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第5回大会

1999 年 9 月 1 日

第5回大会 1999年(平成11年)8月20日 参加校 15校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:横山 享子, 日本大学歯学部, 6年生

簡易血糖測定機器による不正咬合者の咀嚼能率の評価

不正咬合者の咀嚼能率を簡易血糖測定機器で客観的に評価する目的で、個性正常咬合を有する正常者20名と不正咬合者20名に主咀嚼側で10秒間グミ ゼリー咀嚼を行なわせた。まず、分光光度計によるグルコースの溶出量と簡易血糖測定機器によるグルコースの溶出量との関係を調べた結果、高度に有意な正の 相関が認められた。これは、血糖測定機器によりグルコースの溶出量を正確に測定でき、臨床応用できることを示すものと考えられる。次いで、咬筋筋活動のサ イクルタイムと積分値、グルコースの溶出量について、両群間で比較した。サイクルタイムは、正常者の方が不正咬合者よりも短く、咬筋筋活動とグルコースの 溶出量は、正常者の方が不正咬合者よりも大きく、いずれも両群間に有意差が認められた。これらの結果は、正常者の方が不正咬合者よりも速く強い咀嚼力でグ ミゼリー咀嚼を行い、良好な咀嚼能率を示すものと考えられる。

準優勝:林 能理子, 徳島大学歯学部, 5年生

マクロライド耐性口腔レンサ球菌の分離およびその耐性機構

口腔領域では様々な感染症が発症するが、その原因菌の30~50%が口腔レンサ球菌である。歯科領域でも使用されるマクロライド系抗菌薬に対する耐 性菌が増加しているとの報告があるため、口腔レンサ球菌であるStreptococcus mitisグループのマクロライド耐性菌の分離、およびその耐性機構の検討を行った。1995年に分離された84株のうち7%はエリスロマイシン高度耐性 株であり、10%は中等度耐性株であった。高度耐性株は誘導型耐性であることが確認され、遺伝子としてerm遺伝子がPCR法により検出された。中等度耐 性の3株からmefE遺伝子が検出された。以上、口腔レンサ球菌にはマクロライド耐性菌が存在し、その耐性機序にはermによる誘導型、mefEによる排 出型などがあった。検出された耐性遺伝子は他の菌株、菌種に伝達する可能性があり、引き続き耐性パターンの追跡を行う必要がある。

第3位:善入 雅之, 大阪歯科大学, 6年生

歯科用ゴム手袋の諸性質から臨床使用を考える

歯科用ゴム手袋は臨床教育にも組み入れられているが、信頼性、強さや歯科材料の付着性などの問題点も指摘されてきた。それらの問題点の改善が進んで いると聞くが、現状を知ることにより、それらに対応した使用法が可能になると考え、本研究を行った。その結果、引張強さおよび伸び以外に、手袋素材の違い によるピンホール、材料の付着性あるいはシリコーン印象材の重合への影響に顕著な差は認められなかった。このことから従来の問題点の改善が進んでいること がわかった。しかし、臨床使用においては、装着感、操作性、耐久性、価格や利便性などの諸性質を総合して選択される。今回、差の認められた機械的性質は、 それらに大きく係わる重要な性質である。今後の歯科用ゴム手袋使用に当って、その注意点や選択基準について一つの示唆が得られたと同時に、更なる改良の必 要性のあることもわかった。

荒木 一将, 愛知学院大学歯学部, 6年生

CCDカメラによる、液-固相における金属の密度測定

歯科精密鋳造では、鋳造用合金の密度・表面張力・粘性値などの高温物性を知ることが適正な鋳造体を得るうえできわめて重要である。特に、合金の凝固 時あるいは固相領域における密度変化は、鋳造体の収縮補正にとって不可欠な物性といえる。歯科精密鋳造における収縮についての基礎データを蓄積するため に、これまでにも静滴法を基礎とした装置による種々の金属密度測定が行われてきた。今回、光学測定系にデジタルカメラを、解析系にコンピューターを導入 し、より迅速な測定ならびに金属密度測定の誤差の減少を試みた。基準物質に純金を選択し、校正を行った結果、改良された測定系では、従来法と比較して飛躍 的に測定時間が短縮され、さらに既存データとの一致もきわめて良いことが判明した。

