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第7回大会

2001 年 8 月 22 日 コメントをどうぞ コメント

第7回大会 2001年(平成13年)8月22日 参加校 17校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:金親 あや乃, 日本大学松戸歯学部, 5年生

新規歯垢染色液の開発

現在市販されている歯垢染色液の好ましくない使用経験から、着色した舌・口腔粘膜の簡便かつ迅速な脱色の方法および歯垢に着色しやすく、舌および口 腔粘膜に着色しにくい色素の開発を検討した。まず、試験管内で歯垢染色液にレモン汁やワインビネガーなどの酸性溶液を加えると、晴赤色はうすい緑色に変化 したので、歯垢染色液中の色素は酸により変色することを見出した。これを口腔内に適用したが脱色は不可能であった。また、亜鉛を加えることにより蛋白から 色素を脱離することを試みたが有効な方法とはならなかった。そこで、新規の食用色素を検索したところ、蛋白質に変化を与えない食用赤色色素であるアカビユ 色素を見出した。本色素の安全性が未解決であるのでin vitroでその可能性を検討した。アカビユ色素を8%アルブミン溶液に作用させ、塩化亜鉛で蛋白を沈殿させるとほぼ着色しない蛋白の沈殿を得た。また、 寒天片ならびにゼラチン片を着色すると、寒天はよく染まるがゼラチンの染色性は低かった。歯垢を染色すると、強く赤く染色された。これらのことから、アカ ビユ色素が歯垢染色液の色素として有望で応用が期待できることがわかった。

準優勝:武藤 陽子, 日本大学歯学部, 5年生

小型X線CTを応用した1歩進んだ根管治療法

根管治療は歯科医にとって最も難しい治療の一つである。効率的な治療を行うためには、信頼性の高い根管に関する情報が必要である。しかしながら、デ ンタル写真は2次元方向の画像であり、正確な情報を得ることは難しい場合もある。近年小型Ⅹ線CTが開発され、3次元画像を得ることが可能となった。そこ で本研究では、正確な根管形態の情報を得るのに3次元画像が有効であるか検討した。第1大臼歯では時おり近心頬側根管口と近心舌側根管口の間に、第4根管 口が見られることがある。しかしながら、この第4根管に関す情報をデンタル写真から得ることは困難である。このような症例では、小型Ⅹ線CTでの水平断画 像による正確な情報を得るのに有効であった。水平断画像では正確な根管口数だけでなく、それがどこに位置するかも観察することが可能となった。その結果、 歯科医は短時間で第4根管を処置することができた。小型Ⅹ線CTでの画像を使うことによって、より信頼度の高い椴管口明示を行うことができ、将来的に根管 治療における小型Ⅹ線CTの応用が期待される。

第3位:山本 祐子, 神奈川歯科大学, 5年生

超音波ダイアモンドチップを用いた支台歯形成法の臨床応用

支台歯形成は、日常の歯科医療行弟において重要な作業の一つである。今回は支台歯のフイニシングラインの切削手法に注目し、新たに開発した超音波ダ イヤモンドチップの有効性について検討した。回転型切削用ダイヤモンドバーのみでフイニッシングライン切削したもの(対照群)と回転型切削用ダイヤモンド バーにより支台歯形成を行った後にフイニッシングライン部分に対して超音波ダイヤモンドチップによる処理を加えたもの(超音波群)、それぞれのフイニッシ ングライン部分について走査型電子蹄徴鏡(SEM)を用いてその表面構造の比較検討した。支台歯フイニッシングライン部分の表面構造を比較検討した結果、 対照群の表面は、粗造で回転による縞状構造が一面に観察されたのに対して、超音波群では平滑で繊細な凹凸を持つ構造が観察された。また、振動による切削は 歯肉上皮の保護、炎症罹患の防止など歯周組織への侵襲を最小限にすることができる可能性も示唆された。支台歯形成におけるフイニッシングラインは、回転型 切削用ダイヤモンドバー単独仕上げより、超音波ダイヤモンドチップの併用の方がより滑沢なフイニッシングラインを獲得できた。したがって、このインスツル メントの臨床応用の可能性が期待される。

落合 恭子, 広島大学歯学部, 6年生

ELISA法における特異性抗原としてのActinobacillus Actinomycetemcomitansの外膜タンパクについての評価

歯周病は感染症と考えられており、Porphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Actinobacillus Actinomycetemcomitans (Aa)等が病原因菌として同定されている。こうした病原因菌の検査法として、ELISA法が広く用いられているが、現在抗原として使用している菌の破砕 画分には様々なタンパク、脂質、多糖、リポ多糖などが含まれるため、病原因菌を特定する上で正確であるとはいえない。そこでAaについて、歯周病原因菌に 特異的な抗原物質としてグラム陰性菌の外膜に存在する外膜タンパク(OMPs)について検討を行った。その結果、菌の破砕画分と外膜タンパク(Omp)画 分の歯周病患者血清との反応性を比較すると、両者の患者血清との反応には相関性が為られた。Ompはその大きさにより、100kDa、64kDa、 34kDa、29kDa、18kDa、16kDaが存在し、その中でもとりわけ29kDaが歯周病患者血清と強く反応した。以上の結果より、歯周病患者に おけるELISA法において、Ompを抗原として用いることが有効であると考えられる。

