動ニューロンを抑制するため運動が生じないとされる。しかし、睡眠時ブラキシズムの患者では、咀嚼筋活動がR E M 睡眠でも発生し、その仕組みは不明である。本研究では、R E M 睡眠で強い抑制下にある咬筋運動ニューロンに興奮性入力を与え、咀嚼筋の活動性を調べた。モルモットの三叉神経中脳路核を電気刺激して咬筋単シナプス反射を誘発し、反射応答の誘発率、振幅、潜時を覚醒レベルごとに算出し、比較した。
その結果、各覚醒レベルで、反射応答の誘発率と振幅は刺激強度の上昇と共に増加した。また、これらの変数はR E M 睡眠では、安静覚醒やN R E M 睡眠よりも低い値を示した。しかし、反射応答の潜時は一定であった。以上の結果から、R E M 睡眠で強い抑制下にある咬筋運動ニューロンに興奮性入力を与えれば咀嚼筋は活動するが、一定の筋活動を発揮するには、安静覚醒やN R E M 睡眠よりも強い興奮性入力が必要であることが示された。従って、R E M 睡眠で発生するブラキシズムは、咬筋運動ニューロンの抑制を凌駕する強度の興奮性シナプス入力によって発生する可能性が示唆された。

李 埈, 神奈川歯科大学, 4年生

Porphyromonassalivosa ATCC 4 9 4 0 7 株線毛の歯周炎における役割に関する研究

P o r p h y r o m o n a s s a l i v o s a は、黒色色素産生グラム陰嫌気性桿菌であり、イヌやネコを含む様々な動物の歯肉溝から分離される。細菌表層に存在する線毛は、宿主細胞への定着・侵入因子として重要な因子であるが、P . s a l i v o s a 線毛に関する病原性状の報告は未だない。本研究はP . s a l i v o s a 線毛の歯周炎における役割について検討することを目的とした。P . s a l i v o s a 線毛タンパク質の精製はD E A E – S e p h a r o s e C L – 6 Bを用いて陰イオンカラムクロマトグラフィーにより行った。また、精製線毛による破骨細胞分化誘導能およびサイトカイン産生誘導能については、マウス細胞を用いた。実験的歯周炎はS p r a g u e – D a w l e y 系ラットを用いてP . s a l i v o s a 菌液を直接口腔内に接種して行った。その結果、P . s a l i v o s a は、P . g i n g i v a l i s 線毛とは分子量および抗原性が異なる60 -kDa 線毛を有していた。また本菌線毛タンパク質には、破骨細胞産生誘導能、炎症性サイトカイン産生誘導能が認められた。実験的歯周炎モデルにおいてP. salivosa ATCC 49407感染では有意な歯槽骨吸収が認められた。これらの結果からP. salivosa 60-kDa 線毛は破骨細胞分化誘導能、炎症性サイトカイン産生能を有し、本菌がラット実験的歯周炎モデルにおいて顕著な歯槽骨吸収を示したことから、ネコの歯周炎においてP . s a l i v o s a 6 0 – k D a 線毛が重要な病原因子であることが示唆された。

カテゴリー: 未分類 タグ:

速報:第21回SCRP日本代表選抜大会

2015 年 10 月 12 日 コメントはありません

2015年8月21日(金),歯科医師会館に於いて,平成27年度(第21回)日本歯科医師会/デンツプライ スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラムが開催されました.

今年度は27校の参加があり,以下4名が上位入賞されました.

優勝/日本代表 - 基礎部門 第1位:田中 大貴さん,東京医科歯科大学歯学部 6年生 
閉経後骨粗鬆症モデルにおけるFactor X発現制御機構

準優勝 – 臨床部門 第1位:大平 匡徹さん,新潟大学歯学部 4年生
種々の条件刺激がもたらす嚥下機能の変化

基礎部門 第2位:成昌 ファンさん,鹿児島大学歯学部 5年生
メカニカルストレスによる間葉系幹細胞の分化能維持

臨床部門 第2位:中島 美咲さん,北海道医療大学歯学部 6年生
歯科疾患予防のための『ムギネ酸抽出物含有“金平糖”』の開発

その他および詳細は,追ってupdate予定です.

取り急ぎ,上位入賞者の情報のみを速報としてお知らせいたします.

【追記】
デンツプライ三金@Press東京医科歯科大学医療経済出版株式会社Ishiyaku Dent Webヒョーロン・ニュース,による記事等はそれぞれのリンク先をご参照ください.

カテゴリー: 未分類 タグ:

2015年・夏

2015 年 8 月 1 日 コメントはありません

第21回日本代表選抜大会は2015年8月21日(金)に日本歯科医師会館にて開催されます。一般見学は14時頃~16時頃に予定されております。事前登録が必要になりますので、参加する/参加できるかもしれない方は8月7日(金)までに代表・北詰までご連絡ください。

また、公式プログラム終了後は新会員を歓迎する懇親会がJDA会館近くにて開催されます。
都内近郊にいらっしゃるOB/OGの方々はぜひご参加ください!!

