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第12回大会

2006 年 8 月 23 日

第12回大会 2006年(平成18年)8月23日 参加校 19校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:大迫 俊光, 北海道医療大学歯学部, 5年生

チェアサイドで使用可能な簡易型偏性嫌気性菌培養キットの開発

感染根管内から検出される菌種のうち約70?80%は嫌気性菌である。しかし、嫌気度要求の高い偏性嫌気性菌を培養するには高価で大掛かりな嫌気グローブボックスが必要であり、現状ではチェアサイドで行うことは非常に困難である。よって、我々はチェアサイドにおいて簡便に偏性嫌気性菌を培養できる簡易型嫌気培養キットの開発を試みた。まず、感染根管から分離同定される頻度、病原性が高いとされる偏性嫌気性菌を含む5菌種を選択した。それら5菌種を用いて嫌気グローブボックスで培養した結果とキットで培養した結果を比較した。また、臨床資料を採取しキットを使用して培養を試みた。その結果、簡易型嫌気培養キットと嫌気グローブボックスでは同じ結果を得た。さらに、このキットでは、培地に添加したpH指示薬の色調変化により、細菌の存在の有無の判別が可能である。よって、我々が開発した簡易型嫌気培養キットを使用することで根管内に存在する嫌気性菌を、チェアサイドにおいて簡便に検出することが可能であると考えられ、今後感染根管治療の精度の向上に極めて役立つと期待される。

第2位:福田 幹久, 日本大学歯学部, 5年生

抗rGTF-I抗体はS. sobrinusのスクロース依存性付着を抑制する

Streptococcus sobrinus由来のグルコシルトランスフェラーゼ-I(GTF-I)は、スクロースを基質として粘稠性の高い不溶性グルカンを産生し、菌体の歯面への付着や定着において重要な役割を演じている。その為、GTF-Iの作用を阻害することは、齲蝕予防のための効果的な手段のひとつであると考えた。そこで、本研究では、S. sobrinus(MT8145)のGTF-I遺伝子をEscherichia coliに導入し、GTF-Iをリコンビナントタンパク(rGTF-I)として合成した。その後、得られたrGTF-Iをウサギに免疫して抗GTF-I抗体を作製した。S. sobrinusのスクロース依存性付着に及ぼす抗GTF-I抗体の抑制効果は、ガラス試験管壁への菌体付着実験によって評価した。非付着菌および付着菌量をOD550値として測定し、これを用いて菌体のガラス面への付着率を算出した。その結果、スクロース存在下で培養した際にはガラス試験管壁面に顕著な S. sobrinus菌体の付着を認めたが、培養時に抗rGTF-I抗体を添加することによって、菌体付着は著しく抑制された。したがって、rGTF-Iは、 S. sobrinusによる歯面プラーク形成を阻害する抗体を作製するための、きわめて有効なタンパク抗原のひとつであることが示唆された。

第3位:小山 拓馬, 鶴見大学歯学部, 5年生

新しい口腔湿潤剤の開発

高齢全部床義歯装着者が抱える問題解決を目的とした新しい口腔湿潤剤の開発を行った。問題とは、口腔乾燥、義歯性口内炎、義歯安定剤の使用である。開発コンセプトは 1. 維持力の向上、2. 義歯の機能低下を生じない、3. 抗カンジダ作用を有すの3点とした。維持力向上には、高粘度の素材が求められることから、素材を根コンブより抽出し、唾液の粘度と比較した結果、有歯顎者:7.3mPa・s、無歯顎者:6.0mPa・s、保湿剤:1.0mPa・sに対し、根コンブ水:13.1mPa・sと十分な粘度を示した。義歯の機能では、咬合接触面積は義歯安定剤(クッションタイプ)は増加、義歯安定剤(クリームタイプ)は減少、根コンブ水は、ほとんど変化しなかった。抗カンジダ作用では口腔ケア用品に用いられる植物に着目、7種類の植物から抽出した精油のカンジダへの効果を検討した結果、ディスク法でクロモジのみ抗カンジダ作用が認められ、Candida albicansに対するMICおよびMBCは3.3%であった。以上、コンブ水およびクロモジオイルを用いて、高齢全部床義歯装着者の抱える問題点を解決できる新しい口腔湿潤剤開発の可能性が示唆された。