榎本 佳代子, 大阪大学歯学部, 5年生

一般歯科診療所来院患者におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の分布とその性状

オキサシリン(メチシリン)耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、難治性院内感染の病原菌として各国で注目を集めている。MRSAはメチシリン導入後 すぐに、1961年に最初にイギリスで報告され、70年代半ばまでには各国で見られるようになった。現在では、MRSAの検出頻度はスペイン、フランス、 イタリアでは約30%にまで増加しており、日本では10%程度とされている。さらに、抗生剤感受性の低下したコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の検出 率の増加も、深刻な問題となっている。しかしながら、一般歯科診療所を訪れる患者の口腔内におけるMRSAやメチシリン耐性を持つCNSの分布については いまだ明らかにされていない。本研究では、一般歯科診療所に来院した450名の患者について、mutiplexPCR法を用いてMRSA及びMRCNSの 分布を調べた。

久保 浩太郎, 東京歯科大学, 6年生

エナメル質の直接脱灰とソフトドリンク

エナメル質の脱灰は、頻繁なソフトドリンクの飲用によって引き起こされる。とくに問題なのは、それらを哺乳ビンで飲ませる習慣がついてしまったこと で、非常に深刻な酌蝕を引き起こす。本研究はこの習慣が、なぜ歯にとって悪いのかを示す保健指導や健康教育のためのデータを得ることを目的としている。ヒ トエナメル片の一方はそのまま、他方はATP塗布後、流水下での洗浄後、被験ソフトドリンクに2時間静止した。エナメル質表面の状態をSEMにて400 倍画像で観察した。またISFETpHセンサーで、飲料後の下顎第一大臼歯頬側歯面のpHを連続的に30分間測定した。 pHの値が最も低かったコーラが最も高度な脱灰像を示したが、飲用後の下顎第一大臼歯頬側歯面pHの回復は速かった。一方、pH値がコーラよりも高かった 他の飲料ではpHの回復は遅かった。pHの回復の速度は唾液の緩衝能によるので、飲料水中に含まれている酸量の影響を受けていると考えられる。就寝中は唾 液分泌量が減少するので、唾液の緩衝能を期待できない。そのため、就寝前に酸性の飲料水を飲まないことが重要でありさらにフッ化物の毎日の応用はエナメル 質の脱灰の予防に有効である。

櫻場 一郎, 北海道大学歯学部, 6年生

歯牙透明標本のレジン包理法

根管に墨汁を注入した透明標本は、根管形態の観察に最も有効である。しかし、透明剤であるサリチル酸メチルやフェノールは刺激臭があり人体に有害で あるため、標本は密栓したガラス瓶の中で透明剤に浸漬した状態で観察しなければならない。もし透明標本をレジン包埋できたならば、標本を素手で取り扱いな がら観察できるのでは、と考え本研究を行った。材料としてヒト抜去永久歯75本を用いた。髄腔を穿孔し30%水酸化カリウムで歯髄と付着組織を除去した。 製図用墨汁を根管に注入した後、脱灰、脱水した。標本をサリチル酸メチルで透明にし、ポリエステルレジンを浸透させて紫外線重合した。以上の術式により、 透明性を失わせることなく透明標本をレジン包埋することができ、標本を素手で扱うことが可能となった。墨汁で染まった根管は従来の透明標本におけるものと 同程度にはっきりと観察できた。レジン包埋した透明標本は歯科界で広く応用できると考えられる。

鈴木 史香, 明海大学歯学部, 4年生

マクロファージ活性化剤によるNO産生とアルギニンの消費に及ぼす効果

マクロファージは、幅広い生物活性を示し、リボ多糖(LPS)などで活性化されると一酸化窒素(NO)や腫瘍壊死因子(TNF)等を放出する。NO はアルギニンから、NO合成酵素により、NG-hydroxyl-L-arginineを経由して、シトルリンとともに生成される。NOは、不安定なため 定量が難しい。今回、LPSによるマウスマクロファージ様細胞Raw264.7の活性化に伴い変動する新しいマーカーを探索する目的で、アミノ酸の消費夜 び産生と、細胞内濃度について検討した。LPS添加により、Raw264.7細胞の増殖速度が若干低下し、培養液中へのNOとTNFの産生が著しく増加し た。この時、アルギニンを除く、殆どのアミノ酸の消費が減少した。グルタミンあるいはロイシンの消費量に対するアルギニンの消費量は、LPS添加により 2~5倍まで上昇し、シトルリンの生成量も4倍以上に上昇した。また、アスパラギンの新たな蓄積が観察された。マクロフアージの活性化に伴うアスパラギン の産生の増大についての報告はなく、マクロファージ系細胞におけるアスパラギン合成酵素の発現等を検討する予定である。