懇親会の詳細については、MLで配信された[SCADA:000704]をご覧いただくかCONTACT US から代表・北詰までお気軽にお尋ねください。

カテゴリー: 未分類 タグ:

第20回大会

2015 年 5 月 17 日 コメントはありません

第20回大会 2014年(平成26年)8月20日 参加校28校

タイトルおよび発表内容要旨 (上位入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝/日本代表 – 基礎部門 第1位:道家 碧,昭和大学歯学部,6年生

歯周病原細菌の産生するヌクレアーゼの解析

歯周病は、プラーク中の歯周病原細菌によって引き起こされる炎症性疾患である。歯周病原細菌は、宿主の免疫防御を回避して定着し、歯周病の病態の成立に関与している。
好中球から産生されるn e u t r o p h i l e x t r a c e l l u l a r t r a p s (N E T s)というD N Aやヒストンからなる網目状の細胞外構造体が病原微生物を捕捉し、排除を担うという自然免疫システムが報告された。歯周病原細菌が最初に直面する歯肉上皮においてもこのN E T sが形成されている。我々は、歯周病原細菌が細胞外に分泌するn u c l e a s eがN E T sを分解し、宿主の免疫防御を回避して、細菌の定着を可能にしているのではないか、という仮説を立てた。そこで、本研究では、まず歯周病原細菌のn u c l e a s e 産生能を調べ、n u c l e a s e 活性をもつP r e v o t e l l a i n t e r m e d i a のゲノムデータベースからn u c l e a s eホモログ(n u c D )を見出し、組換えタンパク質を用いて酵素学的性質を解析した。その結果、組換えタンパク質のn u c l e a s e 活性にはM g2 +とC a2 +が必須であり、一本鎖D N A、二本鎖直鎖D N A、二本鎖環状D N Aの分解活性が認められた。加えて、ヒト好中球から誘導したN E T sの分解活性を検討した。以上の結果から、P . i n t e r m e d i a はn u c l e a s e 活性によりN E T sの防御機構を回避する可能性が示唆され、他のn u c l e a s e 活性をもつ歯周病原性細菌も同様の機構を持つことが示唆された。

準優勝 – 臨床部門 第1位:神田 舞,日本大学歯学部,5年生

OCTを用いたバイオアクティブガラス含有歯磨剤がエナメル質の脱灰に及ぼす影響の検討

口腔内において、歯質は脱灰と再石灰化を繰り返しながら平衡状態を保っている。もし、この平衡状態が崩れて脱灰傾向が強くなると、結果的に齲蝕を形成する。近年、歯質の脱灰抑制効果を有するとされるバイオアクティブガラス含有歯磨剤が開発され、齲蝕抑制効果に期待がもたれている。しかし、この歯磨剤に関しては、市販から間もないこともあり効果の詳細については不明な点が多い。そこで、バイオアクティブガラス含有歯磨剤がエナメル質の脱灰抑制に及ぼす効果について、光干渉断層法 (O C T)を用いて検討した。
その結果、O C Tで得られたシグナルピーク強度ならびに1 / e2における波形の幅の変化は、コントロール群で実験期間の変化が認められなかったのに対して、バイオアクティブガラス含有歯磨剤塗布群では実験開始の7日間で大きく変化し、その後わずかに変化する傾向を示した。以上のように、本実験の結果から、O C T 装置を用いることによってバイオアクティブガラス含有歯磨剤の有する再石灰化および脱灰抑制効果を確認することができた。また、再石灰化能を有する口腔ケア用品を使用することによって、口腔環境の健康を維持および増進することが可能であることが示唆された。

基礎部門 第2位:本池 総太,広島大学歯学部,6年生

間葉系幹細胞集塊c l u m p s o f M S C / E C M c o m p l e xを用いた新規再生治療法開発

M e s e n c h y m a l s t e m c e l l s(M S C s)は多分化能を有し、組織再生治療法への応用が期待されている。私たちの研究室では、これまでにMSCs 自身が産生する細胞外基質(ECM)を利用して三次元的人工細胞集塊clumps of MSC/ECM complex(C-MSCs)を作成した。C-MSCsは細胞集塊の状態での培養が可能であり、人工の足場材料を用いることなく欠損組織へ移植できることが示された。
さらに、分化の方向性が移植部周囲の環境に影響されてしまうM S C sにとって、e x v i v oでその分化程度・細胞機能を制御することができれば、目的にあわせてより効率的な治療効果をもたらすことが可能になると考えた。本研究では、ex vivoにおいてC-MSCsの骨分化能、免疫調節能を制御し、新規細胞治療法としての有効性を評価することを目的とした。
1)骨分化誘導培地にてC-MSCsを培養し、Osteopontin mRNA 発現量、Alkaline phosphatase 活性、カルシウム含有量について分析を行ったところ、いずれも有意な上昇がみられた。
2)C-MSCsをIFN-γで刺激し、抗炎症性サイトカインIL-10および免疫抑制性酵素indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の産生量を測定したところIL-10の時間依存的増加とIDOの時間、濃度依存的増加が認められた。
以上の結果から、C-MSCsは治療用途にあわせてex vivoで骨分化能、免疫調節能を制御できる、より効率的な新規細胞治療法となりうることが示唆された。

臨床部門 第2位:三上 優,大阪歯科大学,5年生

睡眠中のアロマテラピーはS I g Aの分泌促進と唾液中細菌数の減少を促進する

睡眠時には唾液分泌量が減少するので、齲蝕や歯周病の発症頻度が上昇すると考えられている。一方、アロマテラピーは免疫強化作用や唾液分泌促進作用があることが知られていることから、本研究では睡眠時の口腔環境の改善を目的として、睡眠時に用いることができる唾液採取器の開発を試み、アロマ適用が睡眠時の唾液の抗菌作用にどのような成果があるかを検討した。アロマ非適用時では、唾液中のα-アミラーゼ活性は入眠時よりほとんど変化はなかったが、S I g A 濃度は徐々に増加し起床時に最大値に達した。一方、アロマ適用によって睡眠の深度に影響はなかったが、α-アミラーゼ活性およびS I g A濃度が顕著に増加し、総細菌数の増加は抑制された。以上の結果から睡眠中にアロマを適用すると、唾液による細菌の増殖抑制効果が上昇することが明らかとなり、歯科疾患の予防効果がある事が示唆された。また今回開発した唾液採取器は極めて有用であることがわかったので、今後はアロマの種類および上記以外の抗菌因子についても検討を重ね睡眠中の口腔環境の向上に寄与できると考える。