伊川 裕明, 東京歯科大学, 6年生

骨芽細胞を標的とする歯周炎治療:歯周病原性細菌の菌体成分による骨芽細胞機能調節と臨床的歯周炎疾患像

歯周炎は幾つかの症候に分類され、様々な危険因子によって発症し進行する疾患群である。歯周ポケット内のグラム陰性嫌気性菌に由来する菌体成分は歯周組織細胞に対して直接的に作用することで細胞障害を引き起こし、結果としての歯周組織破壊を招く。今回我々は、慢性歯周炎・侵襲性歯周炎・急性壊死性潰瘍性歯肉炎 (ANUG)に関与するP. gingivalis (Pg)、A. actinomycetemcomitans (Aa)、T. forsythus (Tf)、T. denticola (Td) 菌体成分破砕分画上清が骨芽細胞の細胞膜Ca2+流入に対しどのような効果を持つか検討した。その結果、骨芽細胞のCa2+流入がPg、Aa、Tf菌体成分によって抑制された一方で、Td菌体成分はCa2+流入を増加させた。急激な骨吸収を示す侵襲性歯周炎を誘発するAa 菌体成分はCa2+流入抑制を示し、一方で骨吸収を示さないANUGを誘発するTd 菌体成分ではCa2+流入を増加させる。慢性歯周炎では、Ca2+流入を抑制するPg, Tfとそれを増加させるTdの菌体成分が、骨芽細胞の細胞膜Ca2+流入調節に対して相反的に作用する結果として中程度の骨吸収を示すのかもしれない。したがって、各菌体成分の細胞膜Ca2+流入調節機構とそれぞれの歯周炎疾患群との比較は、宿主細胞の反応を根拠とした新しい診断基準の確立を可能とするかもしれない。

井田 有希子, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 4年生

介護医療における口腔ケア器具の開発(在宅介護への応用の可能性)

現在日本は急速に高齢化が進み、介護の必要な高齢者も又増加している。口腔内が不衛生であることは誤嚥性肺炎を発症させる原因となる。そこで、口腔ケアをより効果的にする新しい介護用歯ブラシの研究・開発を行い、その有用性について検討した。 臨床での口腔ケアの現状を把握するため介護施設の訪問及びアンケートを行い、現状は十分な口腔ケアが行えていない事が分かった。そして、実際に口腔ケアを行っている方の意見を参考に新しい介護用歯ブラシを製作した。開発品と市販品を比較・実験したところ、開発品は①吸引困難な痰なども吸引可能②ゴム枠による汚水の残留防止③注水により粘着性物質の除去効果向上④術者の負担軽減⑤個々の患者への調節可能という利点が挙げられた。これらより、清掃効率の大幅な向上、汚染物質の誤嚥防止、処置時間の短縮、携帯性の向上、結果として誤嚥性肺炎の防止に貢献できる事が示された。 今回の開発は、口腔ケアを簡便・身近にした。また誤嚥性肺炎の予防に役立ち、口腔ケアの重要性を広めるきっかけになった。今後、医療現場において歯科医師の知識がより幅広く活用され、医科と歯科の連携が強化されることを期待する。

奥野 美穂, 徳島大学歯学部, 4年生

唾液を用いた免疫動態テスト法の開発

唾液腺から分泌される唾液は口腔内を湿潤状態に保ち、摂食、嚥下、会話に不可欠であると同時に、抗菌作用など生体の恒常性維持に様々な重要な役割を果たしている。唾液中には水の他に、様々な生理物質などが含まれることが知られている。一方で、唾液は口腔粘膜を保護するという観点から、粘膜免疫における生体防御に重要な因子であるが、唾液中に存在する免疫細胞の詳細については知られていない。そこで、本研究では唾液中に存在する免疫細胞の有無やその機能について詳細に観察したところ、正常なマウスの唾液中には免疫細胞が存在し、粘膜免疫の恒常性維持機構に関与していることが示された。また、シェーグレン症候群に伴い唾液中に活性化T細胞などが出現してくることが明らかになった。以上のことから、唾液中のIgA量や免疫細胞の同定が唾液腺の免疫動態を知る上で簡便なテスト法としての臨床的意義を有していることが示唆された。

