2008年度SCADA-Japan総会
パシフィコ横浜でのポスター発表の後,そごう横浜店内にあるミーティングルームに移動して,2008年度総会を行いました。
総会後は,横浜駅近くにて懇親会を行いました。たまにしか集まれないメンバー同士ですが,和気藹々としたとても楽しい時間でした。
パシフィコ横浜でのポスター発表の後,そごう横浜店内にあるミーティングルームに移動して,2008年度総会を行いました。
総会後は,横浜駅近くにて懇親会を行いました。たまにしか集まれないメンバー同士ですが,和気藹々としたとても楽しい時間でした。
パシフィコ横浜で行われた 第21回日本歯科医学会総会 にて,『SCADA-Japan 現在・過去・未来-創立10周年を迎えて-』と題したポスター発表を行いました。
第14回大会 2008年(平成20年)8月20日 参加校 18校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時
ブラッシングはプラークを除去し、齲蝕を予防するのみではなく、歯肉に対するマッサージ効果もあり、結果として、歯周疾患を予防し、口臭をも防ぐ。現在、学校歯科健診ではGO、COという概念を導入している。これは子ども達が口腔への関心を深めることによって食習慣ならびに生活習慣を改善して「生きる力」を育むことの動機づけとしている。
日常のブラッシングで、プラークが除去されているかどうかを判断することは難しい。プラークの除去効果を自分自身で簡単に確認でき、そのデータを保管し、経時的に比較することができれば、効果的なブラッシング方法をマスターするだけでなく、歯・歯肉の状態を客観的に評価できると考えられる。
そこで演者はブラッシングの効果を自分自身で、簡単に評価することを目的として、ほとんどの国民が持っているカメラ付き携帯電話を利用することを考え、実験を行った。
その結果、プラークの除去状態を経時的に比較していく事は、明らかにプラークの除去効果を上げることが分かった。
歯科治療では観血的な処置が多く、感染制御は重大な問題の1つである。診療において歯科医師は滅菌グローブを装着し、滅菌された器具を使用しているが、我々は歯科治療において頻繁に使用する水が滅菌されていないことに気が付き、また実際にデンタルユニットの給水系が細菌に汚染されている事実を知った。そこで我々は複雑なユニットの給水系を一般歯科医院で簡便に清掃することができる”天然精油によるデンタルユニット洗浄システムの開発”を試みた。
我々は農薬散布用手動式ポンプの排水パイプ系を改修し、システムAを独自に開発した。更に、システムAの複雑な接続や操作性を改善するために、ユニットへの空気圧の供給系を利用する全自動式のシステムBも開発した。洗浄液は天然精油であるTea Tree Oil (TTO) をTween20で可溶化し、0.7%TTOに調整した。両システムを用いてユニットの洗浄を行った結果、ユニットの給水系内の細菌生存率は洗浄前と比較すると激減していた。よって我々の開発した洗浄システムは細菌によって汚染された給水系を容易に清掃することができ、水からの感染回避と歯科治療の質の向上に極めて役立つと考えられる。
誤嚥性肺炎は、高齢者における死因の上位を占めており、その罹患によって高齢者のActivity of Daily Living (ADL)の低下を引き起こすと考えられる。専門的口腔ケアは、唾液中の総生菌数を減らし、肺炎様の特発性の発熱頻度も減らし、肺炎の予防に有効であると報告されている。
しかし、実際の介護の現場で口腔ケアにあたる介護者は、多くの場合が歯科の専門家ではなく、そのman powerにも限りがあるため、効率的な口腔ケアを提供していくためにはシンプルで科学的、かつ口腔内細菌の量的な評価法が必要不可欠である。
本研究では、54人の高齢者と43名のボランティアから得た唾液で実験を行った。唾液中の総菌数とレサズリン還元反応は相関を示し、還元反応によるレサズリン色素の減少と唾液中の総生菌数は相関を示した。これらの結果から、レサズリン色素の減少による比色定量による評価法を開発した。こうした評価基準に基づいた効率的な口腔ケアの応用が、高齢者における誤嚥性肺炎の予防、ADLの向上に貢献することが望まれる。
酸蝕症は非細菌性の酸侵襲で生じる歯面の溶解で、齲蝕の減少にともない最近注目されている。本研究では、酸性溶液へのミネラルまたはフッ化物添加の効果を、歯質の蛍光減少率により検討した。材料には牛歯エナメル質(n=6/群)を用い、15分間の0.1%クエン酸(pH 2.74)処理を酸蝕症モデルとした。実験1:試料をCa、フッ化物または緩衝剤の有無別に0.1%クエン酸または市販飲料に37℃で15分間浸漬した。実験2:試料をヒト唾液に37℃で2時間浸漬してペリクルを形成、Ca添加の有無別に0.1%クエン酸を37℃で15分間作用させた。実験3:試料を37℃で15分間0.1%クエン酸により処理、ついで唾液に37℃で24時間浸漬した。最終的に、全試料について健全部に対する相対的な蛍光減少率(ΔF、%)を測定した。実験1では、市販飲料群を除くすべての実験群で対照群よりも有意に低いΔF値を認め(p<0.05)、酸蝕の抑制を示した。実験2および3では、処理群の間でΔF値に有意差は認められなかった。以上より、Caおよびフッ化物は酸性飲料と同時に作用することによりエナメル質の酸蝕症を抑制することが示唆された。
治療技術の急速な進歩と高齢化社会の到来があいまって、歯科インプラント治療は急速に普及してきた。インプラント治療では、植立したインプラントにアバットメントおよび最終補綴物を被せる時期を客観的に評価できることが、治療経過の正確な把握と予後の向上に重要である。非破壊で精密測定できる方法として考案されたインプラント植立評価装置を用いてインプラント動揺度を測定したところ、再現性のある測定が困難だった。そこで、測定プローブと平行にレーザーを照射し、プローブと照射点との距離を一定にすることで、測定間誤差を減少させられるのではないかと考え、市販されているレーザーポインターを測定プローブに装着する補助具を新たに開発・製作し、測定の再現性を評価する試験をおこなった。その結果、補助具の装着で測定値のばらつきが著しく改善された。
本研究により、補助具によってレーザーを指標とすることがインプラント植立評価測定の再現性向上に有効である可能性が示唆された。今後、測定プローブと補助具の小型化・軽量化を図ることで、チェアーサイドで誰でも精度の高いインプラントの客観的な機能評価が行えるようになると考えられる。
細胞スフェロイドは生物研究を目的とした異種細胞層構造の構築や組織工学研究における細胞送達手段、細胞の局在化にも有効である。しかし、従来の細胞スフェロイドの作製には、操作が煩雑、作製スフェロイドサイズの制御や含有する細胞数の制御が困難、作製に長時間を要する、など多くの問題がある。そこで、本研究では、ソフトリソグラフィーにより作製したマイクロパターンディッシュを利用し、簡便かつ大量に均一な細胞スフェロイドを作製できる技術の確立を目指した。マイクロパターンディッシュ上での単純な細胞培養(骨髄間葉系細胞)では不均一な細胞凝集塊が形成された。PEGやサイトカラシンDといった薬剤を添加した培養により、不均一な細胞凝集塊形成は抑制されたが、細胞スフェロイドの形成も阻害された。そこで、培養2日目におけるサイトカラシンDの除去の結果、各チャンバー内で均一なスフェロイドを形成することに成功した。薄切切片の蛍光免疫染色の結果、このスフェロイド形成において細胞間接着が有意に関与していることが分かった。本細胞スフェロイドのサイズや細胞含有数はチャンバーサイズによって制御可能である。また、タンパク質分解酵素を用いなくても、簡単なピペッティングでディッシュからの回収が可能である。今回開発した手法は多くの研究に応用可能な基盤技術となりうる。
高齢者のQOLを維持するため、歯の喪失の主要原因となる歯周病の予防法の開発は重要である。「すだち」の抽出成分スダチチンはMRSAやH. pyloriに対し抗菌作用を有することや、う蝕原因菌であるS.mutans菌およびS.sobrinus菌の歯面への付着抑制作用を有することが知られている。一方、抗菌ペプチドは皮膚や粘膜の上皮細胞より産生され、生体のもつ自然免疫機能の維持に重要な役割を果たしている。生体抗菌ペプチドの一つであるカルプロテクチンはP. gingivalisの上皮細胞への付着を低下し増殖を抑制することが知られている。そこで本研究では、スダチチンが抗菌ペプチドに及ぼす影響について検討を行った。ヒト口腔粘膜上皮細胞株TR146にスダチチンを添加し、24あるいは48時間培養後、全RNAを抽出し、抗菌ペプチドのmRNA発現をNorthern blot法およびRT-PCR法にて調べた。その結果、低濃度のスダチチンで数種の抗菌ペプチドの発現上昇が認められた。以上より、スダチチンは歯周組織の感染予防に有用であり、歯周病予防に応用できる可能性が示唆された。