赤松 由佳子 大阪大学歯学部, 4年生

トリセルラータイトジャンクションを介した化膿レンサ球菌の上皮バリア突破機構

化膿レンサ球菌はヒトの咽頭炎や扁桃炎の起因菌として知られるが、時として、致死性の高い劇症型レンサ球菌感染症を惹起する。化膿レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症を発症させるためには、物理バリアである上皮細胞層を突破する必要がある。本研究では、化膿レンサ球菌がプラスミノーゲン存在下において、3つの細胞の角が接するトリセルラータイトジャンクションから上皮バリアを突破することに着目し、その分子メカニズムを解析した。トリセルラータイトジャンクションの主な構成分子であるトリセルリンとプラスミノーゲンの結合は、表面プラズモン共鳴解析で検討した。その結果、プラスミノーゲンはトリセルリンの細胞外ドメインと結合することを確認した。また、化膿レンサ球菌は表層タンパクであるエノラーゼとプラスミノーゲンの相互作用を介してトリセルリンに結合することをE L I S A 法で証明した。さらに、エノラーゼ変異体はトリセルラータイトジャンクションへの局在が観察されなかったことから、化膿レンサ球菌はエノラーゼとプラスミノーゲンの結合を介してトリセルラータイトジャンクションに局在し、この領域から上皮バリアを突破することが示唆された。

東根 まりい, 岩手医科大学歯学部, 3年生

上顎洞底挙上術の解剖学的リスクファクター -動脈-

上顎臼歯部で骨吸収が著しいケースに対するインプラント埋入手術に必要な骨の厚みを増成する上顎洞底挙上術ではシュナイダー膜を洞底から剥離、挙上するが、上顎洞内に分布する血管の詳細な報告はほとんどない。上顎洞粘膜に分布する動脈は4 種類あり、全て顎動脈の枝である。上顎洞内側壁から蝶口蓋動脈の枝、下行口蓋動脈の枝、後方から後上歯槽動脈、上壁と前壁から眼窩下動脈の枝であった。解剖実習で使用したご遺体1 0 体2 0 側の上顎洞外側壁で血管分布を検索した。後上歯槽動脈は歯槽孔より上顎洞内に入り、前方に向かって走行し、眼窩下孔付近の孔から侵入した眼窩下動脈の枝または前上歯槽動脈の枝と吻合していた。上顎洞底からの高さは平均6 . 2 ㎜( 2-9 ㎜)であった。この上顎洞外側壁を前後方向に走行する動脈は現時点では和名はつけられておらず、古い文献にM a l a r a r t e r yが記載されていたが、現在の教科書には記載がない。一方、上顎洞底挙上術が一般化され、それに伴い、1 5 年前にA l v e o l a r a n t r a l a r t e r yと命名されたが和名はない。私は歴史的にM a l a r a r t e r y という名称の復活を推奨したい。

内野 加穂, 長崎大学歯学部, 5年生

リクイリチゲニンによる破骨細胞形成抑制効果

【問題点】現在使用されている代表的な骨代謝治療薬は、ビスフォスフォネート製剤やエストロゲン製剤などであるが、これらは副作用が強く、副作用の少ない新しい予防薬・治療薬が求められている。
【仮説】我々は副作用が少なく強力な破骨細胞抑制活性を持つ天然化合物に着目しており、以前、抗炎症・抗酸化作用を持つ生薬、黄連に含まれるベルベリンが破骨細胞形成を抑制することを報告した。本研究では同様に抗炎症・抗酸化作用を持つ甘草に含まれるリクイリチゲニンに破骨細胞形成抑制作用があるのではないかと考え、実験を行った。
【方法】マウスより採取した骨髄細胞をM – C S FとR A N K Lで刺激する系を用いた。T R A P 染色により多核破骨細胞の形成を、細胞増殖試験により細胞増殖能を評価し、ウエスタンブロッテング法を用いて破骨細胞のマーカー蛋白の発現とR A N K L 刺激後のシグナルの活性化を比較した。
【結果】リクイリチゲニンは、主にR A N K L 刺激後のIκBαのリン酸化を阻害することでマウス骨髄細胞の破骨細胞形成を濃度依存的に抑制したが、破骨細胞に対する細胞毒性は認められなかった。
【結論】リクイリチゲニンは細胞毒性が極めて低く、比較的強い破骨細胞抑制活性を持つことが示唆される。

恵谷 陽介, 神奈川歯科大学, 4年生

新規生物学的歯内療法の開発に関する基礎研究

【目的】歯内療法の理想的治癒形態は根尖部の硬組織被蓋である。本研究は、M i n e r a l t r i o x i d ea g g r e g a t e(M T A)セメントを用いて、根尖歯周組織に存在する細胞の硬組織誘導を制御することによって生物学的に治癒可能な新規歯内療法を開発することを目的とした。
【材料と方法】MTAセメントの規格試料片を作製後、ヒトセメント芽細胞(HCEM)、ヒト歯髄細胞(HPulp)およびヒト歯根膜細胞(H P L C)と2 4~9 6 時間の共培養後に細胞を回収した。回収後の各細胞は、定量R T―P C R 法を用いてB o n e S i a l o p r o t e i n (B S P), O s t e o c a l c i n (O C N), A l k a l i n e p h o s p h a t a s e( ALP)の発現について解析を行った。
【結果】すべての供試細胞は、2 4時間後にB S P , O C N 発現が最大になることが示され, 石灰化組織(骨またはセメント質)の形成能力が確認された。また、A L P 発現上昇によりリン酸カルシウムの析出による硬組織形成誘導が促進される可能性が示唆された。
【考察】M T Aセメントは、根尖部歯周組織に存在するH C E M、H P u l p、H P L Cの分化誘導を促進し根尖孔封鎖時の硬組織誘導に関与する事が示された。