川嶋 理恵, 日本歯科大学生命歯学部, 5年生

患者様が心から癒される歯科医院を目指して~Cure and Care~

歯科診療所の環境を整える事により、患者様の治療に対する不快感を軽減できる事が知られている。本研究では、患者様にとってどのような環境が快適かを検討した。診療室と待合室に焦点を当てるために、7軒の歯科診療所の協力を得て、患者様60人(平均53.0歳)に視覚・聴覚・診療において重要視している事の3点を問うアンケート調査を実施した。また開業歯科医師30人に診療所の実態に関する回答をいただいた。患者様と歯科医師の間に診療室の快適性に関する意識の違いがあるかどうかを検証した。さらに、日米の歯科医院の環境の差についても調査した。これらより、患者様の心理面に働きかけるような工夫点を検索した。歯科診療において患者様も歯科医師も最重要視しているのは技術であったが、私達の予想以上に、患者様にとって医院の雰囲気や歯科医師の人間性が重要であることが示唆された。

黒田 真美, 奥羽大学歯学部, 4年生

嚥下性肺炎の実験モデルの開発とプロバイオティクスによる肺炎の予防

嚥下性肺炎は口腔内の微生物が原因菌となる場合が多く、高齢者の死亡原因の上位を占める重大な疾患である。しかし、その発生メカニズムの解析や治療法の開発に必要な実験モデルは開発されていない。そこで我々はヒトの嚥下性肺炎のマウスモデルの開発を試みた。さらにそれを使用して、ヒトに有益な微生物を利用した新たな感染症に対する治療法であるプロバイオティクスを嚥下性肺炎の予防と治療に応用することを検討した。その結果、Candida albicansをマウスの舌に定着させると、その一部は嚥下されて肺に炎症症状をおこした。そして、Lactobacillusを舌に接種した場合は舌に定着したCandida albicansの数が有意に減少した。以上の結果から、我々が開発したマウスモデルを使用することでLactobacillusによるプロバイオティクスが嚥下性肺炎の予防と治療に有効である可能性が示唆された。

澤田 紘美, 昭和大学歯学部, 4年生

臨床経験から発案した、微粒子シリカ混和による歯面研磨剤の作成

近年、歯に対する美意識の向上から、美しい歯面を維持するための歯面研磨処理が日常臨床で行われている。しかし、粗研磨から仕上げ研磨までと、そのステップは多く、開口を長時間維持することで患者に負担がかかる。また、術者の技量によってその歯面には差ができると考えられる。私たちは、粗研磨剤(研磨成分として100μmシリカを含有)に仕上げ研磨剤(同じく1μmシリカを含有)を混和すると、シリカが歯面に接触する面積が大きくなることで、効率的な研磨が行えると予想し、実験を行った。その結果、粗研磨剤に微粒子シリカを適正な重量比%で混和した研磨剤の使用で、傷がほとんど見られない滑沢な歯面が得られた。この研磨剤は1ステップの研磨で美しい面が得られるので、患者への負担が軽減され、臨床において有効であると言える。

信田 智美, 新潟大学歯学部, 5年生

咀嚼・嚥下時の複雑な舌運動を超音波で可視化する試み

舌は咀嚼や嚥下にとって重要な機能を担っており、咀嚼・嚥下障害の原因の一端を舌の運動障害が担っていることも多い。今回私達は、エックス線被曝がなく、安全性の高い超音波診断装置を用いて咀嚼・嚥下中の舌運動を可視化することを試みた。顎口腔機能が正常な本学の学生を対象に、色々な濃度、硬さの食品を咀嚼・嚥下させて、舌運動の様子を超音波診断装置にて観察した。その際、食品の種類と舌運動との関連性についても調べた。その結果、超音波診断装置により、舌運動を大まかに捉えられることが分かった。記録した舌運動を分析したところ、4つの特徴的な動きが抽出されたが、多くの場合、舌運動は単一動作の連続ではなく、複数動作の組み合わせによって構成されていることも明らかになった。さらに、咀嚼時の舌運動は様々な条件により多様なパターンを呈した。今後は咀嚼・嚥下障害を有する場合の舌運動パターンを分類し、障害のある部分を抽出して診断に結び付けられるようにしたい。また、舌運動の解析によって、それぞれの病態に適した食品を選ぶことが可能となり、新たな介護食の開発ができることを望んでいる。