石田 陽子, 新潟大学歯学部, 6年生

咽頭歯の微細形態学的研究 - 新しい硬組織観察法の応用 -

最近、骨などの硬組織微細形態を非破壊的に2次元・3次元像として観察できるμCTの応用が脚光をあびている。そこで本研究は従来形態学的観察が困 難とされていた魚類咽頭歯に着目し、μCTを用いてキンギョ咽頭歯の立体微細形態を明らかにするとともに、従来用いられてきた組織学的方法による観察も行 い、 μCTの有用性を比較検討した。その結果、contact microradiographyに匹敵する高分解能のCT像が得られ、咽頭歯が咽頭骨と骨性結合している状態が明瞭に観察された。また3次元再構築像で は、頭蓋を構成する骨が立体的に観察でき、咽頭歯およびその歯胚と咽頭骨の空間的位置関係が明瞭に観察された。SEMと比較すると、試料作成過程における 構造の破壊がなくμCTが容易でかつ非破壊な手法であることが確認された。本法を応用する事によって今後各種動物等の硬組織研究、特に比較解剖学的研究に 新たな展開が期待される。

岩坂 憲助, 明海大学歯学部, 6年生

アスコルビン酸関連化合物等の酸化還元剤による細胞死誘導における過酸化水素の関与

アスコルビン酸誘導体による細胞死の誘導における過酸化水素の関与について、クリスタル紫染色法及びFACS解析を用いて検討した。ラジカルを産生 する誘導体は、ヒト口腔扁平上皮癌細胞、ヒト唾液腺腫瘍細胞やヒト前骨髄性白血病細胞の増殖を濃度依存的に抑制したが、ラジカルを産生しない化合物は不活 性であった。過酸化水素を分解する酵素であるカタラーゼは、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、過酸化水素、没食子酸の細胞障害活性を有意に抑制した が、抗癌剤であるベンジリデンアスコルべート(SBA)、メトトレキセートやドキソルビシンの細胞障害活性に対しては、殆ど影響を与えなかった。SBAに よる細胞障害活性の誘導は過酸化水素以外のメカニズムが関与していると思われた。アポトーシスに関与するとされるカスパーゼ3の阻害剤は、これら化合物の 細胞死誘導を完全には阻止できなかった。

小野 法明, 東京医科歯科大学歯学部, 3年生

銀配合リン酸カルシウム化合物によるStreptococcus mutansの付着と増殖の抑制

齲蝕とは硬組織の破壊であり、歯面に付着・増殖し齲蝕を発生させるS. mutansの能力を阻害する因子を保存修復材料に導入することは齲蝕発生の防止に効果があると考えられる。実験には2種類の銀配合リン酸カルシウムを用 いた。ACは第三リン酸カルシウムでありCa分子が一部Ag分子によって置換されている。NBはハイドロキシアパタイトでありCa分子が一部Ag分子に よって置換されているほか、Ag分子が結晶内に吸着保持されている。ACに比してNBのAgイオン溶出量は大きい。これらのS. mutans付着および増殖に対する抑制効果を、これらを混合したセメント表面への付着、およびこれらを段階希釈した溶液中における培養を用いて評価し た。S. mutansの付着はACおよびNBの双方で抑制され、増殖は高濃度のNB溶液下において抑制された。以上の結果より銀配合リン酸カルシウム化合物はS. mutansの付着と成長の抑制に有効であり保存修復材料に導入可能であると考えられる。

小林 良喜, 日本大学松戸歯学部, 5年生

最も齲蝕抑制効果のある市販飲料水はどれか?