低濃度の過酸化水素水に、光触媒剤二酸化チタン (TiO2) を添加した漂白剤の漂白効果が、漂白剤の塗布条件と光照射を変えた時に、どのような漂白効果を示すかについて評価した。漂白剤には、使用時の過酸化水素濃度3.5% を使用した。これは、一般に歯科医院で使われる漂白剤濃度の約10分の1である。漂白効果の判定には、ヘマトポルフィリン染色試験紙を用いた。漂白剤の塗布を、製造者指示通り、または製造者と異なる変法で行った場合、また、光照射を460 nm 付近に単独のピーク波長を有するLED と、460 nm と410 nm 付近に二つのピーク波長を有するものについて、漂白効果の違いを評価した。測色は分光式色差計により行い、測定されたL*、a*、b* の値から、色差(ΔE*ab) を算出し、それぞれの条件で得られた色差の平均値と標準偏差を統計的に処理した。結果は、安全性を最優先に設計された、「低濃度の過酸化水素水に光触媒剤である二酸化チタン (TiO2) を添加した漂白剤」 は、製造者指示通りの使用では、漂白効果が緩慢であるが、塗布方法と光照射に工夫すると、高い漂白効果が得られることを示していた。
支台歯形成や窩洞形成中の偶発的な露髄は、一般臨床において比較的高い頻度で遭遇する偶発症である。そこで我々は、臨床で簡便かつ非破壊的に正確な象牙質厚さを計測する方法について検討することを企図し、一般工業界で頻用されている超音波エコーを用いた非破壊検査法に着目して、本法を象牙質厚さ測定に応用することを試みた。
本研究では、超音波エコー測定器と牛歯象牙質を用いて、その測定精度と臨床応用の可能性について検討した。規定の厚さに調節した象牙質試験片を製作し、超音波エコーを用いて象牙質厚さを200回ずつ測定した。その結果、測定値の平均値は、規定厚さ1.0㎜、1.5㎜、2.0㎜、2.5㎜、3.0㎜の象牙質試験片で、各々1.1±0.11㎜、1.7±0.09㎜、2.0±0.11㎜、2.5±0.12㎜、2.9±0.19㎜であった。このことから、超音波エコーにより象牙質厚みの測定が可能であることが明らかとなり、本法は臨床上有用性の高い診査法になり得ることが示唆された。
最近地震や災害のニュースを聞くことが多い。私たちが数年後歯科医師になることを考えると、このような災害時に何ができるかを考えた。そのひとつとして、悪化する衛生状態を防ぐためにも簡便な消毒薬が必要であると考えた。現時点における消毒には火、多量の水や薬剤を使用する。しかし、災害時では水などの物資が制限されるため、このような消毒法は適切でない。そこで、災害時の物資の少ない状態でより効率のよい消毒法として現在人体に安全な消毒薬として使用されている銀コロイドに注目した。
まず、最初の段階として今回は銀コロイドの殺菌効果について検討した。LB液体培地6ml中に銀コロイドを0.01、0.1、1、10ppm添加して大腸菌を37℃、5時間振とう培養し、濁度(560nm吸光度)を測定した。さらにこれらの測定値から銀コロイドの大腸菌に対する50%発育阻止濃度を求めた。
この実験から殺菌効果は、ある濃度でいきなり大きくなり、その濃度は大腸菌量により異なる。また、大腸菌の量に反比例して小さくなるということが分かった。
これからは、この結果をふまえた上で、コロイドの性質を生かした消毒法を開発していきたい。
嚥下障害患者のビデオ嚥下造影検査 (VFSS)で認められる舌根部や喉頭蓋谷への食塊の残留は、誤嚥の危険性を示す重要な所見のひとつである。
しかし、残留のVFSS所見が、飲食物の種類により、どの様に変化するのかに関する詳細な検討は行われていない。そこで我々は、生体の舌、咽頭および下顎を再現したモデルを作成してシミュレーションVFSSをおこない、口腔咽頭における食塊の動きについて検討した。
その結果、粘度または付着性の大きな食品ほど、舌背斜面をゆっくりと滑落し、喉頭蓋谷に多く残留する事がわかった。粘性の有る食品が、一塊となって舌背斜面を滑落するのに対して、液体は、舌背斜面に拡散して滑落するため、喉頭蓋谷への残留が少なくなっていた。また、側面から撮影したVFSS画像のみからは、左右どちらか片側の喉頭蓋谷へ残留しているのか、両側に残留しているのかの判別が困難である事が示された。口腔咽頭腔に残留する飲食物をVFSSで評価するためには、側面像に加えて正面像による検査が必要と考える。
高齢者の口腔ケアにおいてはCandida spp.の数を一定にコントロールする必要がある。実際の口腔ケアにおいては、各種の洗口剤などが使用されている。これらの洗口剤の適切な使用のためにも、Candida spp.の数の変動を把握しておく必要がある。そこで、我々は誰にでも使用できる簡易型のCandida spp.の検出キットの開発を試みたので報告する。滅菌綿棒をヒトの口腔内に軽く挿入して、唾液を含ませる。その綿棒を尖端の尖ったチューブの中に押し込んで、尖端をカバーしているビニールシールを突き破る。その際はあらかじめ、スライドグラスを入れてあるチューブを用意しておく。ビニールシールが突き破られた結果、その穴から生理食塩水がスライドグラスの培地の上に落下していく。その後、スライドグラスの入っているチューブのフタを閉めてから、37℃の培養器に入れる。その結果、37℃で培養1日後にスライドグラス上の培地に多数のコロニーが出現した。高齢者の口腔感染症を考える上で最も重要なCandida spp.を簡単に調べることができて、誰でも使用可能な検出キットを開発することができた。
受動喫煙でも口腔内の健康に悪影響を及ぼすことが知られている。本研究は、唾液に着目し、受動喫煙と唾液抗菌タンパク質および唾液量、唾液腺細胞について検討した。
受動喫煙モデルには雄性ラットを用いた。ラットをコントロール群、受動喫煙(passive smoking; PS)群の2群に分け、PS群は屠殺するまで、チャンバー内で1日3回、1回に8分間受動喫煙させた。唾液はPS前(0日後)とPS15日、30日後の刺激時唾液を用い、アミラーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性を測定した。 唾液腺はPS31日後に採取し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った。
PS0、15、30日後の唾液量はコントロール群、PS群で差は認められなかった。アミラーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性はコントロール群に比べ、PS群でわずかながら減少が見られた。唾液腺の組織学的解析では、PS群は全体的に血管が拡張しており、充血状態であった。
PSは唾液タンパク質に影響を与え、唾液腺においては血管を拡張し、充血状態にさせた。PSは唾液および唾液腺に悪影響を与えて口腔内環境を悪化させると考えられる。
歯周病やう蝕の治療は医療者が行なうが、予防、治療の成功率向上や治療後の再発防止のためには、患者様のセルフケアが欠かせない。私達はプラークコントロール・レコード(以下PCR)を測定する相互実習を通して、自分の口腔内をよく観察することが重要であると考えた。そこで、本研究では既成の口腔内観察ミラーを用いることにより、プラークコントロールが改善するかどうかを検証した。その結果ミラー非使用群に比べ、ミラー使用群のほうにPCR値が改善した人数が多かった。このことはプラークコントロールに対する口腔内観察ミラーの有用性を示している。また口腔健康に関する意識と行動の変化をアンケートで調査したところ、意識や行動の変化を見る項目ではPCR測定後の一定期間で両群ともに向上したが、行動に関しては使用群の向上率が高かった。このことから自分の口腔内を知ることにより意識が高まった結果、それが行動に結びつく可能性が示された。今後は口腔内観察ミラーの評価アンケート等に基づき、口腔内観察ミラーを単純小型化し、より簡便に使用することができるようにしたい。このような器具を必要に応じて積極的に使用することは重要だと思われる。