河野 多香子, 大阪歯科大学, 4年生

トロミ調整剤の簡易的な粘弾性測定器具の開発

嚥下障害患者の食事には、とろみをつけて飲み込みやすくするための嚥下補助食品として、トロミ調整剤が多く用いられる。このようにとろみをつけた食品は、一定の物性のものを日々再現性よく調整するべきであり、粘度計などで粘度を計測しながら行うことが望ましい。そこで、ベッドサイドや厨房で粘弾性を簡便に再現できる器具を試作し、その有用性を検討した。本実験では、市販プラスチック製スプーンのさじ部分に直径7mmと直径11mmの大きさの穴を開けた粘弾性測定器具を作製し、トロミ調整剤の粘度を調整しその粘弾性を周波数によって示した。さらに、嚥下障害患者の障害に応じた3段階の粘弾性も明らかにした。今回作製した簡易粘弾性測定器具を使用することで、嚥下障害の程度にあわせたトロミを非常に簡単な操作で調整できた。この簡易粘弾性測定器具を使用することで、嚥下障害患者の嚥下食におけるトロミの調整の適切化と医療スタッフ間で共通のトロミの尺度を持てる。したがって、食事療法・食事介助の質の向上につながると言える。

中島 雅典, 広島大学歯学部, 6年生

府内江戸時代人における頭蓋顔面形質の都市化

ヒトは生まれた環境の中で成長し生活するため、その生活様式から強く影響を受けると考えられる。環境からの受動的な影響は身体の生理学的な適応を促し、その一部は骨や歯牙といった硬組織に痕跡として残される。近世にあたる江戸時代、府内江戸の人口は最盛期には100万人以上であったと推算され、当時世界一の大都市として、一般庶民(町人)の生存密度は非常に高かったことは容易に想像できる。そのような都市の生活環境は、ヒトの形質に何かしら影響を及ぼしているのではないかと考えられる。本研究では府内江戸庶民集団である池之端七軒町遺跡出土人骨を用い、頭蓋顔面における形質の都市化の発現を検討した。成人男性人骨167体を形質人類学方法で計測し、考古学的資料から埋葬時期を4期に分けて計測値の時代変化を統計学的に分析した。単変量解析の結果、江戸時代を通じて、脳頭蓋では水平方向に拡大するとともに、相対的に後頭部の拡大が認められた。顔面頭蓋では縦方向に拡大(高顔化)傾向と眼窩の大型化が認められたが、上・下顎および口腔領域では有意な変化は認められなかった。

中村 文彦, 愛知学院大学歯学部, 4年生

日本におけるデンタルフロスの使用の現状とその口腔衛生学的対応

日本のデンタルフロス使用率が世界の先進諸国のなかでこれほど低いという理由を明らかにする目的で、中・高・大学生の使用状況調査、歯科医師の指導状況調査、市場調査、及びデンタルフロスの物性テストを行った。 ① デンタルフロスを一日一回以上使用する者は中学生が0~4.3%、高校生が2.4~5.6%、大学生が3.8~4.8%であった。 ② デンタルフロスが陳列されている店は、コンビニ31.3~54.2%、薬局63.6~92.3%、スーパー・マーケット40.0~75.0%であった。 ③ 診療所で患者にデンタルフロスを勧めているのは26.1%であった。 ④ 歯科医師自身のデンタルフロス使用率は1日2回以上14.1%、1日1回23.4%、1週間に1回以上15.8%、1ヶ月に1回8.6%、使用しない者は36.8%であった。以上から国民・患者のデンタルフロス使用率を上げるためには歯科医師自身がその意義を認識して使用すること、さらにその歯学教育の中での教育の充実が必要であると結論された。

野村 昌弘, 鹿児島大学歯学部, 5年生

笑気吸入鎮静法および音楽の中枢神経・自律神経・循環動態に及ぼす影響

笑気吸入鎮静法および笑気吸入にクラシック音楽鑑賞を併用した精神鎮静法が中枢神経系、自律神経系、循環動態に及ぼす影響を検討した。有志健康成人20人に、安静時、30%笑気吸入時、30%笑気吸入とクラシック音楽鑑賞併用時においてTP、Mean HRT、LF、HF、Normalized LF、Normalized HF、LF/HF ratio、血圧、心拍数、1回拍出量、心拍出量、全末梢血管抵抗、BIS値を測定した。音楽鑑賞にはモーツァルトの「アイネクライネナハトムジーク」、バッハの「G線上のアリア」、ヴィヴァルディーの「四季~春~」を用いた。本研究においてTPは減少傾向を示した。心拍数は有意に減少した。また、 Normalized HFはわずかに増大し、Normalized LFやLF/HF ratioはわずかに減少した。一方、血圧、1回拍出量、心拍出量に変化はみられなかった。それに対して、笑気吸入鎮静法や音楽鑑賞により有意な心拍数の減少がみられた。これらの結果は、笑気吸入鎮静法に音楽鑑賞を併用した精神鎮静法が交感神経系を抑制し、副交感神経系を賦活したためであると考えられた。

坂東 康彦, 明海大学歯学部, 4年生

Methotrexateによる口腔細胞傷害性の誘導と細胞死のタイプ

Methotrexateは葉酸の構造類似体であり、細胞周期のS期の細胞に作用し、ヌクレオチドの合成を阻害し、細胞の増殖を抑える抗腫瘍薬である。今回の研究では、まずMethotrexateの細胞毒性と腫瘍細胞選択性を調べた。ヒト口腔扁平上皮癌細胞とヒト口腔正常細胞に作用させてその毒性を測定した。薬剤の作用時間を変え、細胞生存率の濃度依存性を調べ、CC50値を特定した。比較のために、ヒト白血病細胞、ヒト肝癌細胞、ヒト脳腫瘍系細胞でも同様の実験を行った。ここまでの結果として、すべての癌細胞で、ある濃度を境に細胞毒性が発揮され、時間とともに生存率も低下したが、その感受性に差が見られた。今回の実験では、白血病細胞>口腔癌細胞>肝癌細胞>脳腫瘍系細胞の順となった。正常口腔細胞においてはいずれも毒性がほとんど見られなかった。癌の細胞死は、従来からapoptosisとnecrosisが議論されてきたが、最近autophagyも議論されてきている。今後、 Methotrexateによる口腔癌細胞の細胞死がどのような機構であるかを調べ、それも発表したいと考えている。

星島 光博, 岡山大学歯学部, 5年生

CCN2/CTGFのCT領域はフィブロネクチンと相互作用し、α5β1インテグリンを介して軟骨細胞の細胞接着を高める

結合組織成長因子(CCN2/CTGF)は軟骨で強い発現を示し、軟骨細胞の分化、増殖、接着、運動を制御している。CCN2/CTGFの多様な機能は知られつつあるが、その機能を調節する分子や特異的受容器に関しては未だ知られていない。我々はこれらの解明が様々な骨・軟骨形成に異常をきたす疾病の治療に貢献できると考え、CCN2/CTGFに結合する分子の同定と機能解析を目的とした。 Yeast-two Hybrid法を用いた軟骨細胞系細胞株HCS-2/8のcDNAライブラリーのスクリーニングから、CCN2/CTGFと相互作用を示すタンパク質の1 つとしてフィブロネクチン1が得られた。さらに、CCN2/CTGFが濃度依存的にフィブロネクチンとHCS-2/8細胞の接着を促進することを証明し、この接着がC末端領域によりα5β1インテグリンを介して行われていることを明らかにした。これらの結果は軟骨細胞接着機構の制御に応用でき、軟骨細胞の異常に起因する疾病の治療薬開発等に貢献できる可能性を秘めている。

矢富 真希子, 松本歯科大学, 3年生

歯ブラシによる舌粘膜細胞からのDNA抽出簡便法

近年ヒトのDNA解析が進む中、遺伝子と口腔疾患との関連を追及していくことは重要である。それユえ遺伝子の一塩基多型を分析するうえで被験者からのDNA採取が必須である。将来、歯科診療所での採取が一般的に行われるようになるであろう。それには患者に不安や痛みを与えることがないように簡便で安全な方法が要求される。本研究では舌表面を歯ブラシで10回擦過し剥離細胞を採取した。剥離細胞にタンパク質分解酵素を加えた後、フェノール処理とエタノール沈殿によってDNAを抽出し、電気泳動にて確認した。これまで遺伝子診断を診療室内で行う時、従来は静脈血からのDNA採取が一般的であった。しかしこの方法では精神的、肉体的侵襲が伴い、感染の危険性もある。今回報告する方法ではそれらを最小限に抑えることができ、遺伝子解析に十分なDNA量 (60.0±6.0mg) を抽出することに成功した。

山﨑 隆一, 神奈川歯科大学, 5年生

PSA唾液検査は前立腺癌を発見できるか

目的:口腔の付属腺である唾液腺は、歯科医が医療行為を行える臓器である。しかし、歯科医の唾液・唾液腺に対する臨床的applicationの開発の試みは依然少ない。一方、前立腺癌は男性特有の悪性腫瘍で、食生活の欧米化に伴い増加傾向を示している。また、多くの腫瘍マーカーにおいて、最も信頼性の高いのが前立腺癌腫瘍マーカーのPSAである。本研究では、従来行われてきたPSAの血液検査を唾液検査で代替できる可能性を検討したので報告する。材料・方法:オス6WのSCIDマウス6匹を用い、ヒト前立腺癌培養細胞株LNcapを皮下に移植した。移植後、0.2cm以上2cm以下の各大きさで腫瘍および顎下腺を摘出し、液体窒素で凍結した。また、心臓より血液を採取し血清を調整した。血清および凍結試料は、抗ヒトPSA 高感度ELISAを用いてPSA濃度を測定した。結果:コントロールマウスの唾液腺内PSAおよび血清PSAは感度以下であり、PSA濃度は0であった。一方、腫瘍移植マウスの唾液腺PSAは 2.5ng/ml、血清PSA54.4ng/mlであり腫瘍移植後PSAが検出された。考察:前立腺癌が移植されると唾液腺組織内にPSAが認められるようになることから、前立腺癌の存在を唾液検査でスクリーニングできる可能性が示唆された。

鷲巣 太郎, 北海道大学歯学部, 6年生

人工複合糖質高分子によるStreptococcus mutansの増殖阻害

口腔内細菌はある種の糖を栄養源として利用し、また歯質へ付着する初期段階では、イオン結合・疎水結合等の結合が関与するが、その中に糖鎖?レクチンによる選択的相互作用があることも知られている。本研究では、増殖阻害剤や付着阻害剤などへ向けS.mutans(JC2)と人工複合糖質高分子の相互作用を検討した。各種人工複合糖質高分子添加ではS.mutans増殖に対して、側鎖の糖鎖構造により大きく依存し、PV-GlcNAcのみが増殖阻害を発現した。また、静置時間の経時的検討では、5分間でほぼ、30分間で完全な増殖阻害を示した。SEMや蛍光顕微鏡観察の結果より、増殖阻害は菌体表面への付着により開始することが分かった。人工複合糖質高分子の1つであるPV-GlcNAcによりS.mutansの表面に何らかの変化をもたらし、菌溶液への添加から5分程度で発育がほぼ阻害されることが分かった。詳細は不明であるが選択的な糖鎖認識機構の関与が推測された。これらのことより、人工複合糖質高分子のS.mutansに対する発育阻害剤の可能性が示唆された。

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