近年、国内において缶あるいはボトル入りの茶及びコーヒー飲料水が発売され、その消費量は飛躍的に増大した。茶類やコーヒーから抽出されるポリフェ ノールは齲蝕抑制効果があることが報告されている。そこで、現在最も消費されている市販の缶入り茶類及びコーヒーの齲蝕抑制効果について検討してみた。市 販の缶入り緑茶、紅茶、ウーロン茶を自由摂取させ、齲蝕誘発飼料(Diet 2000)を与えたマウスを摂取開始70日後に屠殺し、下顎骨を取り出した後に臼歯を染色し、実体顕微鏡にてカリエススコアを測定した。なお、コントロー ルとしては、蒸留水を自由摂取させた。その結果、コーヒーを与えたグループは他の市販飲料水を与えたグループと比較し、明らかにカリエススコアの低値を示 した。また、最も高値を示したものは、蒸留水群であった。茶類では緑茶を与えたグループに高値が示され、齲蝕抑制効果が他の茶類と比べ少ないことを示し た。

佐藤 秀夫, 鹿児島大学歯学部, 4年生

歯科医療における全人的ケアの実践を目指して:ある大学におけるアンケート調査に見るデンタル・プロフェショナルの「白衣」に対する認識を中心とした考察

今後の歯科医療の重要課題に「全人的ケア」がある。本研究は大学歯学部のデンタル・プロフェショナルの「白衣」に対する意識調査を通し、現状考察と 学生への「全人的ケア」教育の為の提言を試みた。アンケートの結果、回答者の(1)約80%が白衣を自分自身のみを守る「防護服」ととらえ、(2)約 60%が診療以外でも白衣を着用し、(3)現実の歯科医-患者関係において約80%が白衣が心理的に左右すると考え、(4)約40%が理想の歯科医師像に 白衣は必要ない、と考えている。これらは医療者の白衣への安易な依存あるいは無関心という現状を表しているのではないかと考えた。このような医療者自身の 自己中心性は患者の全人的ケアの実現を阻む一原因であると考え、西洋・東洋の倫理学諸理論の中から初期仏教のモラル思想に着目した。そこでは「自己中心性 を減少することが、自己と他者とをケアする」と説明している。この考え方から、患者の「全人的ケア」のためには「医療者自身が自己を全人的にケアすること が必要である」という見解がうまれる。そこから、自己中心性に関する認識を中心とした歯学部学生へのモラル教育の必要性を提言する。

高岸 亜矢, 大阪大学歯学部, 5年生

咬みしめ時のヒト下顎頭の運動

歯列の形態や咬合状態などが咬みしめ時の下顎頭の運動に及ぼす影響について検討する目的で、以下の実験を行った。被験者として、顎口腔系に自覚的、 他覚的に異常を認めない健常者42名および顎関節に雑音、違和感などを自覚する者14名を用いた。各被験者の顎運動を6自由度顎運動測定装置にて記録する とともに、上下歯列模型を製作し、歯列の形態、上下歯の咬合状態の観察を行った。さらに、顎関節断層撮影を行い、下顎頭の形態及び位置を観察した。その結 果、全体の約2/3の被験者において咬みしめ時の下顎頭の移動量の左右差は0.2mm以下と小さな値を示したが、約1/3の被験者では移動量に明らかな左 右差が見られた。この左右差の原因について考察したところ、歯列の狭窄、過蓋咬合、反対咬合のような形態的な影響よりもむしろ、上下歯の咬合按触状態の左 右差による影響を強く受けることが示唆された。

中川 靖子, 北海道大学歯学部, 5年生

透明レジン床を用いたプレッシャースポットのビジュアル化

義歯装着後の痛みの多くは義歯床の不適合によるものだが、口腔内でプレッシャースポットを認識し調整することは必ずしも容易なことではない。本研究 では透明性を活用して義歯粘膜面調整の確実・簡便化を目的とした、クリアーレジンの義歯床への応用に関する評価を行った。歯槽堤を模した二つの山を持つ金 属製マスター模型からおこした作業模型上でレジンベースを作成し、マスター模型に戻したときの適合性を計測した。同時に接触状態をぺ一スト状の適合診査材 を用いて記録した。レジンベースはマスター模型には完全には適合せず、山の外側斜面の一部でのみ接触する傾向がみられた。調整による適合状態の変化は透明 レジンを通して容易に観察することができた。本研究の結果より、クリアーレジンを用いることにより経験の浅い歯科医にとっても、プレッシャースポットを容 易に視覚的に把握することが可能になり、より良好な適合を達成できる可能性が示された。