高瀬 一馬, 徳島大学歯学部, 3年生

口腔内写真を用いた審美性に関するアンケート調査

口腔内の審美性に関するアンケート調査を実施し、歯学部生、医学部生、薬学部・総合科学部生、高校生が口腔内の審美性についてどのような認識をして いるかを明らかにした。その結果、叢生および上顎前突においては、各群間で回答に大きな差は認められなかったが、オーバーバイトに関しては、歯学部生が切 端咬合や開咬を厳しく見極めていることがわかった。下顎前突、歯間の空隙、正中のずれ、歯肉の見え方に関しては、歯学部生は、医学部生、薬学部・総合科学 部生、高校生と比較して、いずれの項目に関しても回答のばらつきが少なく、他に比べて選択範囲が収束する傾向が見られた。記述式で寄せられた回答では、医 学部において歯肉や軟組織に関する記述が多く見られ、学部の特色を反映しているものと思われた。男女差については、女性の方が小さな歯列不正に対しても注 意深く認識する傾向がみられた。本研究により、歯学部生の口腔内審美性に対する意識が、他学部学生や高校生とは異なる傾向があることが明らかとなった。

滝永 哲, 岡山大学歯学部, 2年生

骨形成因子Cbfa-1のノックアウトマウスの頭蓋顔面と歯胚の組織学的研究

Cbfalは小守先生等により急性骨髄性白血病の染色体異常により発見され、骨牙細胞の分化に必須の転写因子であるといわれている。Cbfal欠禎 マウスでは、膜性骨化と軟骨内骨化のいずれも認められない。また歯胚の発育不全が生じることも知られているがその詳細は不明である。ヘテロ変異体ではヒト の鎖骨頭蓋異形成症と類似した表現型を示すことが明らかになっている。そこで本研究では、小守先生によりノックアウトマウスの提供を受け、Cbfa1欠損 マウス、ヘテロ変異体における頭蓋顔面と歯胚の発育異常を組織学的に検索した。頭蓋顔面の骨形成において、Cbfa1欠損マウスでは骨の欠損、ヘテロ変異 体では骨形成の遅延が認められた。さらに、Cbfa1欠損マウスでは、軟骨様組織による膜性骨の置換が認められた。Cbfa1欠椙マウスでは、骨の欠損以 外に歯胚、唾液腺、眼険において発育不全が認められたことより、Cbfa1は組織の形態形成や細胞の機能分化にも影響を与えることが示された。

竹田 まゆ, 日本歯科大学新潟歯学部, 5年生

顎間固定が生体に及ぼす影響

学生相互で簡易顎間固定を行い、顎間固定が生体に及ぼす影響についてノルエビネフリン(Nepi)、エピネフリン(Epi)の測定により、検討を 行った。本研究の主旨と内容を十分に説明し同意を得た、ボランティア15名に簡易顎間固定を行い、顎間固定前、固定直後、15分後、30分後、1時間後、 2時間後、固定除去直後、固定除去30分後に血漿中のNepi、Epi、最高血圧(SBP)、最低血圧(DBP)、脈拍数(PR)、経皮的酸素飽和度 (SpO2)の測定を行った。Epiの血漿濃度は顎間固定直後に有意な上昇を示したのみでその後は固定前に対し変化が認められなかったのに比べ、Nepi の血漿濃度は顎間固定直後より除去直後まで有意に上昇した。この結果は顎間固定によって生体に加えられたストレスが、主に肉体的要因であることを示してい る。一方SBP、DBP、PR、SpO2に有意な変化は認めなかった。顎間固定は呼吸、循環動態に変化を与えないものの、明らかに生体に加えられたストレ スである。今後は患者が顎間固定によって受ける肉体的ストレスについても、積極的な対応が必要であると本研究結果は示唆している。

谷野 文宣, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

姿勢による咬合接触状態の変化―座位と仰臥位での咬合接触状態の変化について―

現在、我々は間接法によって歯冠補綴物を製作しているが、補綴物を口腔内に試適した時に咬頭嵌合位より200~300μm高くなることが知られてい る。それ故に歯冠補綴物を支台歯に合着する際に、咬合調整を行わなくてはならない。臨床では咬頭嵌合位が安定している患者に対しては座位だけでなく仰臥位 で咬合調整を行うことがある。本研究は、座位と仰臥位との咬合接触状態を比較し、仰臥位での咬合調整の妥当性を検討するものである。
被験者は顎口腔系に特に異常を認めない成人9名とし、座位および仰臥位における軽度噛みしめ時の咬合接触をブラックシリコーンを用いて採得した。採得した 咬合接触記録を、透過減衰法を用いて、犬歯、第一、第二小臼歯および第一、第二大臼歯の30μm以下の咬合近接域を測定した。分散分析の結果から第一、第 二大臼歯においては座位と仰臥位との間の咬合接触面積の有意な差が認められた(それぞれp<0.05、P<0.01)。従って、両姿勢時の軽度噛みしめ時 における下顎位は異なる可能性が考えられる。故に我々は咬頭嵌合位が安定している患者に対して歯冠補綴物の咬合調整をする際には座位で行うことが望ましい と考える。