大山 剛平, 岡山大学歯学部, 4年生

舌苔スコアと口腔内アセトアルデヒド濃度の関係

アセトアルデヒドの発がん性が指摘されている。一方、口腔常在菌がアルコールやグルコースを代謝しアセトアルデヒドを産生すること、また、1日のブラッシング回数が多い人ほど上部消化管がん発症のオッズ比が低くなることが報告されている。しかし、実際のヒトの口腔内アセトアルデヒド濃度と口腔衛生状態との関係については明らかになっていない。
本研究では、口腔衛生状態が不良であると口腔内アセトアルデヒド濃度が高い、という仮説を設定し、口腔内アセトアルデヒド濃度と舌背表面の細菌数、舌苔の付着範囲、口腔内状態、生活習慣、アルコール代謝能力との関係を調べた。
その結果、舌苔の付着範囲が大きい者ほど口腔内アセトアルデヒド濃度が有意に高かった。また、1日のブラッシング回数が2 回以上の者のほうが、1 回の者と比較して口腔内アセトアルデヒド濃度が有意に低かった。一方、歯垢の付着状態など、その他の指標との関連は認められなかった。
以上より、口腔内アセトアルデヒド産生の主な原因は舌苔中の細菌であり、アセトアルデヒドの産生を減少させるためには、ブラッシングに加えて舌苔を除去することが重要であることが示唆された。

木村 太一, 松本歯科大学, 4年生

江戸時代の出土歯と現代日本人の比較解析

4000本を超える人間の歯が寺院の骨堂跡と思われる場所から出土した。これらの歯は同場所から出土した貨幣などより江戸中期の歯と推定される。
江戸時代の食生活は現代と異なり居住地域や階層により相違があった。主に米や粟、稗などの穀物が中心であったが、その反面、現代の食生活は多種の食品によって成り立っている。
我々は、食物の物理的性質の違いが現代と江戸時代の歯の構造や形態に反映されているのではないか、という仮説を立てた。また、江戸時代の平均寿命は現代より短かったため、歯が物理的刺激を受け、第三象牙質が形成される機会が少なかったと思われる。反面、江戸時代のヒトの口腔内は現代人に比べて衛生状態が不良であると想像され、第三象牙質の成因となる齲蝕の罹患率が増加しうる環境となっていたと推察される。これらの仮説をもとに江戸時代の歯と現代の歯の歯髄腔の形態比較や体積比をもとめ、比較解析を行った。
結果、江戸時代と現代人の違いは歯の内部構造に大きな影響を及ぼしていないという結論に至ったが、この結果からはサンプル数が少なく断定的なことをいうことはできず、今後はサンプル数を増やし確実なデータとする必要がある。

倉澤 馨, 東京歯科大学, 4年生

象牙芽細胞における細胞外H+ 感知機構: Gタンパク質共役型H+ 受容体は細胞外C a2 + 濃度依存性を示す

象牙芽細胞は様々な侵害刺激を受容し、第三象牙質・反応性象牙質を形成する。象牙質齲蝕により象牙細管が口腔へ露出すると、齲蝕原因菌が象牙細管内に侵入し、産生した酸が象牙質を脱灰する。本研究は、象牙芽細胞の細胞外H+ 受容タンパク質に着目し、象牙芽細胞機能を駆動する細胞内Ca2 + シグナル伝達の解明を目的とした。実験にはマウス由来の象牙芽細胞系細胞を用いた。細胞外刺激に対する細胞内Ca2 + 濃度 ([Ca2 + ]i) 変化は、fura-2を用いて記録した。細胞外Ca2 + 存在下と非存在下でのH+ 刺激は、[Ca2 + ]iを一過性に増加し、H+ 依存性を示した。pH 7 .0 – 6 .0の範囲における [Ca2 + ]iの変化は、Ca2 +の存在下・非存在下で変化は見られなかったが、pH 5 .5以下の刺激による[Ca2 + ]iの変化は、Ca2 + 非存在下で有意に増加した。Ca2 + 非存在下でのcyclopiazonic acidは、pH 5 .5による[Ca2 + ]iの増加を有意に抑制した。
同様にCa2 + 非存在下でのdantroleneは、pH 5 .5による[Ca2 + ]iの増加を有意に抑制した。牙質石灰化前線における細胞外Ca2 + 濃度の増減が、象牙芽細胞のH+ 刺激による[Ca2 + ]iの増加に対するフィードバック機構となることを示している。象牙質表面へのH+ 刺激は、象牙芽細胞のH+ 受容体で感知され、Ca2 + 濃度依存的なCa2 + 輸送が生じる結果、第三象牙質形成が促進することが示唆される。

後藤 達哉, 日本歯科大学生命歯学部, 4年生

歯原性腫瘍の3次元組織構造解析

歯原性腫瘍は胎生期の歯胚組織に由来する。病理組織学的な特徴として成書の多くが歯胚組織との類似性に触れているが、各種歯原性病変がどの程度歯胚組織の形質を継承しているかは不明である。我々は、2次元組織像では捉えにくい腫瘍構造や進展様式を理解するため、上皮成分を検出するサイトケラチン免疫染色の連続切片画像に基づいてエナメル上皮腫、エナメル上皮線維腫の立体模型を作製し、直視観察した。
濾胞型エナメル上皮腫では、大小不同の腫瘍胞巣が間質組織に向かって伸長するのに対し、叢状型エナメル上皮腫では、網目状の腫瘍胞巣が間質を大小の空間に区画していた。エナメル上皮線維腫では、胞巣基部から複数の突起状胞巣が規則的に配列・出芽していた。歯胚立体模型との比較により、エナメル上皮線維腫の組織環境は歯胚発生の初期段階に相当することが確かめられた。対照観察した舌扁平上皮癌( 悪性腫瘍)では、間質空間に遊離・孤立した癌細胞が散在しており、組織空間内ですべて連結している歯原性腫瘍胞巣とは異なることも確認できた。本解析により、歯原性腫瘍の組織環境・構造を決定しうる要因は3次元的な胞巣形状の解析から推定できることが示された。