広沢 利明, 日本歯科大学新潟歯学部, 5年生

ラリンジェルマスク挿入の実習に関する評価

ラリンジェルマスクは全身麻酔中における気道確保の補助器具として有用であると同時に、その操作性の良さと気道確保の確実性から、現在では救急救命 士までその使用が認められている。本研究ではラリンジェルマスクの使用経験がない第5学年の36名を対象に、実習時間と手技の習得との相関関係を検討し た。その結果、説明とデモンストレーションのみよりも実技実習を受けたグループのほうが時間・確実性ともに評価が高かった。又、実技実習を行う回数を増や すことで有意な挿入時間の短縮化は見られたが、確実性に違いはなかった。これはラリンジェルマスクの挿入が、未経験者であっても数少ない練習により確実に 行えるようになることを意味している。歯科診療中の不慮の事故に対する緊急気道確保は困難な状況が想定される。本研究結果は、ラリンジェルマスク挿入手技 の実技経験が歯科領域における気道確保の一手段として有効なものであることを示唆している。

真野 美弥子, 朝日大学歯学部, 5年生

チェアーサイド嫌気培養システムを用いた臨床症状と根管内細菌との相関- 根管治療時における臨床症状と根管内細菌検査 -

根尖病巣を有する症例においては、症状の発現に口腔細菌が関与し、それらの症例から、偏性嫌気性菌がよく検出される。また、急性症状を有する症例か らは、偏性嫌気性のEubacterium, Peptostreptococcus, Prevotella, Peptococcus, などが優位に分離される。本検索では、チェアーサイド嫌気培養システムを用いて根管治療中の症状の発現と根管内細菌との関係について検討した。その結果治 療中の症状と根管内細菌の有無については相関性は認められなかった。

明石 靖史, 広島大学歯学部, 6年生

腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)αは歯根膜線維芽細胞の貪食能を促進する

歯周組織の炎症性破壊に重要な役割を演じる歯根膜線維芽細胞(PDLF)の貪食能に対して、tumor necrosis factor α(TNF-α)がどのように関与するかを明らかにする目的で、ラット臼歯部由来培養PDLF内に取り込まれる蛍光顆粒(直径0.5μm) 数を種々の条件下で観察した。その結果、1. TNF-αの濃度(10~300ng/ml)が高くなるにつれてPDLFの貪食能が亢進する。2. LPSの濃度(0.05~100ng/ml)が高くなるにつれてPDLFの貪食能が低下する。3. PDLFの貪食能は細胞の分化度により異なる。4. TNF-α及びLPSはPDLFにTNF-α産生を誘導しないことが明らかとなった。今回用いたin vitroのassay系はコラーゲン線維の貪食を対象としたものではないが、歯周炎に際してみられるPDLFによるコラーゲン貪食の亢進は、LPSの直 接的作用によるものではなく、炎症の成立、進展に伴って歯周組織構成細胞や浸潤細胞の産生するTNF-αの関与による可能性が示唆された

龍 信之助, 日本大学歯学部, 5年生

臨床における可視光線照射器の重要性について

可視光線をその硬化に応用した歯科材料の使用頻度は、これらの製品が有する良好な操作性などから増加しており、この重合硬化に必要な可視光線照射器 (以後、照射器)の重要性も高まってきている。そこで、現在使用されている照射器の実態を把握するために、付属歯科病院で使用されている照射器について、 その使用状況について調査した。また、光強度の低下が、光重合型レジンの物性のなかでも臨床上重要と考えられる歯質接着性について、象牙質接着強さを測定 することによって検討を加えた。その結果、臨床では光強度が低下した状態で照射器を使用していることが多く、また、光強度の低下した状態で製作された試片 の象牙質接着強さは有意に減少しており、照射器を定期的にチェックすることの重要性が示唆された。

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