保坂 瑞代, 昭和大学歯学部, 5年生

グロー放電プラズマ処理によりチタンの生体適合性は向上する

チタンは表面処理によってその生体適合性を修飾されることが知られている。このため現在市販されているインプラントシステムはそのほとんどが特徴的 な表面構造を有している。グロー放電プラズマ(GDP)処理は、真空容器内で発生したプラズマにより材料のマクロの表面構造を変化させること無く、ぬれ性 を劇的に改善する手法であり、すでに工業界では広く用いられている。本研究では、GDP処理をインプラントの表面処理として応用すべく、GDP処理したチ タン板に対する骨芽細胞様細胞の接着性とその接着機構について検討した。その結果、本処理により血清中に存在する接着性タンパクの付着が向上し、チタンの 細胞接着性が改善されることが判明した。またGDPで処理したチタン板に接着した細胞は、増殖・分化のマーカであるストレスファイバーを強く発現してい た。本研究からGDP処理がチタン製インプラントの表面処理として有効であることが確認された。

宮崎 康雄, 愛知学院大学歯学部, 5年生

硬化時に変色する石膏の開発

石膏模型作製時の石膏硬化の判定には、おおよその硬化時間を参考にして練和からの経過時間の計測や、硬化時の熱変化を触知する方法などが臨床的に用 いられる。しかしながら、実際の石膏使用時には混水比が必ずしも一定でないこと、あるいは環填温度が常に変化していることから、硬化時を確定する事は難し い。また、接触による温度感覚は、個人差が大きく、硬化中に印象から模型を撤去してしまい、細部の破折を生じさせてしまうことや、変形させてしまうような ことも少なくない。そこで、石膏の硬化を的確に判断するため、普通石膏に感温顔料を混入することにより、硬化時の熱変化を視覚化し、硬化を客観的、かつ直 感的にも認知できる石膏を試作した。その結果、試作石膏は温度変化と共に色彩が変化することが確認された。また、石膏の硬化判定は石膏の色が桃色から白色 に変化する事によって判断された。物性試験からは、試作石膏の歯科理工学的性質は市販の石膏と同程度であることが確認され、臨床応用の可能性が示唆され た。

室井 悠里, 大阪歯科大学, 5年生

上級生は歯科材料の取り扱いが上手か

私たち歯学生にとって、歯科材料を取り扱う技術を習得することは必須である。はたして、本当に大学の実習で技術を習得できているのだろうか。私は歯 科技術の習得を反映すると考えられる操作として、印象採得、石膏注入、セメント練和に注目し、この研究で1年から5年までの各学年の歯学生に操作しても らった。そしてその習熟度を数値化し、データを統計学的に処理し、比較検討した。その結果、印象採得と石膏注入に関しては、5年生と1年、2年生との間に 有意差が認められた。また、2年生と3、4、5年生との間にも有意差が認められた。一方、セメント練和において、圧縮強さでは学年間に有意差は認められな かった。以上、調べた3操作について、上級生ほど習熟度が高い傾向にあることがわかった。しかし、取り扱い操作によっては学年差が認められないこともあ り、実習時期、実習回数、勉学意欲、調査時期や測定方法などの因子も関与していることが考えられた。

山口 聡子, 九州大学歯学部, 5年生

不正咬合と表情の関係について

私は現在歯科矯正治療を受けている立場から、治療前後で硬組織からでは分からない顔の全体的印象がどのように変わるかに興味を抱き、本研究を行なっ た。正常咬合である学生に、上顎前歯前突、下顎前歯前突、上下顎前歯前突になるような義歯を装着し、人工的に不正咬合をつくった。そして正常時と各々の不 正咬合時(義歯装着時)との笑顔における動きと不正咬合の種類によるスマイルの特徴を比較した。口唇の動きは、正常時で下口唇、上顎前歯前突では上口唇、 下顎前歯前突では口角部が初めに動いた。上顎前歯前突ではスマイル時に上口唇と口角部側方領域、下等前歯前突では下口唇と口角部側方領域で正常時との差が みられた。上下顎前突では上下口唇に限局して差が見られた。以上のことから各々の不正咬合は、口唇周辺の筋肉の動きに影響を与えスマイルに特徴的な変形を もたらしており、治療による表情の変化について前もって知ることができれば、患者の好都合になると考えられた。

吉田 尚史, 鶴見大学歯学部, 4年生

根管治療におけるイオン導入法のチュアーサイドでの基礎的評価システムの開発

近年、感染根管治療の成否は根管内無菌化が完全かどうかに左右されることが再認識されているが、実際の無菌化の確認は徹底されておらず、各種薬剤の 客観的評価法も確立されていない。最近、広く根管貼薬剤に使われてきたホルムクレゾール(FC)は、難治性感染根管の一病原体であるCandida albicansに対し不完全で、これに対し銀系薬剤のイオン導入法によって完全に除菌できたという報告がある。そこで、実際に難治性感染根管からしばし ば分離される好気性、嫌気性菌、真菌の7菌種を用い、イオン導入の効果を客観的に評価するシステムの開発を試みた。一定量の菌を寒天培地に混釈し、アンモ ニア銀、サホライド、ヨードヨード亜鉛を用い、各10mA分通電した。培養後、形成された阻止円の直径で効果を判定した結果、通電のみでの除菌効果は低 く、併用する薬剤によって各菌の感受性が異なることが明らかとなった。特にサホライドは効果が高く、アンモニア銀、ヨードヨード亜鉛は菌によっては効果が 低いが、嫌気性菌にはどちらもかなり有効であった。したがって、イオン導入を適切に用いることで完全無菌化が期待でき、このシステムをチェアーサイドで用 いることで、最適な条件決定が可能となると思われた。