佐脇 有美, 東北大学歯学部, 6年生

酸素供給型培養デバイスによる三次元培養細胞の分化促進

近年、多孔性三次元担体に間葉系幹細胞を播種し、骨芽細胞に分化させて体内へ移植する組織工学的な骨再生治療法が開発され、自家骨移植に変わり得る新しい治療法として期待されている。しかし、移植前培養において担体材料に細胞を高密度で増殖させるため通常の培養法では酸素欠乏状態となり、移植用細胞の生存率や活性低下を引き起こす。また、骨芽細胞への分化に時間を要し、移植までに時間がかかることが問題点である。そこで本研究では、移植前培養に用いるための酸素供給型培養デバイスを開発し、間葉系幹細胞株の生存率及び骨芽細胞分化に与える影響について検討を行った。その結果、この酸素供給型デバイスを用いることで培地内酸素濃度を従来法よりも高く維持でき、細胞生存率を向上させることができることがわかった。さらに従来法よりも骨芽細胞分化を有意に促進することが示された。以上より、開発したデバイスは、間葉系幹細胞を生体外で迅速に分化させることができ、活性が高く、生存率の高い移植に適した細胞を調製できることが示唆された。本研究は、骨再生治療における治癒期間の短縮、コスト低減などを可能にすると期待できる。

鹿間 優子, 新潟大学歯学部, 3年生

K l f 4を含む巨大蛋白質複合体の精製

i P S 細胞の作製には、これまで4つの初期化遺伝子(O c t 3 / 4 , K l f 4 , S o x 2 , c – M y c)を導入し、細胞内で発現させる事が必要であった。細胞への遺伝子導入については、ウイルスベクター利用以外の比較的安全な手法が開発されつつあるが、癌化などの危険性を回避する事が難しいのが現状である。そこで、初期化に必要な遺伝子産物すなわちタンパク質を細胞の外から導入する手法を利用したp r o t e i n i P S 細胞(p i S P 細胞)が注目されている。H E K 2 9 3 細胞を用い、ビオチン化された初期化関連タンパク質(K l f 4 及びK l f 4 + S o x 2)の発現、および抽出を行った。s a m p l eを、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーにより分離・精製した。その後S D S – P A G EやN a t i v e – P A G Eさらにw e s t e r n b l o t、C B B 染色を行い複合体の構成するタンパク質について調べた。その結果、K l f 4が2種類の複合体を作ることが判明した。小さい複合体は、リプログラミングにおいて重要であると考えられる。またS o x 2の存在により、この複合体が消失することがリプログラミング効率を下げると考えられた。

成昌ファン, 鹿児島大学歯学部, 4年生

超音波により幹細胞の未分化能を維持させる

間葉系幹細胞(M e s e n c h y m a l S t e m C e l l s:M S C)は、自己再生能力をもつ多能性細胞である。M S Cは培養条件を変えることで、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞へと分化することが知られている。骨欠損に対して、M S Cを骨分化させた細胞を用いて骨再生を効率的に誘導することができれば、歯科臨床における非常に有用な治療法となる可能性がある。M S Cの細胞培養は比較的簡単であり、複数回の継代により大量の細胞数の確保も可能であるが、継代を重ねると、その可塑性や形態も徐々に失われる。しかし、臨床応用のために必要となるM S Cを未分化状態で維持できる技術の完成度はまだ不十分である。そこで、低出力超音波(L o w – i n t e n s i t y P u l s e d U l t r a s o u n d : L I P U S)による物理的刺激でM S Cの未分化を維持できないかという仮説を立てた。M S CにL I P U Sを照射したところ、M S Cを未分化な状態に保つ重要な遺伝子であるO c t 4の発現を上昇した。一方、O c t 4と同様にM S Cの未分化性の保持に関わるN a n o gとS o x 2の発現には影響をしなかった。L I P U Sを照射しながらM S Cの長期培養を行うと、O c t 4の高発現を保ちながら、M S Cの未分化性を保持できることが示唆された。L I P U SによるメカニカルストレスはM S Cの未分化性を調節できる有用なツールである可能性がある。

高橋 一寿, 鶴見大学歯学部, 3年生

唾液中の新規カリクレイン4の分離精製およびコラーゲンに対する分解能

カリクレイン4(K L K 4)は成熟期エナメル質形成過程において重要なプロテアーゼであるが、マウス顎下唾液腺においても遺伝子発現が確認されている。本研究ではヒト唾液中におけるK L K 4の分離精製および機能解析を行うことを目的とした。ヒト安静時唾液を上清と沈殿画分に分離した後、カゼインおよびゲラチンを基質としたザイモグラフィーをEDTA 存在下で行って、MMP 以外のプロテアーゼ(non-MMP)を検出した。さらにK L K 4 抗体を用いたウェスタンブロットを行ってK L K 4の存在を確認した。次いで唾液沈殿画分をヘパリンクロマトグラフィーおよび逆相- 高速液体クロマトグラフィー(R P – H P L C)にて分離し、K L K 4を精製した。このK L K 4を用いてⅠ型、Ⅲ型、Ⅴ型コラーゲンおよびヒト象牙質の不溶性コラーゲンに対する分解能を調べた。唾液K L K 4はゲラチンザイモグラフィーおよびウェスタンブロットにより唾液沈殿画分に含まれる分子量約2 0 k D aのバンドとして検出され、ヘパリンクロマトグラフィーおよびR P -H P L Cによりこのプロテアーゼを分離精製することができた。K L K 4を用いたコラーゲンに対する分解能実験では、いずれのコラーゲンも分解されることが判明した。本研究によりヒト唾液中のK L K 4はコラーゲン分解能を有していることが示された。