遺伝子解析では血液サンプルからゲノムDNAを抽出する方法が一般的であるが、この方法は患者への侵襲が大きく、一般的な歯科臨床の中では困難と言わざるを得ない。そこで本研究では、口腔内より採取した粘膜細胞からより効率的にゲノムDNAを増幅させ、遺伝子多型の存在を診断するためのシステム構築を目的とした。研究の趣旨の説明に同意が得られた健常者の頬粘膜から、アプリケーターを用いて口腔粘膜細胞を採取し、phi29 DNA polymeraseを用いてゲノムDNAの増幅を行った。その後、PCR法および電気泳動によりIL-1遺伝子発現の検討を行った。その後、制限酵素を利用したRFLP解析により、遺伝子多型の有無を検討した。その結果,、口腔粘膜細胞からゲノムDNAを短時間で効率よく増幅することが可能であり、またIL-1遺伝子の特異的増幅が確認された。さらに制限酵素を用いたRFLP解析を行うことにより、遺伝子多形の解析が可能であった。頬粘膜から粘膜細胞を採取する方法は非侵襲的であり、遺伝子多型の診断を行う上で、十分な量のゲノムDNAを短時間で得られることが示唆された。今後インプラント周囲炎や重度歯周病と遺伝子多形の存在との関連を明らかにする上で、本手法が有用であることが示唆された。
シーラント材として用いられているBis-GMA系レジンとグラスアイオノマーセメントは、陶材や金属より細菌が付着しやすいことが知られている。本実験では、シーラント材の表面およびエナメル質との接着境界面でのStreptococcus mutans (S. mutans)の定着とバイオフィルム形成について検討した。
シーラント材料は、光重合型レジン(A)、化学重合型グラスアイオノマーセメント(B)、光重合型グラスアイオノマーセメント(C)を用いた。S. mutansはATCC25175を用いた。培養は0.6%蔗糖添加または非添加で行われた。観察には実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いた。
本菌の定着とバイオフィルム形成は、Aが一番低く、B、Cの順に高かった。接着境界面への定着は、Aが一番低く、B、Cの順に高かった。S. mutansの定着はシーラント材によって異なることが示唆された。シーラント材を用いたう蝕予防処置では、萌出状況による材料選択、定期的検査そして接着境界面の歯垢除去が重要であると考えた。
エナメル芽細胞は分化段階に応じて、種々の基質タンパク質やプロテアーゼを分泌しながらエナメル質を形成するが、それらを制御するメカニズムについては不明な点が多い。我々はマウスエナメル芽細胞の初代培養細胞を用いたDNA microarrayによる遺伝子発現プロファイルの網羅的解析から、エナメル芽細胞の分化制御に関与する遺伝子について検討した。培養エナメル芽細胞は3日後amelogeninを高レベルに発現しているが7日後には減少し、分化の指標であるenamel matrix serine proteinase-1 (EMSP-1)の発現が3日後に比べ亢進した。これらの結果からエナメル芽細胞は、培養経過に伴って分化したと考えられる。DNA microarrayの解析から、培養3日後に発現が低かったsecretort lukocyto potease inhibitor (SLPI)、small proline-rich protein 1a (Sprr1a)、Sprr3、keratinocyte differentiation associatied protein (Kdap)、repetinなど角質細胞の分化に関連する遺伝子群は、7日間培養すると発現が上昇した。一方、Tenascin C(細胞外基質)やPOEM(接着分子)は、培養に伴い発現が低下した。これらの遺伝子は、エナメル芽細胞の分化や機能発現に関与している可能性があり、今後、エナメル質の形成機序を明らかにする上で有用と考えられる。
歯科用光照射器の照射光特性は、光重合型レジン材料の重合に大きな影響を及ぼすが、照射光の斑による光強度の不均一性とそれが材料に及ぼす影響に関する報告は少なく不明な点が多い。本研究では5種類の歯科用光照射器について、ライトガイド端における光強度分布による光量斑を測定し、これらの光照射器を用いて重合させた光重合型コンポジットレジンの表面硬さに与える影響を検討した。その結果、測定した全ての光照射器の照射光の光量は均一ではなく、最大値の19-80%にとどまった。とくにハロゲンランプやキセノンランプを光源とする光照射器では、著しい光量斑が観察された。また、これらの光照射器によって重合させた光重合型コンポジットレジンの表面硬さ値も均一ではなく、最大値に比べ約半分の硬さ値しか示さない部位もみられた。こうしたことから光照射器からの照射光の光量斑は、材料の機械的性質に大きな影響を及ぼすことが示唆された。材料の部位による性質の不均一性は修復治療の成否にも影響を及ぼす可能性があることから、照射光の光量斑を軽減させる対策が必要と考えられる。
第13回大会 2007年(平成19年)8月22日 参加校 22校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時
審美修復を行うにあたって、歯の色調観察には、一般的にshade guideが用いられている。shade guideは、ヒトの歯の色調を表現するために、様々な色調から構成されている色見本である。しかし、天然歯とshade guideの色を一致させることは臨床的に難しく、これを行う環境や術者の経験などに影響を受けることが知られている。そこで、視認性に優れたshade guideを製作することを目的として、分光光度計を用いて光重合型レジンの色調分布について検討した。次いで、そのデータを基に光重合型レジンを用いたオリジナルshade guideを製作した。
実験には、異なる色調を有する市販の光重合型レジン2製品を用いた。試片の色調の測定には、フレキシブルセンサーを取り付けた高速分光高度計を用いた。その結果、同一の色番号で比較すると、光重合型レジンの明度および彩度は製品によって異なり、色の空間分布も製品によって違いが認められた。したがって、光重合型レジンを用いた審美的修復処置を行うためには、色調分布を考慮して、立体的で視認性に優れたオリジナルshade guideを指標としてシェードテイキングを行うことは臨床的には有効である可能性が示唆された。
金属床義歯は、レジン床義歯と比較して、(1) 強度が高いので薄くできる、(2) 吸水性がないので衛生的である、(3) 熱をよく伝えるなどの利点を有している。一方、金属床義歯の欠点としては、(1) コストが高い、(2) 床の不適合をリベースによって再適合することが難しい、(3) 作業工程が複雑であるなどの点が挙げられる。そこで本研究では、アクリルレジンよりも強度が高く吸水性が低いコンポジットレジン(CR)を用いてフレームワークを作製し、金属床とレジン床の利点を併せ持った新しいタイプの義歯を製作することを試みた。CRフレームワークは、熱可塑性樹脂を作業用模型上でプレス加工して作製した型を用いて成形し、光重合させることによって作製した。その後、通法に従って蝋義歯を作製し、加熱重合レジンを用いて義歯を完成させた。今回使用したCRの曲げ強さは189.8(±16.2)MPaとアクリルレジンのおよそ2倍であった。したがって、床の厚さをアクリルレジン床の 70%程度に薄くすることができた。また、CRはアクリルレジンと比較すると吸水性が低いので、本義歯は衛生的な観点からも優れているものと考えられる。
口臭はビジネスやプライベートにおけるコミュニケーションに対する障害となりえる口腔の状態である。そこで、抗菌作用があると言われているお茶成分を応用した口臭抑制キャンディーの開発を試みた。今回の研究では、マヌカ茶と緑茶を選択し、口臭と歯周病および齲蝕の原因菌を用いてそれぞれのお茶の抗菌作用を比較検証した。マヌカ茶と緑茶の抗菌作用を最小殺菌濃度で調べたところ、マヌカ茶の抗菌作用の方が明らかに高かったので、マヌカ茶葉粉砕物の懸濁液と熱水抽出液で比較したところ懸濁液の抗菌作用の方が高い事が示された。この結果から、マヌカ茶葉の粉砕物を含むノンシュガーキャンディーを実験用、含まないものを対照用として製作しランダム化クロスオーバー型の臨床試験を行った。その結果、マヌカ茶葉配合キャンディーは口臭原因物質である三種類の揮発性硫黄化合物に対しての顕著な抑制効果があるだけでなく、対照用に比べ口臭抑制の持続時間も長かった。またアンケート調査結果から口腔爽快感と口臭抑制感が優れていた。