第7回大会 2001年(平成13年)8月22日 参加校 17校

タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:金親 あや乃, 日本大学松戸歯学部, 5年生

新規歯垢染色液の開発

現在市販されている歯垢染色液の好ましくない使用経験から、着色した舌・口腔粘膜の簡便かつ迅速な脱色の方法および歯垢に着色しやすく、舌および 口腔粘膜に着色しにくい色素の開発を検討した。まず、試験管内で歯垢染色液にレモン汁やワインビネガーなどの酸性溶液を加えると、晴赤色はうすい緑色に変 化したので、歯垢染色液中の色素は酸により変色することを見出した。これを口腔内に適用したが脱色は不可能であった。また、亜鉛を加えることにより蛋白か ら色素を脱離することを試みたが有効な方法とはならなかった。そこで、新規の食用色素を検索したところ、蛋白質に変化を与えない食用赤色色素であるアカビ ユ色素を見出した。本色素の安全性が未解決であるのでin vitroでその可能性を検討した。アカビユ色素を8%アルブミン溶液に作用させ、塩化亜鉛で蛋白を沈殿させるとほぼ着色しない蛋白の沈殿を得た。また、 寒天片ならびにゼラチン片を着色すると、寒天はよく染まるがゼラチンの染色性は低かった。歯垢を染色すると、強く赤く染色された。これらのことから、アカ ビユ色素が歯垢染色液の色素として有望で応用が期待できることがわかった。

準優勝:武藤 陽子, 日本大学歯学部, 5年生

小型X線CTを応用した1歩進んだ根管治療法

根管治療は歯科医にとって最も難しい治療の一つである。効率的な治療を行うためには、信頼性の高い根管に関する情報が必要である。しかしながら、デ ンタル 写真は2次元方向の画像であり、正確な情報を得ることは難しい場合もある。近年小型Ⅹ線CTが開発され、3次元画像を得ることが可能となった。そこで本研 究では、正確な根管形態の情報を得るのに3次元画像が有効であるか検討した。第1大臼歯では時おり近心頬側根管口と近心舌側根管口の間に、第4根管口が見 られることがある。しかしながら、この第4根管に関す情報をデンタル写真から得ることは困難である。このような症例では、小型Ⅹ線CTでの水平断画像によ る正確な情報を得るのに有効であった。水平断画像では正確な根管口数だけでなく、それがどこに位置するかも観察することが可能となった。その結果、歯科医 は短時間で第4根管を処置することができた。小型Ⅹ線CTでの画像を使うことによって、より信頼度の高い椴管口明示を行うことができ、将来的に根管治療に おける小型Ⅹ線CTの応用が期待される。

第3位:山本 祐子, 神奈川歯科大学, 5年生

超音波ダイアモンドチップを用いた支台歯形成法の臨床応用

支台歯形成は、日常の歯科医療行弟において重要な作業の一つである。今回は支台歯のフイニシングラインの切削手法に注目し、新たに開発した超音波ダ イヤモ ンドチップの有効性について検討した。回転型切削用ダイヤモンドバーのみでフイニッシングライン切削したもの(対照群)と回転型切削用ダイヤモンドバーに より支台歯形成を行った後にフイニッシングライン部分に対して超音波ダイヤモンドチップによる処理を加えたもの(超音波群)、それぞれのフイニッシングラ イン部分について走査型電子蹄徴鏡(SEM)を用いてその表面構造の比較検討した。支台歯フイニッシングライン部分の表面構造を比較検討した結果、対照群 の表面は、粗造で回転による縞状構造が一面に観察されたのに対して、超音波群では平滑で繊細な凹凸を持つ構造が観察された。また、振動による切削は歯肉上 皮の保護、炎症罹患の防止など歯周組織への侵襲を最小限にすることができる可能性も示唆された。支台歯形成におけるフイニッシングラインは、回転型切削用 ダイヤモンドバー単独仕上げより、超音波ダイヤモンドチップの併用の方がより滑沢なフイニッシングラインを獲得できた。したがって、このインスツルメント の臨床応用の可能性が期待される。

落合 恭子, 広島大学歯学部, 6年生

ELISA法における特異性抗原としてのActinobacillus Actinomycetemcomitansの外膜タンパクについての評価

歯周病は感染症と考えられており、Porphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Actinobacillus Actinomycetemcomitans (Aa)等が病原因菌として同定されている。こうした病原因菌の検査法として、ELISA法が広く用いられているが、現在抗原として使用している菌の破砕 画分には様々なタンパク、脂質、多糖、リポ多糖などが含まれるため、病原因菌を特定する上で正確であるとはいえない。そこでAaについて、歯周病原因菌に 特異的な抗原物質としてグラム陰性菌の外膜に存在する外膜タンパク(OMPs)について検討を行った。その結果、菌の破砕画分と外膜タンパク(Omp)画 分の歯周病患者血清との反応性を比較すると、両者の患者血清との反応には相関性が為られた。Ompはその大きさにより、100kDa、64kDa、 34kDa、29kDa、18kDa、16kDaが存在し、その中でもとりわけ29kDaが歯周病患者血清と強く反応した。以上の結果より、歯周病患者に おけるELISA法において、Ompを抗原として用いることが有効であると考えられる。