武末 康寛, 九州大学歯学部, 4年生

マウス胎生期下顎隆起器官培養法を用いた下顎形態形成の検討

【目的】下顎骨の成長発育は顎顔面骨格へ多大な影響を与えるため、その制御に関する分子メカニズムの解明が望まれる。本研究では、胎生期マウス下顎隆起の器官培養法を用いて、下顎形態形成をmi c r oRNA 2 0 0 a( miR- 2 0 0 a)の働きに着目し検討した。
【方法】胎齢1 0日I C Rマウス胎仔より下顎隆起を摘出し、m i R – 2 0 0 a m i m i cと緑色蛍光標識したc o n t r o l s i R N Aの遺伝子導入をエレクトロポレーション法により行い、器官培養を行った。蛍光顕微鏡による観察、リアルタイムP C R 法による発現量の検討、アルシアンブルー染色による下顎頭軟骨およびメッケル軟骨形成の観察を行った。
【結果】miR-200 a の遺伝子発現は経時的に上昇した。Control siRNAを導入した下顎隆起では導入部位における緑色蛍光が観察された。また、miR-200 a mimicを導入した下顎隆起では、miR-200 aの発現量が有意に上昇した。7日間器官培養をした下顎隆起では正常な下顎の発育が観察され、アルシアンブルー染色によりメッケル軟骨の形成が観察された。下顎頭軟骨の形成が認められない下顎隆起が観察された。
【結論】胎生期マウス下顎隆起器官培養に対するマイクロインジェクションとエレクトロポレーション法を用いた遺伝子導入を応用し、下顎形態形成の検討を行うことができる可能性が示唆された。

中村 知寿, 北海道医療大学歯学部, 4年生

ビールはS. mutansの増殖とバイオフィルムの形成を抑制するか?

近年、ビールの健康増進効果が明らかになりつつある。レンサ球菌に対する抗菌作用があるホップと殺菌作用のあるアルコールを含んでいるため、ビールにはS t r e p t o c o c c u s m u t a n sS . m u t a n s )の増殖と口腔バイオフィルム形成を直接阻害する効果もあると考えられる。本研究では、ピルスナー(PLS)、インディア・ペールエール(I P A)、ヴァイツェン(W e i s)の3 種類のビールとノンアルコールビール(N a b)についてS . m u t a n s の増殖とバイオフィルム形成を抑制する効果があるかについて検証した。
S . m u t a n s の2 4、4 8 時間培養では、コントロールと比較しP L S、I P A、W e i s、N a bに増殖抑制効果が認められた。1、2、5 分の殺菌処理では、コントロールと比較しP L S、I P A、W e i s、N a bに殺菌効果が認められた。共焦点レーザー顕微鏡による観察で、コントロールはバイオフィルムの形成が認められた。一方、I P Aはわずかなバイオフィルムの形成が観察されたが、P L S、W e i s、N a bは観察されなかった。gtf-Bの発現は、コントロールよりもIPAで有意な上昇を、Nabで有意な低下を認めた。gtf-Cの発現は、コントロールよりもP L S、W e i s、N a bで有意な低下を認めた。これらの結果から、ビールはS . m u t a n sの発育を阻害することが示唆された。バイオフィルム形成に対してのビールの効果は、ビールの種類に依存すると考えられる。ノンアルコールビールは口腔保健に有益な可能性がある。

野田 千織, 徳島大学歯学部, 5年生

運動による解糖系および乳酸輸送担体M C Tの遺伝子発現の変化
– S P O R T Sラットをモデルに-

糖尿病は歯周病とも関連する疾患で、その予防・治療法の一つに運動がある。そこで、自発的な運動量が増加したラットの株(S P O R T S)を用い、ライフスタイルにおける運動の意義について検討することにした。運動させたS P O R T Sラットとコントロールラットの遺伝子発現の違いを比較すれば、運動療法の標的遺伝子や運動の効果を遺伝子レベルで解析する手がかりが得られる可能性がある。実験として、それぞれの骨格筋から抽出したR N Aを用いて、マイクロアレイ解析を行った。その結果、解糖系の遺伝子群に顕著な発現上昇が認められた。一方、T C A 回路の遺伝子発現に変動はなかった。このことは解糖能の亢進によるA T Pの盛んな合成を示唆する。解糖能の亢進は、乳酸蓄積による細胞障害を招く可能性があるが、細胞外から細胞内への乳酸輸送担体M C T1の発現は低下し、細胞内から細胞外への乳酸輸送担体M C T 4の発現は上昇していた。これは、運動により細胞内への乳酸蓄積を防ぐシステムが増強されていることを示唆している。以上から、S P O R T Sラットでは解糖系関連遺伝子の発現を変化させることで、自発的・持続的な運動に対応していると考えられた。