以上の結果から、マヌカ茶葉配合キャンディーの口臭抑制に対する有用性と実用化が示唆された。
近年、外科的矯正術に加えて智歯抜歯やインプラント治療が増加し、術後の下歯槽神経麻痺も増加している。本研究の目的は、広く普及しているパノラマX線写真を用いて下歯槽神経麻痺の発生を術前に判断する簡便な診断法を確立することである。
下顎枝矢状分割術を施行した男女31名(62側)を対象とし、術後2週間にオトガイ部の温冷覚・触覚麻痺を検査した。患者のパノラマX線画像上で、下顎管の直径(=A)、下顎管上縁から下顎下縁の皮質骨までの距離(=B)を測定し、A/B比率を算出した。A、B、A/Bと各神経麻痺の発生率について相関をみた。さらに3ヵ月後の麻痺残存率との相関を見た。
本研究結果から、Aは冷覚麻痺の発生率と有意な相関があることがわかった。A/Bは温覚麻痺、冷覚麻痺、触覚麻痺全ての発生率に有意な相関を示した。特にA/Bが0.6以上である場合、3ヵ月後の麻痺残存率が有意に高かった(p< 0.01)。
パノラマX線写真を用いた術前診断では、A/Bを検討することが重要であり、特にA/Bが0.6よりも大きい場合は術者は下顎管の走行を精査し、術式等を再検討することが望ましい。本研究は智歯抜歯やインプラント治療後の知覚麻痺の発生率にも応用されることが期待される。
3Mixは、metronidazole (MN)、minocycline (MINO)、ciprofloxacin (CPFX)の作用機序の異なる3種の抗菌薬の練和物であり、軟化象牙質への投与により、口腔内病巣の効果的無菌化が期待できる。しかし、厚生労働省から認可されていないため安全性の検討が必要である。3Mixは不安定であり、水、光、高温と化学反応を起こして変質・失活する。3Mixは高い反応性を示すので、細胞機能に影響を与える可能性が考えられる。本研究では、MN、MINO、CPFXを種々のモル比で含有する3Mixを調製し、ヒト口腔細胞に対する傷害性を検討した。その結果、いずれの3Mixもほとんど歯髄細胞等の正常細胞には傷害性を示さないことが判明し、臨床応用の安全性が示唆された。しかし、3Mixは細胞に対して全く作用しないわけではなく、口腔扁平上皮癌細胞、特に、骨髄性白血病細胞に対して強い細胞傷害性を示した。細胞傷害性の原因となった成分はMINOであった。MINOの抗白血病効果の機序について現在検討中である。
日本において、お粥は、柔らかくて飲み込み易い病院食とされている。また、嚥下障害のある患者にも、お粥を与える事が多い。しかし、どの様な物性のお粥が嚥下障害患者に適しているのかについての詳細な検討は行われていない。そこで我々は、様々な方法で調理したお粥の物性を食品テクスチャ計測により検討した。また、お粥を検査食とした嚥下障害患者のビデオ嚥下造影検査(VFSS)所見を検討した。
その結果、水の量を増やして調理したお粥ほど、柔らかく、付着性が小さくなっていた。付着性の大きなお粥では、患者の口腔・咽頭腔への残留が多くなっていた。嚥下障害患者に対する病院食としてのお粥は、咽頭への残留を減らすために、付着性が大きくなり過ぎない様に調理すべきである。VFSSや内視鏡検査とテクスチャ計測を併用しながら、個々の嚥下障害患者に適した飲食物のテクスチャ特性を探る事は、臨床上大きな意味があると考える。
【目的】口腔顎顔面領域でのパノラマX線写真やX線CT画像から、その正常画像に関するTeaching fileを作成し、大学内のホームページにuploadする。
【方法】初めに、典型的正常解剖像を示すX線CT画像とパノラマX線写真を選定し、両画像をパソコン内に取り込んだ。取り込んだパノラマX線画像及びX線 CT画像は、ソフトウエアを用いて加工し、正常構造物のトレースを行った。パソコン内に取り込んだX線CT画像をi-movieを用いて動画を作製した。その後、ホームページ作製ソフトを用いてWebページを製作した。
【結果】大学内HPにて公開中。
【考察】我々が作成したTeaching fileには口腔顎顔面部の正常画像を多少知らないものでも容易に自学出来るよう諸処に工夫をこらした。パノラマX線写真では、正常構造物を示す線を容易に理解出来るよう、写真上にマウスを置くだけで、正常構造物の名称が分かるようにした。X線CT画像も同様の工夫を凝らし、容易に正常構造物の名称を把握出来るようにした。更には、立体的に画像を把握出来るよう動画を作成し、マウスクリックのみで連続画像を観察出来るようにした。
市販用純チタン(cpTi)やその合金は多くの歯科補綴装置に利用されている。前歯部の修復に使われる場合、チタンは陶材のような審美材料によって覆われるのが一般的である。そこで陶材との間で良好な接着力を得るために、新たにチタンの適切な表面処理を開発することが必要とされている。この研究では、cpTiと陶材との間の接着力における高濃度の硫酸によるエッチング処理の影響をISO 9693によって調べた。その結果、硫酸によるエッチングはサンドブラスト処理と同じ程度の接着力の向上を示した。酸エッチングはチタンに対してより細かな表面組織をつくり出したが、サンドブラスト処理と比較して陶材との接着力に有意な影響をもたらすことはなかった。これは熱処理によるチタンの酸化によって、陶材とチタンとの間のマイクロメカニカルな連結が消失したため、その結果、酸エッチングによってできた微細な孔が有効に機能しなかったためと考えられる。
オールセラミック修復物は審美性に優れているが、臨床上において破折やチッピングが生じると、口腔内では修理ができないため、撤去し再製する必要がある。しかし、ジルコニア系のコアーで製作したオールセラミック修復物は撤去が困難で、歯科医師や患者さんに大きな負担を与えているのが現状である。本研究の目的は、破折やチッピングが起こったオールセラミック修復物を分析して破壊の原因を究明し、セットする前に破折やチッピングの発生部位を非破壊検査により予測するシステムを提案することである。オールセラミック修復物の破折やチッピングの原因は人為的な設計ミスと築盛時の気泡の存在であった。ブリッジの連結部の形状設計やコアーの形態などの設計ミスや気泡の存在は、X線CT像により形態や大きさを計測することができた。そのため、X線CT像により臨床で破折する可能性がある修復物をセットする前に再製させることにより、臨床での破折等を防止できることが分かった。以上のことから、X線CT装置をオールセラミック修復物の非破壊検査装置として使用することにより、臨床での破折やチッピングを低減できることが示された。
高齢者の口腔内に存在するCandida albicansは、口腔カンジダ症をおこす危険性がある。高齢者の口腔ケアを考える場合にはC. albicansのコントロールは重要な課題である。そのため、安全で効果的な口腔ケア器材の開発が望まれているので、私は植物由来の精油を口腔ケアシステムに利用することを考えた。
in vitroでC. albicansに各種の精油を加えて培養するとバイオフィルムを形成したC. albicansに対してはCymbopogon citratusが抑制効果を示した。しかし、Cymbopogon citratusの抑制効果も唾液の添加によって減弱した。この結果はCymbopogon ccitratusによる抑制効果を高めるためには唾液を除去した状態で口腔内に塗布する必要を示している。
したがって、精油による口腔カンジダ症の予防には、可能な限り唾液を除去して精油を塗布するようなシステムの開発が必要となる。そこで、私は唾液を可能な限り除去してCymbopogon citratusを舌表面に塗布するシステムを開発した。
咬耗や、齲蝕の刺激によって修復象牙質が形成されることから、歯髄組織中には未分化間葉系細胞が存在し、状況に応じて象牙芽細胞に分化すると考えられている。我々は、歯髄細胞の性質を明らかにするため、DNAマイクロアレイを用いて歯髄細胞に発現する遺伝子を網羅的に解析し、軟骨細胞や骨芽細胞における遺伝子発現様式との比較から、歯髄細胞に特異的に発現する遺伝子を抽出した。その結果、歯髄細胞に特徴的に発現する遺伝子群を同定することができ、その中には細胞分化に深く関与することが示唆される遺伝子群が存在した。これら遺伝子の歯髄細胞における役割を検討する目的で、歯髄細胞初代培養系を用いて各遺伝子の発現変化を経時的に解析したところ、転写因子であるSp6とMsx2は培養経過に伴い発現が上昇し、細胞骨格タンパク質であるNestinと Transgelinの発現が低下していた。これらの遺伝子は、歯髄細胞の分化や機能発現を調節している可能性があり、今後、歯髄細胞の特性を明らかにする上で有用と考えられる。