榎本 佳代子, 大阪大学歯学部, 5年生

一般歯科診療所来院患者におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の分布とその性状

オキサシリン(メチシリン)耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、難治性院内感染の病原菌として各国で注目を集めている。MRSAはメチシリン導入後 すぐ に、1961年に最初にイギリスで報告され、70年代半ばまでには各国で見られるようになった。現在では、MRSAの検出頻度はスペイン、フランス、イタ リアでは約30%にまで増加しており、日本では10%程度とされている。さらに、抗生剤感受性の低下したコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の検出率の 増加も、深刻な問題となっている。しかしながら、一般歯科診療所を訪れる患者の口腔内におけるMRSAやメチシリン耐性を持つCNSの分布についてはいま だ明らかにされていない。本研究では、一般歯科診療所に来院した450名の患者について、mutiplexPCR法を用いてMRSA及びMRCNSの分布 を調べた。

久保 浩太郎, 東京歯科大学, 6年生

エナメル質の直接脱灰とソフトドリンク

エナメル質の脱灰は、頻繁なソフトドリンクの飲用によって引き起こされる。とくに問題なのは、それらを哺乳ビンで飲ませる習慣がついてしまったこと で、非 常に深刻な酌蝕を引き起こす。本研究はこの習慣が、なぜ歯にとって悪いのかを示す保健指導や健康教育のためのデータを得ることを目的としている。ヒトエナ メル片の一方はそのまま、他方はATP塗布後、流水下での洗浄後、被験ソフトドリンクに2時間静止した。エナメル質表面の状態をSEMにて400 倍画像で観察した。またISFETpHセンサーで、飲料後の下顎第一大臼歯頬側歯面のpHを連続的に30分間測定した。 pHの値が最も低かったコーラが最も高度な脱灰像を示したが、飲用後の下顎第一大臼歯頬側歯面pHの回復は速かった。一方、pH値がコーラよりも高かった 他の飲料ではpHの回復は遅かった。pHの回復の速度は唾液の緩衝能によるので、飲料水中に含まれている酸量の影響を受けていると考えられる。就寝中は唾 液分泌量が減少するので、唾液の緩衝能を期待できない。そのため、就寝前に酸性の飲料水を飲まないことが重要でありさらにフッ化物の毎日の応用はエナメル 質の脱灰の予防に有効である。

櫻場 一郎, 北海道大学歯学部, 6年生

歯牙透明標本のレジン包理法

根管に墨汁を注入した透明標本は、根管形態の観察に最も有効である。しかし、透明剤であるサリチル酸メチルやフェノールは刺激臭があり人体に有害で あるた め、標本は密栓したガラス瓶の中で透明剤に浸漬した状態で観察しなければならない。もし透明標本をレジン包埋できたならば、標本を素手で取り扱いながら観 察できるのでは、と考え本研究を行った。材料としてヒト抜去永久歯75本を用いた。髄腔を穿孔し30%水酸化カリウムで歯髄と付着組織を除去した。製図用 墨汁を根管に注入した後、脱灰、脱水した。標本をサリチル酸メチルで透明にし、ポリエステルレジンを浸透させて紫外線重合した。以上の術式により、透明性 を失わせることなく透明標本をレジン包埋することができ、標本を素手で扱うことが可能となった。墨汁で染まった根管は従来の透明標本におけるものと同程度 にはっきりと観察できた。レジン包埋した透明標本は歯科界で広く応用できると考えられる。

鈴木 史香, 明海大学歯学部, 4年生

マクロファージ活性化剤によるNO産生とアルギニンの消費に及ぼす効果

マクロファージは、幅広い生物活性を示し、リボ多糖(LPS)などで活性化されると一酸化窒素(NO)や腫瘍壊死因子(TNF)等を放出する。NO はアル ギニンから、NO合成酵素により、NG-hydroxyl-L-arginineを経由して、シトルリンとともに生成される。NOは、不安定なため定量が 難しい。今回、LPSによるマウスマクロファージ様細胞Raw264.7の活性化に伴い変動する新しいマーカーを探索する目的で、アミノ酸の消費夜び産生 と、細胞内濃度について検討した。LPS添加により、Raw264.7細胞の増殖速度が若干低下し、培養液中へのNOとTNFの産生が著しく増加した。こ の時、アルギニンを除く、殆どのアミノ酸の消費が減少した。グルタミンあるいはロイシンの消費量に対するアルギニンの消費量は、LPS添加により2~5倍 まで上昇し、シトルリンの生成量も4倍以上に上昇した。また、アスパラギンの新たな蓄積が観察された。マクロフアージの活性化に伴うアスパラギンの産生の 増大についての報告はなく、マクロファージ系細胞におけるアスパラギン合成酵素の発現等を検討する予定である。

高瀬 一馬, 徳島大学歯学部, 3年生

口腔内写真を用いた審美性に関するアンケート調査

口腔内の審美性に関するアンケート調査を実施し、歯学部生、医学部生、薬学部・総合科学部生、高校生が口腔内の審美性についてどのような認識をして いるか を明らかにした。その結果、叢生および上顎前突においては、各群間で回答に大きな差は認められなかったが、オーバーバイトに関しては、歯学部生が切端咬合 や開咬を厳しく見極めていることがわかった。下顎前突、歯間の空隙、正中のずれ、歯肉の見え方に関しては、歯学部生は、医学部生、薬学部・総合科学部生、 高校生と比較して、いずれの項目に関しても回答のばらつきが少なく、他に比べて選択範囲が収束する傾向が見られた。記述式で寄せられた回答では、医学部に おいて歯肉や軟組織に関する記述が多く見られ、学部の特色を反映しているものと思われた。男女差については、女性の方が小さな歯列不正に対しても注意深く 認識する傾向がみられた。本研究により、歯学部生の口腔内審美性に対する意識が、他学部学生や高校生とは異なる傾向があることが明らかとなった。

滝永 哲, 岡山大学歯学部, 2年生

骨形成因子Cbfa-1のノックアウトマウスの頭蓋顔面と歯胚の組織学的研究

Cbfalは小守先生等により急性骨髄性白血病の染色体異常により発見され、骨牙細胞の分化に必須の転写因子であるといわれている。Cbfal欠禎 マウス では、膜性骨化と軟骨内骨化のいずれも認められない。また歯胚の発育不全が生じることも知られているがその詳細は不明である。ヘテロ変異体ではヒトの鎖骨 頭蓋異形成症と類似した表現型を示すことが明らかになっている。そこで本研究では、小守先生によりノックアウトマウスの提供を受け、Cbfa1欠損マウ ス、ヘテロ変異体における頭蓋顔面と歯胚の発育異常を組織学的に検索した。頭蓋顔面の骨形成において、Cbfa1欠損マウスでは骨の欠損、ヘテロ変異体で は骨形成の遅延が認められた。さらに、Cbfa1欠損マウスでは、軟骨様組織による膜性骨の置換が認められた。Cbfa1欠椙マウスでは、骨の欠損以外に 歯胚、唾液腺、眼険において発育不全が認められたことより、Cbfa1は組織の形態形成や細胞の機能分化にも影響を与えることが示された。

竹田 まゆ, 日本歯科大学新潟歯学部, 5年生

顎間固定が生体に及ぼす影響

学生相互で簡易顎間固定を行い、顎間固定が生体に及ぼす影響についてノルエビネフリン(Nepi)、エピネフリン(Epi)の測定により、検討を 行った。 本研究の主旨と内容を十分に説明し同意を得た、ボランティア15名に簡易顎間固定を行い、顎間固定前、固定直後、15分後、30分後、1時間後、2時間 後、固定除去直後、固定除去30分後に血漿中のNepi、Epi、最高血圧(SBP)、最低血圧(DBP)、脈拍数(PR)、経皮的酸素飽和度 (SpO2)の測定を行った。Epiの血漿濃度は顎間固定直後に有意な上昇を示したのみでその後は固定前に対し変化が認められなかったのに比べ、Nepi の血漿濃度は顎間固定直後より除去直後まで有意に上昇した。この結果は顎間固定によって生体に加えられたストレスが、主に肉体的要因であることを示してい る。一方SBP、DBP、PR、SpO2に有意な変化は認めなかった。顎間固定は呼吸、循環動態に変化を与えないものの、明らかに生体に加えられたストレ スである。今後は患者が顎間固定によって受ける肉体的ストレスについても、積極的な対応が必要であると本研究結果は示唆している。

谷野 文宣, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

姿勢による咬合接触状態の変化―座位と仰臥位での咬合接触状態の変化について―

現在、我々は間接法によって歯冠補綴物を製作しているが、補綴物を口腔内に試適した時に咬頭嵌合位より200~300μm高くなることが知られて いる。それ故に歯冠補綴物を支台歯に合着する際に、咬合調整を行わなくてはならない。臨床では咬頭嵌合位が安定している患者に対しては座位だけでなく仰臥 位で咬合調整を行うことがある。本研究は、座位と仰臥位との咬合接触状態を比較し、仰臥位での咬合調整の妥当性を検討するものである。
被験者は顎口腔系に特に異常を認めない成人9名とし、座位および仰臥位における軽度噛みしめ時の咬合接触をブラックシリコーンを用いて採得した。採得した 咬合接触記録を、透過減衰法を用いて、犬歯、第一、第二小臼歯および第一、第二大臼歯の30μm以下の咬合近接域を測定した。分散分析の結果から第一、第 二大臼歯においては座位と仰臥位との間の咬合接触面積の有意な差が認められた(それぞれp<0.05、P<0.01)。従って、両姿勢時の軽度噛みしめ時 における下顎位は異なる可能性が考えられる。故に我々は咬頭嵌合位が安定している患者に対して歯冠補綴物の咬合調整をする際には座位で行うことが望ましい と考える。

保坂 瑞代, 昭和大学歯学部, 5年生

グロー放電プラズマ処理によりチタンの生体適合性は向上する

チタンは表面処理によってその生体適合性を修飾されることが知られている。このため現在市販されているインプラントシステムはそのほとんどが特徴的 な表面 構造を有している。グロー放電プラズマ(GDP)処理は、真空容器内で発生したプラズマにより材料のマクロの表面構造を変化させること無く、ぬれ性を劇的 に改善する手法であり、すでに工業界では広く用いられている。本研究では、GDP処理をインプラントの表面処理として応用すべく、GDP処理したチタン板 に対する骨芽細胞様細胞の接着性とその接着機構について検討した。その結果、本処理により血清中に存在する接着性タンパクの付着が向上し、チタンの細胞接 着性が改善されることが判明した。またGDPで処理したチタン板に接着した細胞は、増殖・分化のマーカであるストレスファイバーを強く発現していた。本研 究からGDP処理がチタン製インプラントの表面処理として有効であることが確認された。

宮崎 康雄, 愛知学院大学歯学部, 5年生

硬化時に変色する石膏の開発

石膏模型作製時の石膏硬化の判定には、おおよその硬化時間を参考にして練和からの経過時間の計測や、硬化時の熱変化を触知する方法などが臨床的に用 いられ る。しかしながら、実際の石膏使用時には混水比が必ずしも一定でないこと、あるいは環填温度が常に変化していることから、硬化時を確定する事は難しい。ま た、接触による温度感覚は、個人差が大きく、硬化中に印象から模型を撤去してしまい、細部の破折を生じさせてしまうことや、変形させてしまうようなことも 少なくない。そこで、石膏の硬化を的確に判断するため、普通石膏に感温顔料を混入することにより、硬化時の熱変化を視覚化し、硬化を客観的、かつ直感的に も認知できる石膏を試作した。その結果、試作石膏は温度変化と共に色彩が変化することが確認された。また、石膏の硬化判定は石膏の色が桃色から白色に変化 する事によって判断された。物性試験からは、試作石膏の歯科理工学的性質は市販の石膏と同程度であることが確認され、臨床応用の可能性が示唆された。

室井 悠里, 大阪歯科大学, 5年生

上級生は歯科材料の取り扱いが上手か

私たち歯学生にとって、歯科材料を取り扱う技術を習得することは必須である。はたして、本当に大学の実習で技術を習得できているのだろうか。私は歯 科技術 の習得を反映すると考えられる操作として、印象採得、石膏注入、セメント練和に注目し、この研究で1年から5年までの各学年の歯学生に操作してもらった。 そしてその習熟度を数値化し、データを統計学的に処理し、比較検討した。その結果、印象採得と石膏注入に関しては、5年生と1年、2年生との間に有意差が 認められた。また、2年生と3、4、5年生との間にも有意差が認められた。一方、セメント練和において、圧縮強さでは学年間に有意差は認められなかった。 以上、調べた3操作について、上級生ほど習熟度が高い傾向にあることがわかった。しかし、取り扱い操作によっては学年差が認められないこともあり、実習時 期、実習回数、勉学意欲、調査時期や測定方法などの因子も関与していることが考えられた。

山口 聡子, 九州大学歯学部, 5年生

不正咬合と表情の関係について

私は現在歯科矯正治療を受けている立場から、治療前後で硬組織からでは分からない顔の全体的印象がどのように変わるかに興味を抱き、本研究を行なっ た。正 常咬合である学生に、上顎前歯前突、下顎前歯前突、上下顎前歯前突になるような義歯を装着し、人工的に不正咬合をつくった。そして正常時と各々の不正咬合 時(義歯装着時)との笑顔における動きと不正咬合の種類によるスマイルの特徴を比較した。口唇の動きは、正常時で下口唇、上顎前歯前突では上口唇、下顎前 歯前突では口角部が初めに動いた。上顎前歯前突ではスマイル時に上口唇と口角部側方領域、下等前歯前突では下口唇と口角部側方領域で正常時との差がみられ た。上下顎前突では上下口唇に限局して差が見られた。以上のことから各々の不正咬合は、口唇周辺の筋肉の動きに影響を与えスマイルに特徴的な変形をもたら しており、治療による表情の変化について前もって知ることができれば、患者の好都合になると考えられた。

吉田 尚史, 鶴見大学歯学部, 4年生

根管治療におけるイオン導入法のチュアーサイドでの基礎的評価システムの開発

近年、感染根管治療の成否は根管内無菌化が完全かどうかに左右されることが再認識されているが、実際の無菌化の確認は徹底されておらず、各種薬剤の 客観的 評価法も確立されていない。最近、広く根管貼薬剤に使われてきたホルムクレゾール(FC)は、難治性感染根管の一病原体であるCandida albicansに対し不完全で、これに対し銀系薬剤のイオン導入法によって完全に除菌できたという報告がある。そこで、実際に難治性感染根管からしばし ば分離される好気性、嫌気性菌、真菌の7菌種を用い、イオン導入の効果を客観的に評価するシステムの開発を試みた。一定量の菌を寒天培地に混釈し、アンモ ニア銀、サホライド、ヨードヨード亜鉛を用い、各10mA分通電した。培養後、形成された阻止円の直径で効果を判定した結果、通電のみでの除菌効果は低 く、併用する薬剤によって各菌の感受性が異なることが明らかとなった。特にサホライドは効果が高く、アンモニア銀、ヨードヨード亜鉛は菌によっては効果が 低いが、嫌気性菌にはどちらもかなり有効であった。したがって、イオン導入を適切に用いることで完全無菌化が期待でき、このシステムをチェアーサイドで用 いることで、最適な条件決定が可能となると思われた。

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