長谷川 淳子, 愛知学院大学歯学部, 5年生

Lactobacillus 種と口腔内細菌の共凝集に関する一研究

歯周病は、歯周組織にバイオフィルムを形成して定着した細菌により引き起こされる慢性細菌感染症である。P o r p h y r o m o n a s g i n g i v a l i s , F u s o b a c t e r i u m n u c l e a t u m , および T a n n e r e l l af o r s y t h i a などが歯周病との関連が指摘されている。それらを制御する事で歯周病を抑制できると考えられるが、有効で持続可能な方法はない。一方、近年、乳酸菌がP . g i n g i v a l i s などを抑制させるということが報告されている。そこで乳酸菌を口腔内に定着させる事で歯周病関連細菌を抑制できるという事が示唆される。そこでL a c t o b a c i l l u s 種の口腔内定着の可能性を検討する目的で、種々の口腔細菌との共凝集性について検討した。その結果、 L a c t o b a c i l l u s 種は上記3菌種と強く凝集した。また、その凝集は二価のイオンの存在に依存し、 L a c t o b a c i l l u s 表面の糖鎖分子と歯周病関連細菌表面のタンパクが関与していると示唆された。以上より、 Lactobacillus 種の口腔内定着の可能性は示された。

朴 真実, 九州歯科大学, 6年生

飲酒による体温低下はプロスタグランジン系が関与する

酒を飲むと、体温の変化を感じる。飲み始めは温かく、次第に寒くなる。温かく感じるのは、エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドが血管を拡張させ皮膚血流が増加するのが原因だと考えられている。一方、エタノール摂取により皮膚血流は増加するが、皮膚温は増加しないこと、しかも、深部体温はむしろ低下することが示されており、温度感覚と実際の生理現象との間の乖離が起こっているようにみえる。このような温度に対する錯覚を起こすのは、体温調節中枢のセットポイント( 設定温度)が変わったことによると考えられる。セットポイントの上昇にはプロスタグランジンE2、低下にはプロスタグランジンD2( PGD2)が関与する。しかし、飲酒後の体温低下にP G D 2 が関与するメカニズムについてほとんど検討されていない。我々は、飲酒後の体温低下のメカニズムを調べるため、ラットを用いて実験を行った。実験結果より、エタノールによる体温低下は、アセトアルデヒドの体内蓄積量に比例して起こることが示唆された。アセトアルデヒドはP G D 2 産生を促し、脳の体温調節中枢に存在するプロスタグランジン受容体に作用し、セットポイントを低下させていることが考えられた。

秦 史子, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 2年生

唾液とストレスの関係

【問題点】現代はストレス社会と呼ばれている。ストレスが人体に及ぼす影響を歯科学生として身近な唾液から検証した。
【仮説】種々の唾液マーカーの検索がストレスなど全身状態に影響を及ぼすかの評価を可能にする。
【方法】1.温湿度検査紙による唾液分泌量の測定 2.白金電極法による酸化還元電位の測定 3.誘電泳動インピーダンス測定による菌数の測定 4.酵素分析法による唾液アミラーゼ活性の測定 5. パルスオキシメーターによる脈拍とS p O 2の測定 6.スマートフォンのアプリによるストレス度の測定
【結果】ストレス度合いと脈拍、唾液の分泌量と唾液酸化還元電位、唾液酸化還元電位とストレス度合い、唾液分泌量と唾液ストレス度合いには相関関係があった。
【結論】唾液の酸化度が高いと、ストレス度合いが高いことが導かれた。すなわち、唾液はストレスマーカーとして用いることが可能であるかもしれない。

安田 梨沙, 福岡歯科大学, 5年生

歯科用コーンビームC Tによるb i f i d m a n d i b u l a r c a n a l sの検出能

下顎管内を走行する下歯槽神経は下顎智歯部で臼後枝や臼枝を分枝する。これらの分岐した枝が走行する管がエックス線写真においても描出され、B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lと呼ばれている。この分岐導管を検出することは、智歯の抜去やインプラント埋入を安全に行う上で重要な術前情報である。本研究の目的は、歯科用コーンビームC TのB i f i d M a n d i b u l a r C a n a lの検出能と下顎智歯の埋伏状態との関連を評価することである。
対象は下顎智歯の抜去の術前検査としてパノラマエックス線撮影および歯科用コーンビームCTを行った1 7 0 例( 2 2 4 側)であった。
B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lの形態分類をタイプ1~4に分類し、下顎智歯の埋伏状態を1)水平 2)垂直 3)近心傾斜 4)遠心傾斜 5)埋伏せずの5 分類し、B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lのタイプ別の検出と下顎智歯の埋伏状態との関連を検討した。
B i f i d M a n d i b u l a r C a n a lは2 2 4 側中1 0 8 側において検出された。また、下顎智歯の埋伏状態がB i f i d M a n d i b u l a r C a n a lの検出に影響を与えている可能性が示唆された。

安永 賢史, 北海道大学歯学部, 6年生

腫瘍血管内皮マーカーB i g l y c a nの発現制御システムに関する検討

血管新生は腫瘍の進展や転移に重要である。腫瘍血管は正常血管と比べて走行が乱雑であり、漏出性が高いことが報告されていた。これまで我々は、腫瘍血管内皮細胞 (T u m o r E n d o t h e l i a l C e l l s : T E C) が正常血管内皮細胞 (N o r m a l E n d o t h e l i a l C e l l s : N E C) と比較し血管新生能が高いなど様々な異常性を示すことを報告してきた。D N A m i c r o a r r a y 解析によりT E Cにおいて発現が亢進していたB i g l y c a nに着目し、B i g l y c a nがT E Cの高い遊走能、管腔形成能に関与していることを最近見出した。腫瘍微小環境ではT E Cは低酸素状態に陥っており、また腫瘍細胞から様々な増殖因子などの様々な因子の影響を受けている。本研究では、腫瘍微小環境においてT E CがB i g l y c a nを発現亢進するメカニズムと、B i g l y c a nの下流シグナルについて検討した。その結果、腫瘍細胞由来因子存在下および低酸素条件においてB i g l y c a nの発現が亢進した。また、B i g l y c a n存在下で下流シグナルが活性化した。腫瘍微小環境において血管内皮細胞はB i g l y c a nの発現を亢進し、高い血管新生能を獲得していることが示唆された。