口腔内気体(以下、口気と称する)中の揮発性硫黄化合物濃度(以下、VSCと称する)を指標に、生理的口臭に対する消臭効果と消臭持続時間を噴霧式塩化亜鉛製剤を用いて二重盲検法、交差研究により検討した。起床時から飲食と口腔清掃を禁止した状態で口気中のVSCが検出される健康な成人男性8名を対象に H2S、CH3SH、(CH3)2Sの濃度を指標とした。1回噴霧量0.08ml の0.1%塩化亜鉛剤と偽剤を用い、噴霧前、噴霧直後、30分後、60分後、90分後、120分後において、呼気中のVSC濃度の変動を口臭測定器を用いて測定した。その結果、噴霧回数に関わらず、噴霧式塩化亜鉛製剤噴霧直後にVSC濃度は顕著に減少した。しかし、噴霧後30分後にはVSC濃度は上昇した。また、VSCのうちH2SとCH3SHを認知閾値以下に120分間確実に抑制させるためには7回の噴霧回数が必要であった。噴霧式塩化亜鉛製剤が優れた口臭抑制効果をもつことを示していると共に口臭抑制効果を2時間持続させる場合、最低7回以上の噴霧が必要であることが判明した。
歯科医師は歯科治療において、大きな労力を使う。人間工学的に設計された器具を適切に把持することが、過剰な筋肉の負担を和らげることができうると考えられる。タービンにグリップを装着することによって、手の筋肉の疲労を減らし、使いやすくなるかどうかを評価することを目的とした。グリップは4種類を作製した。それぞれの断面は、小さい丸、大きい丸、三角、六角である。被験者には、固定した練習板をグリップ付きタービンで切削してもらった。終了後、アンケートを行った。さらに筋電図測定のため、被験者にはファントムに装着した模型を切削してもらった。使用感では、グリップの種類を問わずグリップを装着することで使いやすいと感じた人は全体の約90%を占めた。持ちやすさについては、グリップを付けたタービンの方が持ちやすい・握りやすいと感じた人は 87%であった。また滑りやすさについては、滑りにくいと感じた人は81%であった。丸グリップはグリップ非装着時に比べて筋電図測定値が約40%減少した。今回の結果より、適切な形、大きさ、感触のグリップは、作業の効率化にもつながり、筋骨格系障害を防ぐことができるのではないかと考える。
高血圧治療薬のカルシウム(Ca)拮抗薬は副作用として歯肉肥大を起こす。今回はin vivoで歯肉肥大に対する漢方薬の治療効果について調べることを目的とした。
材料には24匹のWistar系雄性ラットを用いた。それらの半数(12匹)は事前にCa拮抗薬nifedipineの投与により歯肉肥大を生じさせておいた。更にその半数(6匹)はnifedipine投与を続け、残りはnifedipineに加えて漢方薬として柴苓湯を投与した。下顎切歯(以下、切歯と略す)および頬側歯肉を含む上顎左側第一大臼歯(以下臼歯と略す)を写真撮影し、それぞれ間隔および幅を測定した。組織病理学的検索にはHE染色およびアザン染色を用いた。
nifedipine群とnifedipine+柴苓湯群とを比較したところ、柴苓湯の添加により切歯間隔は6週以降で、臼歯幅は8週で有意に減少した。両群の上顎左側第一大臼歯頬側歯肉の病理組織像を比較した。nifedipine群で観察されたコラーゲン線維の増生、線維芽細胞の増殖、毛細血管の増加と拡張が柴苓湯の添加により抑制された。
柴苓湯投与はCa拮抗薬による歯肉肥大の臨床的治療に有効と思われる。
本研究では、硫化水素、硫黄系、アンモニア系、有機酸系、アミン系、アルデヒド系、エステル系、芳香族系、炭化水素系の9種類のガスの臭気成分を分離検出できるにおい識別装置を用いて、歯周病患者の口臭検査を行い、歯周病早期発見への口臭検査の有用性を検討した。
歯周病患者と健常者の呼気を300ml採取し、におい識別装置を用いて9種類の基準ガス成分に対する口臭の臭気濃度および臭気指数を測定した。
歯周病患者から採取した口臭は9種類のにおい成分に分離され、硫黄系とアンモニアを除いた7種類のにおい成分の臭気濃度は健常者から採取した口臭と比較して高い値を示した。硫化水素、硫黄系、アンモニア系、有機酸系成分の臭気は歯周病原菌によるアミノ酸の分解産物であり、今回用いたにおい識別装置においても硫化水素および有機酸の臭気濃度の上昇がみられた。他の5種類のにおいの成分についても臭気濃度の上昇が認められ、簡易型臭気測定器を用いた揮発性硫黄化合物の臭気濃度だけでは、歯周病患者のにおいの成分を評価できないことが判明した。
以上の結果より、におい識別装置法は歯周病患者の早期発見に有用な手法であると考えられる。
近年、口腔癌は世界的に増加傾向にあり、世界では年間50万人の患者が発生し、全体の癌で5番目に高い癌である。口腔癌の早期発見・早期治療は、外科的侵襲を少なくし、患者さんのQOLを考える上で、非常に重要な課題となりうる。本研究で着目するRunx3は、Runt domain を有する転写因子で、胃癌において癌抑制遺伝子として働く一方、皮膚の基底細胞癌においては過剰発現することが報告されている。我々は、口腔癌における Runx3の発現とその意義について調べ、診断への応用について検討した。口腔癌細胞株や癌症例において、Runx3の過剰発現が高頻度に認められ、その発現は分化度や転移とよく相関していた。Runx3の発現の低い癌細胞にRunx3遺伝子を導入し、過剰発現させたところ、増殖能が亢進した。さらに、 Runx3の発現の高い癌細胞にRunx3 siRNAを導入し、その発現を低下させたところ、増殖能の低下がみられた。以上の結果から、口腔癌におけるRunx3の過剰発現は、細胞の増殖を亢進することにより、癌の進展に関わることが明らかとなり、Runx3の発現の検索は口腔癌の悪性度診断に有用であることが示唆された。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、散発するいびきや無呼吸、低呼吸が特徴的な症状で、日中の傾眠や集中力の欠如、また不整脈等の生活習慣病との合併症を起こしやすく、まれには死に至る可能性も指摘されている。多くの保存的、外科的治療法があるが、近年閉塞性睡眠時無呼吸症(OSAS)治療の歯科的アプローチとして、スリープスプリントと呼ばれる口腔内治療装置が報告されている。これは顎を前方に誘導する主に上下顎一体型の装置であり、大きな治療効果があることが確認されているが、過度な装着感や下顎を咬頭嵌合位より前下方の非生理的な位置で固定されることによる顎関節への負担や嚥下、口呼吸障害等も指摘されている。これらの問題点を改善すべく、今回私は、上下顎分離型の新しい口腔内装置を開発した。これは開口時、安静睡眠時、いびき時の下顎の位置に違いがあると想定し、睡眠中にある程度の開口は出来るものの更なる開口を防ぐ、つまり安静時、開口時の下顎位より更に後退したいびき時の下顎位に変位するのを防止し、上気道の確保によりOSASを治療する装置である。
歯科医療の現場で頻繁に使用されるエアータービンなどによって、広範囲にミストが飛散することが知られている。私たちは今行っているユニット清掃で本当に汚染が除去できているのかどうかを疑問に思い、歯科治療の際に汚れる可能性のある歯科用ユニットとその周辺が、1日の外来診療の結果どの程度汚染しているかを調べた。各部位の細菌を生理食塩水で湿らせた滅菌綿棒を用いて採取し好気培養したところ、調査したすべての場所で細菌が検出され、特にテーブル、スピットン、ヘッドレスト、ユニット周囲の壁、キャビネットの上に多かった。さらに術者の着衣などからは診療後多くの細菌が検出され、特に帽子に付着する菌は多かった。また、一部からはカビも検出された。一方患者様が歯科治療環境の衛生に対してどのように感じているかをアンケートにより調査したところ、衛生面に懸念を持つ患者様はいらっしゃらなかった。現状でも危機的な状況であるとは言えないが、私達が実験時に80%アルコールで清拭したところ、検出される細菌は激減したことから、今後は患者様の信頼に応えるためにも、診療時のより丁寧な清拭を心がける必要があると思われる。
唾液は口腔組織の保護、咀嚼・嚥下機能の補助、食物の消化準備や会話などにも役立っており、口腔の健康だけでなく、全身の健康にも寄与している。そのため、様々な原因によって唾液が減少する口腔乾燥症では口腔内症状だけでなく全身状態にも影響を及ぼし、患者のQOL低下を導く。本研究では、口腔乾燥症のいくつかの原因に共通するストレスに応答して細胞を保護するAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)とそのAMPKによって機能が調節されている唾液産生に関与するチャネルタンパク、CFTRとENaCに注目した。今回はX線照射により作製された口腔乾燥症モデルマウスを用い、AMPK、CFTRと ENaCの発現の関連性を明らかにし、機構回復への手がかりを得る一助とすることを目的とした。X線照射により顎下腺ではAMPKのmRNA発現上昇とリン酸化によるその活性化が認められ、AMPKが防護的な機能を持つことが示唆された。またENaCの全てのサブユニットの発現上昇も観察された。今後、 AMPKを介したチャネル機能の調節についてタンパクレベルで検討し、唾液分泌機能の調節維持との関係性を明らかにする必要がある。
レジン接着システムの適切な前処理は、より良い接着修復を得るために必要である。本研究の目的は前処理手順がオールインワン接着システムの初期象牙質接着強さに及ぼす影響を検討したものである。システムとして市販オールインワン接着システム一種を用いた。ヒト抜去健全大臼歯40本を水平断した象牙質を被着体とし、製造者指示書に基づく前処理法(P1;湿った象牙質面に5秒間ボンディング材を擦りながら塗布し10秒間放置後、再度5秒間擦りながら塗布を行い、微風乾燥)と一部条件を変えた7種前処理法(P2~8)、計8つの異なる手順を行った。接着強さを小型接着試験器にて測定(n=5)を行い、破断面破壊形態を観察した。P5(完全乾燥した象牙質に、P1と同様の前処理)の接着強さは他の7種前処理手順と比べ有意(p<0.01)に大きい値を示したが、その他の7種前処理間の接着強さ値は同等の値を示した。破断面は、界面破壊とボンディング材あるいはレジンでの凝集破壊からなる混合破壊を示したものの、その比率は処理法により異なった。乾燥させた象牙質面に製造者指示書の前処理手順を行うことは接着強さの向上に効果的であった。
歯周炎は主に歯肉溝や歯周ポケット中の歯周病原菌が原因で起こる炎症である。歯周病原菌由来のLPS刺激によりマクロファージや歯肉線維芽細胞が活性化され、インターロイキン-1(IL-1)などの炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2、間質コラゲナーゼなどが産生され、歯周組織破壊が起こる。 IL-1βは線維芽細胞にある受容体に結合し、そのシグナルが細胞内へ伝達されNF-κBを活性化する。NF-κBは、炎症反応において誘導される多くの遺伝子の発現に関わる転写因子である。歯周炎に対する薬物療法は、スケーリングなどの効果促進補助と急性症状の緩和のため、抗菌・静菌剤の局所投与か、沈痛・抗炎症薬の全身投与が主流である。そこで、局所でのシグナル伝達系をブロックすることにより炎症反応を抑える、局所投与型の新規抗炎症薬の可能性を模索した。今回、歯周組織の原基であるヒト歯小嚢由来の線維芽細胞にIL-1βを作用させて炎症を誘導し、NF-κB阻害剤であるAPDCによる抗炎症作用がみられるか検討した。その結果、ヒト歯小嚢由来の線維芽細胞においてIL-1βで誘導される炎症反応は APDCにより抑制される可能性が示唆された。
本学では積極的に禁煙推進運動を行っている。これらの一環として、今年度より敷地内全面禁煙が始まったが、いまだ喫煙者は多い。今回我々は喫煙の口腔内への着色を短期間で明視化できる装置を作製し、喫煙の害を視覚的に認識させることを目的に研究を行った。喫煙者にクリアレジンが貼付されたマウスピースを喫煙時のみ装着させた。一週間後、色彩計を用いたL*a*b*法で汚染度を測定した。また、被験者及び無作為に抽出した学生を対象に、使用後の実験装置を用いたアンケート調査を実施した。結果、レジン部分の汚染度は、照度で見た場合、有意に汚染されていることが客観的に確かめられた。アンケートでは、全回答者の91.3%が使用後のマウスピースを汚いと回答した。また、喫煙者の70.4%が喫煙の継続を否定し、非喫煙者の総てが今後の喫煙の可能性を否定した。
実験結果より、短期間で視覚的に喫煙の悪影響を提示することは、禁煙モチベーション強化に繋がることがわかった。現在日本では、様々な禁煙活動が行なわれている。我々は、口腔内の専門家としての知識と技術を活かした禁煙支援活動を行うべきだと考えている。
第12回大会 2006年(平成18年)8月23日 参加校 19校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時
感染根管内から検出される菌種のうち約70?80%は嫌気性菌である。しかし、嫌気度要求の高い偏性嫌気性菌を培養するには高価で大掛かりな嫌気グローブボックスが必要であり、現状ではチェアサイドで行うことは非常に困難である。よって、我々はチェアサイドにおいて簡便に偏性嫌気性菌を培養できる簡易型嫌気培養キットの開発を試みた。まず、感染根管から分離同定される頻度、病原性が高いとされる偏性嫌気性菌を含む5菌種を選択した。それら5菌種を用いて嫌気グローブボックスで培養した結果とキットで培養した結果を比較した。また、臨床資料を採取しキットを使用して培養を試みた。その結果、簡易型嫌気培養キットと嫌気グローブボックスでは同じ結果を得た。さらに、このキットでは、培地に添加したpH指示薬の色調変化により、細菌の存在の有無の判別が可能である。よって、我々が開発した簡易型嫌気培養キットを使用することで根管内に存在する嫌気性菌を、チェアサイドにおいて簡便に検出することが可能であると考えられ、今後感染根管治療の精度の向上に極めて役立つと期待される。
Streptococcus sobrinus由来のグルコシルトランスフェラーゼ-I(GTF-I)は、スクロースを基質として粘稠性の高い不溶性グルカンを産生し、菌体の歯面への付着や定着において重要な役割を演じている。その為、GTF-Iの作用を阻害することは、齲蝕予防のための効果的な手段のひとつであると考えた。そこで、本研究では、S. sobrinus(MT8145)のGTF-I遺伝子をEscherichia coliに導入し、GTF-Iをリコンビナントタンパク(rGTF-I)として合成した。その後、得られたrGTF-Iをウサギに免疫して抗GTF-I抗体を作製した。S. sobrinusのスクロース依存性付着に及ぼす抗GTF-I抗体の抑制効果は、ガラス試験管壁への菌体付着実験によって評価した。非付着菌および付着菌量をOD550値として測定し、これを用いて菌体のガラス面への付着率を算出した。その結果、スクロース存在下で培養した際にはガラス試験管壁面に顕著な S. sobrinus菌体の付着を認めたが、培養時に抗rGTF-I抗体を添加することによって、菌体付着は著しく抑制された。したがって、rGTF-Iは、 S. sobrinusによる歯面プラーク形成を阻害する抗体を作製するための、きわめて有効なタンパク抗原のひとつであることが示唆された。
高齢全部床義歯装着者が抱える問題解決を目的とした新しい口腔湿潤剤の開発を行った。問題とは、口腔乾燥、義歯性口内炎、義歯安定剤の使用である。開発コンセプトは 1. 維持力の向上、2. 義歯の機能低下を生じない、3. 抗カンジダ作用を有すの3点とした。維持力向上には、高粘度の素材が求められることから、素材を根コンブより抽出し、唾液の粘度と比較した結果、有歯顎者:7.3mPa・s、無歯顎者:6.0mPa・s、保湿剤:1.0mPa・sに対し、根コンブ水:13.1mPa・sと十分な粘度を示した。義歯の機能では、咬合接触面積は義歯安定剤(クッションタイプ)は増加、義歯安定剤(クリームタイプ)は減少、根コンブ水は、ほとんど変化しなかった。抗カンジダ作用では口腔ケア用品に用いられる植物に着目、7種類の植物から抽出した精油のカンジダへの効果を検討した結果、ディスク法でクロモジのみ抗カンジダ作用が認められ、Candida albicansに対するMICおよびMBCは3.3%であった。以上、コンブ水およびクロモジオイルを用いて、高齢全部床義歯装着者の抱える問題点を解決できる新しい口腔湿潤剤開発の可能性が示唆された。
歯周炎は幾つかの症候に分類され、様々な危険因子によって発症し進行する疾患群である。歯周ポケット内のグラム陰性嫌気性菌に由来する菌体成分は歯周組織細胞に対して直接的に作用することで細胞障害を引き起こし、結果としての歯周組織破壊を招く。今回我々は、慢性歯周炎・侵襲性歯周炎・急性壊死性潰瘍性歯肉炎 (ANUG)に関与するP. gingivalis (Pg)、A. actinomycetemcomitans (Aa)、T. forsythus (Tf)、T. denticola (Td) 菌体成分破砕分画上清が骨芽細胞の細胞膜Ca2+流入に対しどのような効果を持つか検討した。その結果、骨芽細胞のCa2+流入がPg、Aa、Tf菌体成分によって抑制された一方で、Td菌体成分はCa2+流入を増加させた。急激な骨吸収を示す侵襲性歯周炎を誘発するAa 菌体成分はCa2+流入抑制を示し、一方で骨吸収を示さないANUGを誘発するTd 菌体成分ではCa2+流入を増加させる。慢性歯周炎では、Ca2+流入を抑制するPg, Tfとそれを増加させるTdの菌体成分が、骨芽細胞の細胞膜Ca2+流入調節に対して相反的に作用する結果として中程度の骨吸収を示すのかもしれない。したがって、各菌体成分の細胞膜Ca2+流入調節機構とそれぞれの歯周炎疾患群との比較は、宿主細胞の反応を根拠とした新しい診断基準の確立を可能とするかもしれない。
現在日本は急速に高齢化が進み、介護の必要な高齢者も又増加している。口腔内が不衛生であることは誤嚥性肺炎を発症させる原因となる。そこで、口腔ケアをより効果的にする新しい介護用歯ブラシの研究・開発を行い、その有用性について検討した。 臨床での口腔ケアの現状を把握するため介護施設の訪問及びアンケートを行い、現状は十分な口腔ケアが行えていない事が分かった。そして、実際に口腔ケアを行っている方の意見を参考に新しい介護用歯ブラシを製作した。開発品と市販品を比較・実験したところ、開発品は①吸引困難な痰なども吸引可能②ゴム枠による汚水の残留防止③注水により粘着性物質の除去効果向上④術者の負担軽減⑤個々の患者への調節可能という利点が挙げられた。これらより、清掃効率の大幅な向上、汚染物質の誤嚥防止、処置時間の短縮、携帯性の向上、結果として誤嚥性肺炎の防止に貢献できる事が示された。 今回の開発は、口腔ケアを簡便・身近にした。また誤嚥性肺炎の予防に役立ち、口腔ケアの重要性を広めるきっかけになった。今後、医療現場において歯科医師の知識がより幅広く活用され、医科と歯科の連携が強化されることを期待する。
唾液腺から分泌される唾液は口腔内を湿潤状態に保ち、摂食、嚥下、会話に不可欠であると同時に、抗菌作用など生体の恒常性維持に様々な重要な役割を果たしている。唾液中には水の他に、様々な生理物質などが含まれることが知られている。一方で、唾液は口腔粘膜を保護するという観点から、粘膜免疫における生体防御に重要な因子であるが、唾液中に存在する免疫細胞の詳細については知られていない。そこで、本研究では唾液中に存在する免疫細胞の有無やその機能について詳細に観察したところ、正常なマウスの唾液中には免疫細胞が存在し、粘膜免疫の恒常性維持機構に関与していることが示された。また、シェーグレン症候群に伴い唾液中に活性化T細胞などが出現してくることが明らかになった。以上のことから、唾液中のIgA量や免疫細胞の同定が唾液腺の免疫動態を知る上で簡便なテスト法としての臨床的意義を有していることが示唆された。
歯科診療所の環境を整える事により、患者様の治療に対する不快感を軽減できる事が知られている。本研究では、患者様にとってどのような環境が快適かを検討した。診療室と待合室に焦点を当てるために、7軒の歯科診療所の協力を得て、患者様60人(平均53.0歳)に視覚・聴覚・診療において重要視している事の3点を問うアンケート調査を実施した。また開業歯科医師30人に診療所の実態に関する回答をいただいた。患者様と歯科医師の間に診療室の快適性に関する意識の違いがあるかどうかを検証した。さらに、日米の歯科医院の環境の差についても調査した。これらより、患者様の心理面に働きかけるような工夫点を検索した。歯科診療において患者様も歯科医師も最重要視しているのは技術であったが、私達の予想以上に、患者様にとって医院の雰囲気や歯科医師の人間性が重要であることが示唆された。
嚥下性肺炎は口腔内の微生物が原因菌となる場合が多く、高齢者の死亡原因の上位を占める重大な疾患である。しかし、その発生メカニズムの解析や治療法の開発に必要な実験モデルは開発されていない。そこで我々はヒトの嚥下性肺炎のマウスモデルの開発を試みた。さらにそれを使用して、ヒトに有益な微生物を利用した新たな感染症に対する治療法であるプロバイオティクスを嚥下性肺炎の予防と治療に応用することを検討した。その結果、Candida albicansをマウスの舌に定着させると、その一部は嚥下されて肺に炎症症状をおこした。そして、Lactobacillusを舌に接種した場合は舌に定着したCandida albicansの数が有意に減少した。以上の結果から、我々が開発したマウスモデルを使用することでLactobacillusによるプロバイオティクスが嚥下性肺炎の予防と治療に有効である可能性が示唆された。
近年、歯に対する美意識の向上から、美しい歯面を維持するための歯面研磨処理が日常臨床で行われている。しかし、粗研磨から仕上げ研磨までと、そのステップは多く、開口を長時間維持することで患者に負担がかかる。また、術者の技量によってその歯面には差ができると考えられる。私たちは、粗研磨剤(研磨成分として100μmシリカを含有)に仕上げ研磨剤(同じく1μmシリカを含有)を混和すると、シリカが歯面に接触する面積が大きくなることで、効率的な研磨が行えると予想し、実験を行った。その結果、粗研磨剤に微粒子シリカを適正な重量比%で混和した研磨剤の使用で、傷がほとんど見られない滑沢な歯面が得られた。この研磨剤は1ステップの研磨で美しい面が得られるので、患者への負担が軽減され、臨床において有効であると言える。
舌は咀嚼や嚥下にとって重要な機能を担っており、咀嚼・嚥下障害の原因の一端を舌の運動障害が担っていることも多い。今回私達は、エックス線被曝がなく、安全性の高い超音波診断装置を用いて咀嚼・嚥下中の舌運動を可視化することを試みた。顎口腔機能が正常な本学の学生を対象に、色々な濃度、硬さの食品を咀嚼・嚥下させて、舌運動の様子を超音波診断装置にて観察した。その際、食品の種類と舌運動との関連性についても調べた。その結果、超音波診断装置により、舌運動を大まかに捉えられることが分かった。記録した舌運動を分析したところ、4つの特徴的な動きが抽出されたが、多くの場合、舌運動は単一動作の連続ではなく、複数動作の組み合わせによって構成されていることも明らかになった。さらに、咀嚼時の舌運動は様々な条件により多様なパターンを呈した。今後は咀嚼・嚥下障害を有する場合の舌運動パターンを分類し、障害のある部分を抽出して診断に結び付けられるようにしたい。また、舌運動の解析によって、それぞれの病態に適した食品を選ぶことが可能となり、新たな介護食の開発ができることを望んでいる。
嚥下障害患者の食事には、とろみをつけて飲み込みやすくするための嚥下補助食品として、トロミ調整剤が多く用いられる。このようにとろみをつけた食品は、一定の物性のものを日々再現性よく調整するべきであり、粘度計などで粘度を計測しながら行うことが望ましい。そこで、ベッドサイドや厨房で粘弾性を簡便に再現できる器具を試作し、その有用性を検討した。本実験では、市販プラスチック製スプーンのさじ部分に直径7mmと直径11mmの大きさの穴を開けた粘弾性測定器具を作製し、トロミ調整剤の粘度を調整しその粘弾性を周波数によって示した。さらに、嚥下障害患者の障害に応じた3段階の粘弾性も明らかにした。今回作製した簡易粘弾性測定器具を使用することで、嚥下障害の程度にあわせたトロミを非常に簡単な操作で調整できた。この簡易粘弾性測定器具を使用することで、嚥下障害患者の嚥下食におけるトロミの調整の適切化と医療スタッフ間で共通のトロミの尺度を持てる。したがって、食事療法・食事介助の質の向上につながると言える。
ヒトは生まれた環境の中で成長し生活するため、その生活様式から強く影響を受けると考えられる。環境からの受動的な影響は身体の生理学的な適応を促し、その一部は骨や歯牙といった硬組織に痕跡として残される。近世にあたる江戸時代、府内江戸の人口は最盛期には100万人以上であったと推算され、当時世界一の大都市として、一般庶民(町人)の生存密度は非常に高かったことは容易に想像できる。そのような都市の生活環境は、ヒトの形質に何かしら影響を及ぼしているのではないかと考えられる。本研究では府内江戸庶民集団である池之端七軒町遺跡出土人骨を用い、頭蓋顔面における形質の都市化の発現を検討した。成人男性人骨167体を形質人類学方法で計測し、考古学的資料から埋葬時期を4期に分けて計測値の時代変化を統計学的に分析した。単変量解析の結果、江戸時代を通じて、脳頭蓋では水平方向に拡大するとともに、相対的に後頭部の拡大が認められた。顔面頭蓋では縦方向に拡大(高顔化)傾向と眼窩の大型化が認められたが、上・下顎および口腔領域では有意な変化は認められなかった。
日本のデンタルフロス使用率が世界の先進諸国のなかでこれほど低いという理由を明らかにする目的で、中・高・大学生の使用状況調査、歯科医師の指導状況調査、市場調査、及びデンタルフロスの物性テストを行った。 ① デンタルフロスを一日一回以上使用する者は中学生が0~4.3%、高校生が2.4~5.6%、大学生が3.8~4.8%であった。 ② デンタルフロスが陳列されている店は、コンビニ31.3~54.2%、薬局63.6~92.3%、スーパー・マーケット40.0~75.0%であった。 ③ 診療所で患者にデンタルフロスを勧めているのは26.1%であった。 ④ 歯科医師自身のデンタルフロス使用率は1日2回以上14.1%、1日1回23.4%、1週間に1回以上15.8%、1ヶ月に1回8.6%、使用しない者は36.8%であった。以上から国民・患者のデンタルフロス使用率を上げるためには歯科医師自身がその意義を認識して使用すること、さらにその歯学教育の中での教育の充実が必要であると結論された。
笑気吸入鎮静法および笑気吸入にクラシック音楽鑑賞を併用した精神鎮静法が中枢神経系、自律神経系、循環動態に及ぼす影響を検討した。有志健康成人20人に、安静時、30%笑気吸入時、30%笑気吸入とクラシック音楽鑑賞併用時においてTP、Mean HRT、LF、HF、Normalized LF、Normalized HF、LF/HF ratio、血圧、心拍数、1回拍出量、心拍出量、全末梢血管抵抗、BIS値を測定した。音楽鑑賞にはモーツァルトの「アイネクライネナハトムジーク」、バッハの「G線上のアリア」、ヴィヴァルディーの「四季~春~」を用いた。本研究においてTPは減少傾向を示した。心拍数は有意に減少した。また、 Normalized HFはわずかに増大し、Normalized LFやLF/HF ratioはわずかに減少した。一方、血圧、1回拍出量、心拍出量に変化はみられなかった。それに対して、笑気吸入鎮静法や音楽鑑賞により有意な心拍数の減少がみられた。これらの結果は、笑気吸入鎮静法に音楽鑑賞を併用した精神鎮静法が交感神経系を抑制し、副交感神経系を賦活したためであると考えられた。
Methotrexateは葉酸の構造類似体であり、細胞周期のS期の細胞に作用し、ヌクレオチドの合成を阻害し、細胞の増殖を抑える抗腫瘍薬である。今回の研究では、まずMethotrexateの細胞毒性と腫瘍細胞選択性を調べた。ヒト口腔扁平上皮癌細胞とヒト口腔正常細胞に作用させてその毒性を測定した。薬剤の作用時間を変え、細胞生存率の濃度依存性を調べ、CC50値を特定した。比較のために、ヒト白血病細胞、ヒト肝癌細胞、ヒト脳腫瘍系細胞でも同様の実験を行った。ここまでの結果として、すべての癌細胞で、ある濃度を境に細胞毒性が発揮され、時間とともに生存率も低下したが、その感受性に差が見られた。今回の実験では、白血病細胞>口腔癌細胞>肝癌細胞>脳腫瘍系細胞の順となった。正常口腔細胞においてはいずれも毒性がほとんど見られなかった。癌の細胞死は、従来からapoptosisとnecrosisが議論されてきたが、最近autophagyも議論されてきている。今後、 Methotrexateによる口腔癌細胞の細胞死がどのような機構であるかを調べ、それも発表したいと考えている。
結合組織成長因子(CCN2/CTGF)は軟骨で強い発現を示し、軟骨細胞の分化、増殖、接着、運動を制御している。CCN2/CTGFの多様な機能は知られつつあるが、その機能を調節する分子や特異的受容器に関しては未だ知られていない。我々はこれらの解明が様々な骨・軟骨形成に異常をきたす疾病の治療に貢献できると考え、CCN2/CTGFに結合する分子の同定と機能解析を目的とした。 Yeast-two Hybrid法を用いた軟骨細胞系細胞株HCS-2/8のcDNAライブラリーのスクリーニングから、CCN2/CTGFと相互作用を示すタンパク質の1 つとしてフィブロネクチン1が得られた。さらに、CCN2/CTGFが濃度依存的にフィブロネクチンとHCS-2/8細胞の接着を促進することを証明し、この接着がC末端領域によりα5β1インテグリンを介して行われていることを明らかにした。これらの結果は軟骨細胞接着機構の制御に応用でき、軟骨細胞の異常に起因する疾病の治療薬開発等に貢献できる可能性を秘めている。
近年ヒトのDNA解析が進む中、遺伝子と口腔疾患との関連を追及していくことは重要である。それユえ遺伝子の一塩基多型を分析するうえで被験者からのDNA採取が必須である。将来、歯科診療所での採取が一般的に行われるようになるであろう。それには患者に不安や痛みを与えることがないように簡便で安全な方法が要求される。本研究では舌表面を歯ブラシで10回擦過し剥離細胞を採取した。剥離細胞にタンパク質分解酵素を加えた後、フェノール処理とエタノール沈殿によってDNAを抽出し、電気泳動にて確認した。これまで遺伝子診断を診療室内で行う時、従来は静脈血からのDNA採取が一般的であった。しかしこの方法では精神的、肉体的侵襲が伴い、感染の危険性もある。今回報告する方法ではそれらを最小限に抑えることができ、遺伝子解析に十分なDNA量 (60.0±6.0mg) を抽出することに成功した。
目的:口腔の付属腺である唾液腺は、歯科医が医療行為を行える臓器である。しかし、歯科医の唾液・唾液腺に対する臨床的applicationの開発の試みは依然少ない。一方、前立腺癌は男性特有の悪性腫瘍で、食生活の欧米化に伴い増加傾向を示している。また、多くの腫瘍マーカーにおいて、最も信頼性の高いのが前立腺癌腫瘍マーカーのPSAである。本研究では、従来行われてきたPSAの血液検査を唾液検査で代替できる可能性を検討したので報告する。材料・方法:オス6WのSCIDマウス6匹を用い、ヒト前立腺癌培養細胞株LNcapを皮下に移植した。移植後、0.2cm以上2cm以下の各大きさで腫瘍および顎下腺を摘出し、液体窒素で凍結した。また、心臓より血液を採取し血清を調整した。血清および凍結試料は、抗ヒトPSA 高感度ELISAを用いてPSA濃度を測定した。結果:コントロールマウスの唾液腺内PSAおよび血清PSAは感度以下であり、PSA濃度は0であった。一方、腫瘍移植マウスの唾液腺PSAは 2.5ng/ml、血清PSA54.4ng/mlであり腫瘍移植後PSAが検出された。考察:前立腺癌が移植されると唾液腺組織内にPSAが認められるようになることから、前立腺癌の存在を唾液検査でスクリーニングできる可能性が示唆された。
口腔内細菌はある種の糖を栄養源として利用し、また歯質へ付着する初期段階では、イオン結合・疎水結合等の結合が関与するが、その中に糖鎖?レクチンによる選択的相互作用があることも知られている。本研究では、増殖阻害剤や付着阻害剤などへ向けS.mutans(JC2)と人工複合糖質高分子の相互作用を検討した。各種人工複合糖質高分子添加ではS.mutans増殖に対して、側鎖の糖鎖構造により大きく依存し、PV-GlcNAcのみが増殖阻害を発現した。また、静置時間の経時的検討では、5分間でほぼ、30分間で完全な増殖阻害を示した。SEMや蛍光顕微鏡観察の結果より、増殖阻害は菌体表面への付着により開始することが分かった。人工複合糖質高分子の1つであるPV-GlcNAcによりS.mutansの表面に何らかの変化をもたらし、菌溶液への添加から5分程度で発育がほぼ阻害されることが分かった。詳細は不明であるが選択的な糖鎖認識機構の関与が推測された。これらのことより、人工複合糖質高分子のS.mutansに対する発育阻害剤の可能性が示唆された。
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