山本 吉則, 朝日大学歯学部, 3年生

硬骨魚類三種における摂食器官のメカニズム

硬骨魚類の頭蓋は、他の脊椎動物に比べてより多くの骨と関節で構成され、複雑な運動を行う。硬骨魚類における顎筋の作用や頭蓋に存在する関節の可動性は、利用する食物と密接な関わりをもつものと考えられる。そこで本研究では、藻類食のアユ、他の魚類を食べるタチウオ、甲殻類・ゴカイ・クラゲなどを食べるウマヅラハギの頭部を解剖し、摂食機構と食性との関連性について考察を行った。タチウオは上顎と下顎、鰓蓋部と舌弓部の間に関節が存在しており、下顎の大きな下制を可能していることが明らかになった。アユでは下顎骨と舌弓部の間にのみ関節が存在し、上顎の可動性は認められなかった。ウマヅラハギでは、上顎・下顎が頭部の先端に位置し、それぞれ独立した運動が可能であった。また閉口筋である下顎内転筋が3部位に分化し、比較した三種の中では最も複雑な顎運動を示していた。今回の研究から、硬骨魚類は上顎・下顎の可動性や運動パターンを変化させることによって柔軟に食物に適応していることが明らかになった。また、我々の側頭筋と相同な閉口筋である下顎内転筋は、作用の異なるいくつかの部位に分化して食物処理能力を高めている場合があると考えられた。

尤 雅田, 明海大学歯学部, 3年生

歯の移動に伴う疼痛に対する漢方薬の効果

歯の移動に伴う痛みを抑えるとともに骨吸収を制御しない鎮痛薬として、歴史的に歯科で使われC O X阻害以外の作用機序を持つと考えられる立効散と半夏瀉心湯に注目し、既存の仮性疼痛反応モデルと新規に作成した歯の移動モデルを使って両者の鎮痛効果および有効濃度を既存の鎮痛薬と比較した。
マウスに立効散、半夏瀉心湯、アスピリン、アセトアミノフェンをそれぞれ経口投与し、酢酸腹腔内投与で発現する体躯の伸展反応を比較した。歯の移動の動物モデルとして、ラットの上顎右側第一臼歯に矯正力を負荷した。両側上顎第一大臼歯に電気刺激を与え、開口反射を誘発する強度( 閾値)を左右で比較した。薬物処置群には、矯正力負荷直後から立効散、半夏瀉心湯、アスピリンをそれぞれ反復投与し1日後に閾値の測定を行った。
立効散はいずれのモデルでも鎮痛効果を発現したが、半夏瀉心湯は歯の移動に伴う疼痛を緩和できず、立効散の有効性が示唆された。アスピリンは歯の移動モデルで右側閾値を有意に上昇させた事から、片側への矯正力負荷が反対側の感覚変調を起こしている可能性が示唆された。また、歯の移動に伴う疼痛への鎮痛薬効果の判定に本モデルが有効であることも示された。

米長 秀祐, 日本大学松戸歯学部, 4年生

抗体産生の日内変動に高脂肪食が与える影響

近年、食の欧米化に伴って日常的な高脂肪食化が進んでいる。また、肥満者は有病率が高いことが知られており、肥満者に多い癌や感染症の発病には、免疫機能の低調が関わると考えられている。本研究では食習慣に着目し、マウスをN o r m a l d i e t(N D)群とH i g h – F a t d i e t(H F D)群の2群に分けて高脂肪食が生体に与える影響を3週間後に調査した。その結果、H F D 群において血漿中I g Gには産生量の低下が見られた。血漿中I g Aでは産生リズムの変化が見られ、糞便中S – I g Aでは産生量の増加が見られた。一方で体重に大きな差は認められず、抗体産生量ないし産生リズムの変化は高脂肪食によるものであるといえる。これにより、高脂肪食の摂取が生体の恒常性に影響を与えていることが分かった。また、ストレスホルモンであるc r t i c o s t e r o n eのH F D 群での増加が見られ、またc o r t i c o s t e r o n eの日内変動と血漿中の抗体量には相関傾向が見られた。この事から、抗体産生がストレスによっても変化しうるといえる。以上の事から、高脂肪食の習慣的摂取が生体の恒常性に影響を与え、全身および粘膜面での免疫応答に変調をきたしたと考えられる。

渡辺 数基, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

メラトニンによるキンギョの血漿グルコース濃度低下作用

メラトニンは松果体ホルモンとして知られており、主な働きとして概日リズムの同調作用が挙げられる。また、その他にも免疫活性化作用や抗酸化作用を持つことや、骨芽細胞、破骨細胞に作用して骨形成を促進、骨吸収を抑制することなどが知られている。近年では、哺乳類を用いてメラトニンの糖代謝への関与が示唆されているが、その作用機序に関しては明らかでない部分が多い。そこで本研究では、雄キンギョ(C a r a s s i u s a u r a t u s )を用いて、血漿グルコース濃度及びブロックマン小体( 魚類におけるインスリン産生器官)におけるインスリンm R N Aの発現に対するメラトニンの影響を調べた。その結果、メラトニンの投与により糖負荷環境下における血漿グルコース濃度は対照群と比較し有意に低下したが、一方でブロックマン小体でのインスリンm R N Aの発現には有意な変化は見られなかった。このことから、メラトニンにはインスリンを介さない経路で血漿グルコース濃度を低下させる作用があると考えられた。

カテゴリー: 未分類 タグ: