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2013 年 6 月 19 日 のアーカイブ

第18回大会

2013 年 6 月 19 日 コメントはありません

第18回大会 2012年(平成24年)8月17日 参加校22校
タイトルおよび発表内容要旨 (上位入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝/日本代表 – 基礎部門 第1位:大畑 八重,北海道大学歯学部,6年生

繊維芽細胞は腫瘍微小環境でPTHrPによりCAFへ誘導される

近年、腫瘍をとりまく微小環境が注目を浴びている。腫瘍間質に存在する線維芽細胞c a n c e r -a s s o c i a t e d fi b r o b l a s t s(C A F)は、正常細胞とは異なった形質を発現することが明らかになりつつあり、がん細胞との相互作用の重要性が注目されている。しかし、がん細胞がC A Fを誘導するメカニズムの詳細については未だ不明な点が多く残っている。
我々は、口腔がん細胞株が骨転移の頻度が高い前立腺がん細胞株に比べても高いP T H r P 発現がみられることを明らかにし、P T H r PがC A F 誘導効果をもつのではないかと考え 実験を行った。通常培養ではC A FのマーカーαS M Aの発現がほとんどみられない線維芽細胞を、P T H r P 産生口腔がん細胞上清で培養したところ、増殖活性やαS M Aの発現が亢進することが分かった。さらに線維芽細胞にはP T H r P 受容体の発現が見られ、P T H r P 発現口腔がん細胞によって線維芽細胞のE R Kの活性化が起こることが分かった。以上の結果は、P T H r Pは腫瘍微小環下の線維芽細胞をP T H /P T H r Pレセプターを介したE R Kのリン酸化を介してC A Fに誘導していることが示唆するものであった。

準優勝 – 臨床部門 第1位:八幡 大悟,北海道医療大学歯学部,5年生

ユーグレナを活用した飲むマウスリンスの開発―高齢者と被災者のオーラルケア―

自分自身で歯磨きのできない高齢者等にとって、マウスリンスは有効且つ簡便なオーラルケアの方法である。しかし市販のマウスリンスは合成化学物質を含み、誤飲リスクの高い高齢者等が日常的に使うには極めて危険である。その安全性を実現するため、豊かな栄養素を含み、優れた食料で且つ安全性が確認されているユーグレナを活用し、日常のオーラルケアを可能にすると共に、使用後に飲むことで栄養補給にも役立つマウスリンスの開発を試みた。
ユーグレナ粉末から調整した水溶性画分の、歯周病原性細菌や口腔生体細胞等への影響を検討した結果、歯周病の主要原因菌であるP. g i n g i v a l i s 等を殺菌し、歯周病原因子のジンジパイン活性を抑制した。一方, 歯肉線維芽細胞等の生細胞には影響がなく、炎症性サイトカインの誘導能も認められなかった。更に、同画分を用いた試作マウスリンスは、ヒト口腔内で、歯周病巣から優位に分離されるグラム陰性菌の割合を減少させた。
以上の結果、ユーグレナを活用したマウスリンスは、安全で歯周病の予防に有効であることが示され、高齢者のみならず、飲料水や食料不足の被災者のオーラルケアと栄養補給にも有用であると推定される。

基礎部門 第2位:赤嶺 翠林,広島大学歯学部,5年生

歯周病菌が産生する殺細胞毒の成熟化に必要なものは?

歯周病原性菌の中で殺細胞活性を産生する菌は極めて稀で細胞膨化毒素( C D T )を産生するAggregatibacter actinomycetemcomitans ( A a )はその代表である。C D Tは組織破壊に関与し、A a C D TはA , B , Cのサブユニット構造をとり、形成過程でC d t AからC d t A’へのプロセッシングを経ることが知られている。本研究の目的は、C d t Aのプロセッシングに関わる酵素を明らかにすることである。A a C D T 発現大腸菌の分画により、プロセッシングは膜もしくはペリプラズム画分で起きること、プロテアーゼ阻害剤を用いた実験から、セリンまたはシステインプロテアーゼがプロセッシングに関与する可能性が示唆された。プロテアーゼ遺伝子欠損株を用いた実験より、ペリプラズムおよび外膜に存在する有力なプロテアーゼ候補を得た。更に、プロセッシングを受けたC D T 複合体はより強い細胞傷害性を有することも明らかとなった。以上より、ペリプラズムまたは膜に存在するプロテアーゼがCdtAプロセッシングに関与し、A.aの歯周病原性発揮において重要であり、関与する酵素は、歯周病治療薬の標的となる可能性があると考えられた。

秋田 和也, 徳島大学歯学部, 4年生

歯の喪失は力の要因によって最後臼歯から始まる?

近年、メンテナンスされた歯列において齲蝕、歯周病によって歯が喪失することは少なくなり、歯の破折など力の管理がクローズアップされている。本研究は、「最後臼歯には過大な力が加わりやすく、喪失リスクも高い」という仮説を、文献的考察、疫学的調査、模型実験から検討した。
厚生労働省歯科疾患実態調査の分析から歯の寿命は、上顎では第二大臼歯が、下顎では第一大臼歯が最初に喪失する傾向にあり、相対的に第二大臼歯の喪失が第一大臼歯の喪失に比べて早くなっている傾向が認められた。文献検索では力による歯の喪失に関する論文は臨床報告以外に見いだすことができなかった。疫学的調査では、遊離端欠損のインプラント治療患者において、最大咬合力発現部位は2 9 . 3%が最後方歯冠、5 1 . 7%が最後方歯冠より一歯前であった。模型実験では、第二大臼歯で食品破砕をしたときに、力は第2大臼歯のみに伝達されるのに対して、第一大臼歯では、隣在歯にも力が伝達されることが示された。
第二大臼歯は第一大臼歯よりも過大な力が加わりやすい状況にあり、歯の喪失は最後臼歯から起こる傾向に推移していることが示唆された。

井澤 侑美, 日本大学松戸歯学部, 5年生

市販消臭スプレー及び各種飲料水等の口臭抑制効果について

近年、口臭を主訴として来院する患者さんが増加している。口臭は野菜が腐った臭い、魚の血なまぐさい臭い、トイレの臭いなどと表現されるような悪臭であり、周囲の人に不快感を与える。口臭の原因は、舌苔などいわゆる生理的口臭を引き起こすとされる硫化水素、歯周病に起因するメチルメルカプタン、全身疾患に起因するジメチルサルファイドの3つとされている。口臭を予防するためには、これらの原因を取り除く必要があるが、即座の対応としてスプレータイプの消臭剤が市販されている。しかし、消臭剤の効果について明確に記載されていない。
本研究の目的は市販の消臭スプレーの効果を調べることおよび消臭効果があると言われている各種飲料水等の消臭効果について調べることである。
消臭のために用いた材料は市販消臭スプレー、緑茶、ウーロン茶、ハーブティー(ミント)、レモン果汁、牛乳である。
結果、効果の差はあるものの、市販消臭スプレー、緑茶、ハーブティー、レモン果汁には口臭を消臭する効果が認められた。

応藤 光浩, 神奈川歯科大学, 5年生

安静時唾液と刺激時唾液における抗酸化能評価

【問題点】
唾液は抗酸化作用を有するが、安静時と刺激唾液の抗酸化能評価に関わる報告はこれまで行われていない。
【仮説】
安静時唾液と比較し刺激時唾液は、単位時間あたりの分泌量が多いことが知られているため、安静時唾液よりも抗酸化能が亢進していると考えた。
【方法】
被験者はインフォームドコンセントが得られた健康な男女2 0 名(年齢2 0‐3 0歳、非喫煙者、男性1 4名、女性6名)を対象とし、唾液のサンプル採取を行い、遠心分離機へかけた。その後、電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、安静時と刺激時唾液のR O Sであるヒドロキシラジカル、スーパーオキシド消去率、抗酸化酵素であるスパーオキシドディスムターゼ(S O D ) 活性をそれぞれ測定した。
【結果】
ヒドロキラジカル消去率では,両群間で有意差は認められなかった。一方、スーパーオキシド消去率は刺激時唾液において有意に高値を示し、さらにS O D 活性も有意に増加していた。
【結論】
本研究結果により、刺激時唾液のS O D 活性が高いことが示された。また、S O D 活性が高いとき、スーパ-オキシド消去率(抗酸化能)は高いことが示された。

堅田 千裕, 大阪大学歯学部, 4年生

歯質のミクロ構造異方性を考慮した三次元有限要素解析

歯質の破壊現象のメカニズムを理解することは、これらの問題に対する新しい予防法や対策を確立するうえで重要である。これまで三次元有限要素解析により破壊リスクを評価した数多くの研究が行われてきたが、天然歯や修復材料の複層構造が再現されているものの、等方性材料として扱われており、エナメル小柱や象牙細管などの歯質特有の解剖学的特徴に起因する異方性が考慮されていなかった。本研究では、これらのミクロ構造モデルを作製し、異方性を表すX、Y、Z 軸方向の縦弾性係数を均質化解析により求めた後、マクロ構造モデルに対して三次元有限要素解析を行った。X、Y、Z 軸方向の縦弾性係数は、エナメル質が7 . 1 G P a、3 . 9 G P a、3 9 . 8 G P a、象牙質が1 6 . 8 G P a、1 6 . 8 G P a、1 8 . 1 G P aであった。等方性材料と異方性材料で最大主応力分布を比較した結果、エナメル質については、歯頚部で明らかな差異が認められ、象牙質については、異方性材料とした場合に、より歯軸方向に最大主応力が集中する傾向を示した。以上より、三次元有限要素解析における破壊リスク評価には,歯質のミクロ構造に起因する異方性が重要であることが示唆された。

佐藤 萌, 東京医科歯科大学歯学部, 5年生

高速シーケンサーによるゲノム配列決定および比較解析に基づくA群レンサ球菌の病原性獲得機構の解明

口腔には400 – 700種類の細菌が生息し、これらの細菌が要因と考えられる心内膜炎や骨粗鬆症といった全身疾患の発症、糖尿病の悪化、早産児の低出生体重との関連なども報告されている。さらに、口腔細菌の代謝産物が、細菌間でのコミュニケーションやバイオフィルム形成、さらに宿主細胞と相互作用し、炎症応答を引き起こすことなどが判明している。
多くの病原性細菌は、バクテリオファージ(ファージ)を介した遺伝子伝播によって抗生物質耐性や病原性遺伝子を獲得し、病原性を変化させていることがわかっている。しかし、この溶原・溶菌化の制御機構は大腸菌以外ではほぼ未知である。
そこで、口腔の優占種でレンサ球菌属の基準株であり、異なるファージの取り込みにより多様な病態を示すと考えられるA 群レンサ球菌の全ゲノム決定・比較ゲノム解析を行い、ファージの制御因子から病原性獲得機構の解明を試みた。その結果、溶原化を制御する新たな因子として、p r o p h a g e a n t i -r e p r e s s o rを見出した。
本成果は、口腔における病原細菌のそのものの抗生物質による制御のみならず、病原因子の新たな細菌への伝搬を阻害するという新たな創薬開発が可能であることを示している。

四方 教子, 大阪歯科大学, 5年生

生薬系抗菌物質による抗菌性を添加した歯科用材料の研究

本研究では、抗菌義歯の装着による要介護高齢者のQuality Of Life(QOL)向上を最終目的として、抗菌物質を添加した歯科用材料の抗菌性の評価、ならびに、抗菌物質の添加方法について検討を行った。生薬系抗菌物質として、ヒノキチオール、タンニン酸、シノメニン、サポニン、キトサンを用いた。デンチャープラークの主な原因であるカンジタアルビカンスあるいは常在細菌である黄色ブドウ球菌を用いたハローテストによる抗菌性、および、審美性の観点から評価した結果、ヒノキチオールがもっとも優れた抗菌物質であることが明らかとなった。本研究の遂行によって得られた結果をもとに抗菌義歯を開発し、メンテナンスの負荷を低減した抗菌義歯が要介護高齢者に普及することで、食生活の充実によるQ O L 向上が期待される。さらに、義歯装着によって口腔内の菌増殖を抑制できることから、健常な義歯使用者にとっても誤嚥性肺炎のリスクを低減できると期待される。

志渡澤 和奈, 九州歯科大学, 6年生

「元気な子はよく育つ」のマウスiPS細胞を使っての解明

「元気な子はよく育つ」と言われているが、これは科学的にはどのような事を意味するのであろうか? 「元気な」は、活発な事、つまり交感神経が活発に働くこと、「よく育つ」は、成長する事、つまり骨芽細胞による骨形成が活発である事と考えられる。本研究では幹細胞から骨芽細胞への分化過程および骨形成にどのように交感神経から放出されるアドレナリン( A D )が関与するか、マウスi P S 細胞を使って検証した。マウスi P S 細胞をフィーダー細胞上で培養し、T G F -β添加培地で胚様体形成後、骨芽細胞用培地で3週間培養し骨芽細胞に分化させた。R T – P C R 解析で胚様体形成時にA Dレセプターの発現が認められた。また、骨芽細胞用培地にA Dを添加すると、骨形成が促進された。さらに、半定量的R T -P C Rで骨芽細胞の分化を表すR u n x 2の発現もA D 添加で約1 . 5 倍になった。以上の結果より、A Dレセプターは個体分化の早期に発現し、成長の早い段階からA Dの影響を受けていること、また、A Dの添加により骨芽細胞分化と骨形成の促進される事が明らかとなった。従って、交感神経が活発に働く「元気な」状態では、A Dを介して骨の成長を促す事が示された。

滝沢 友里香, 東京歯科大学, 4年生

放射線粘膜炎に対するプロタミンの効果

頭頸部癌の放射線治療後には、唾液腺機能不全や放射線粘膜炎による唾液分泌不全や口腔内の灼熱感を伴うことが多い。対処法としては人工唾液や催唾剤などがあるが治癒を目的として用いられていない場合が多い。低分子プロタミン(L M W P)は細胞障害修復効果のあるアルギニンに富むことから放射線性唾液腺障害により減少した口腔内水分量の回復効果ならびに舌潰瘍に対する治癒効果があると仮定した。9 週齢雌性C 3 H / H e Nマウスを用いて放射線6 G yまたは7 G y( 実効線量)を1日1 回、5日間連続照射を行い、照射終了後1日1 回、5日間L M W P 含有シートを舌根部に貼付した。L M W P適用群(L M W P ( + ))では口腔水分量が回復し、舌潰瘍部はL M W P 非適用群(L M W P ( – ))と比べ減少が認められた。舌粘膜炎初期では有棘細胞層の肥厚が認められ、後期では上皮層の欠落が認められるが、L M W P ( + )では( – )に比べ進行の程度が遅く回復効果がみられた。これらの結果から、L M W Pの口腔粘膜上皮に対する保護効果ならびに唾液分泌の改善効果が認められたことから細胞障害修復効果が示唆され、放射線性唾液腺障害ならびに舌粘膜炎に対して有用であった。

武内 柚香里, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 3年生

学内と本学歯科病院におけるPC端末の汚染状況と対策

(問題点)
近年、電子カルテが積極的に導入され、不特定多数の人がコンピューター( P C )を使用する頻度が増加している。その反面P Cによる手指の汚染に対する認識は浅く、M R S Aなどの接触感染の媒体となる可能性が指摘されている。
(仮説)
不特定多数が使用するP C 端末の汚染状況を精査し、各種消毒剤の有効使用により接触感染および院内感染の防止に寄与できる。
(方法)
学内のI Tセンター、本学歯科病院におけるP C 端末の菌を採取する方法としてふき取り法を用いた。拭き取った試料を連続段階希釈し、その希釈液を培地に接種しコロニー計測法で菌数を算出しグラム染色ならびに同定検査を行った。消毒後も同様に行い総菌数を求め比較した。
(結果)
ITセンターの総菌数の平均は335±85個であった。本学歯科病院の総菌数の平均は230±88個であった。総菌数およびブドウ球菌の総菌数に占める比率は各階で差が認められた。いずれの消毒剤でも消毒前に比べ菌数は減少した。一日経過すると消毒前と消毒後ではあまり差が見られなかった。
(結論)
不特定多数の人が使用するP C 端末は細菌汚染が確認され、消毒剤使用後、一日経過すると汚染菌数は元に戻る。PC 端末を常に清潔に保つ条件として毎日1回消毒剤でキーボードを清拭することである。

中尾 寿奈, 鹿児島大学歯学部, 6年生

Low-Intensity Pulsed Ultra Sound (LIPUS)が歯周組織由来細胞に及ぼす影響
-臨床応用への可能性を探る

L I P U S ( L o w – I n t e n s i t y P u l s e d U l t r a S o u n d )は骨の代謝を促進させる効果から骨折治療に用いられている。しかしながら、L I P U Sの炎症性疾患への効用は不明である。
今回口腔内炎症性疾患におけるL I P U Sの臨床応用の可能性を探る目的で、マウス骨芽細胞株MC 3 T 3 -E 1、およびマウスマクロファージ株RAW 264 . 7にLIPUS 刺激(30~120mWcm3)を与え、組織破壊に関与することが知られているM M Ps、そのインヒビターであるT I M P s、および数種類のケモカインのmR N A 発現レベルに対するL I P U Sの影響を、リアルタイムP C Rを用いて解析した。
MC 3T 3-E 1におけるMMP 2の恒常的発現量はLIPUSにより有意に低下した。また、LPS 刺激によって誘導されるケモカイン2種(C X C L 1、C C L 1 0)のL P S 刺激後m R N A 発現レベルも、M C 3 T 3 – E 1のL I P U S 刺激により有意に低下した。これらの結果より、L I P U Sは炎症性疾患である歯周病による組織破壊や無歯顎の経時的骨吸収の予防に有効な可能性があると考えられる。

中島 瑠奈, 朝日大学歯学部, 5年生

口腔がんの診断に応用できる前癌病変マーカーの開発

口腔癌の前癌病変および境界病変の病理組織診断は、主に異型度の有無を中心に診断されているが、これは度重なるW H O 分類による指針の改訂と共にその項目が増えただけで、組織的になされてきたとはいえない。このように基準が曖昧なままであるため、病理医の病理診断基準にも大きな差異が見られる。そこで、口腔癌の前癌病変および境界病変における遺伝子変異と組織型との相関を明らかにし、病理組織診断の診断基準や予後の指標となる新たなマーカーを見出して、上皮異形成や上皮内癌など、外科医や病理医が日常苦慮する症例の客観的な診断基準を確立していきたい。
(1)舌がんモデル動物を用いて、前癌病変に関連する遺伝子の選択を行う。
ラット舌癌モデルにおける発癌感受性遺伝子の検索があり、この背景をヒトと動物モデルとを統合して行う本研究は、E B Mに基づいた今後の口腔癌の治療指針には欠くことの出来ないステップであり、今後、口腔癌および前癌病変の分子・遺伝子診断法および治療法の開発にも寄与することが出来る。
(2)選抜された遺伝子( 予備実験で見出した細胞増殖に関連するR N A 結合タンパク質h n R N P K)を対象に、前癌病変の病理組織や血清における腫瘍マーカーになる抗体の開発を目指す。

中谷 貴恵, 昭和大学歯学部, 4年生

歯周病原細菌の硫化水素産生酵素の解析

口臭は主として、口腔内の剥離上皮や食物残渣、血清中の硫黄を含むアミノ酸を口腔内細菌が分解することによって生じ、その主要な原因物質は、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの揮発性硫化物と総称される物質である。特に、歯周病罹患者の呼気中からの揮発性硫化物検出量が多いことから、口臭の発生に歯周病原細菌が関与すると考えられる。我々は、歯周病原細菌の揮発性硫化物産生酵素が口臭の予防や抑制の重要な標的になると考えた。そこで、本研究では、歯周病原性細菌Prevotella intermedia, Fusobacterium nucleatum, Tannerella forsythiaの硫化水素産生を担うシステイン分解酵素ホモログを見出した。そのO R Fをタンパク質発現ベクターにクローニングし、組換えタンパク質を発現・精製し、酵素学的性質を解析した。その結果、ゲノムデータベースから見出したPI0305,FN0625,TF2783 遺伝子は、システイン分解酵素をコードすることが明らかになった。これらのシステイン分解酵素は、それぞれの菌の硫化水素産生に関与し、口臭の発生原因になっていることが推測された。これらのシステイン分解酵素のアミノ酸配列および酵素学的性質の類似性から、口臭抑制薬開発の有用な標的となる可能性が示唆された。

永島 百合, 鶴見大学歯学部, 5年生

抗菌ペプチドの歯周病に関与するプロテアーゼ阻害作用の検討

ヒト口腔粘膜で産生される抗菌ペプチドは、自然免疫に重要で耐性菌の出現は知られていないが、歯周炎治療への適応や効果は未だ検討されていない。
歯周炎の進行は歯周病原細菌のプロテアーゼだけでなく、歯周組織の炎症性マトリックスプロテアーゼでも促進される。多くのプロテアーゼは活性中心に金属イオンを含む。ヒト唾液腺で産生されるHistatin 5はヒスチジンを豊富に含み、金属イオンに結合する。Defensinはシステインリッチであるので、同様に金属イオンと結合しプロテアーゼ阻害効果を持つという仮説を立てた。
M u r e x i d e 溶液の呈色反応による亜鉛イオンキレート能を市販の合成抗菌ペプチドで検出したところ、各抗菌ペプチドには濃度依存的に認められた。しかしペプチド間で差があり、H i s t a t i n 5はD e f e n s i n s(h B D 2および3)と比較して非常に弱く、 h B D – 3はh B D – 2より強いことが明らかになった。
亜鉛結合に寄与する構造特性を推定するためペプチド構造解析を行ったが、典型的なジンクフィンガー構造などは認められなかった。今後、酵素活性阻害作用を示すかを検討する必要があると思われた。

蜂矢 眞也, 奥羽大学歯学部, 4年生

マウス舌の器官培養を使用した口腔カンジダ症の実験モデル

C. a l b i c a n sに対する抗真菌薬の薬理作用を明らかにするためには、適切な感染実験モデルが必要である。従来のin vivoの感染実験モデルでは、多くの手間を必要とする。そこで、マウスの舌を切除した後に、i n v i t roでその舌を器官培養する実験システムを考えた。
4 週令のメスのI C Rマウスの頸椎を脱臼してから、舌を採取した。採取した舌を2 4 w e l lのプラスチックシャーレのw e l l 内に入れた。そして、各w e l lに1% f e t a l b o v i n e s e r u m(F B S)含有R P M I 1 6 4 0 培養液を1 m lずつ加えた。さらに任意の菌数のC . a l b i c a n sを含有した1 % F B S 含有R P M I 1 6 4 0 培養液を各w e l lに0 . 1 m lずつ加えた。C . a l b i c a n sを含有しない1 % F B S 含有R P M I 1 6 4 0 培養液を各w e l lに加えたものをコントロールとした。3 7 ℃条件下で3日間培養した。
C. a l b icansの接種菌数が1 . 2×1 04と1 . 2×1 03では舌内部に侵入した菌数に大きな変化は認められなかった。しかし、1. 2×1 03では侵入した菌数が大幅に減少した。マウスの舌を器官培養し、そこにC.a l b i c a n sを1×1 04から1×1 05の菌数で接種することで、充分な菌数のC. a l b i c a n sが舌内に侵入することが明らかとなった。

浜田 芽衣, 岡山大学歯学部, 4年生

悪性腫瘍における血球系細胞の関与

生体は自己の恒常性を保つため、生体内に進入した異物を生体外へ排除する機構を備えている。免疫系の細胞は造血幹細胞より種々の血球系細胞に分化し、腫瘍の攻撃などを担うと考えられてきた。しかし近年の研究では、一部の血球系細胞が腫瘍の増殖を促しているとの報告がある。本研究では、ある血球系細胞が腫瘍内微小環境において腫瘍の伸展を助けると考え、腫瘍組織における血球系細胞の役割を解明するため全ての血球系細胞をG F Pで標識した。さらに、腫瘍細胞の転移モデル・原発モデルを作製して血球系細胞の動態を組織学的に検討した。
転移モデルでは、腫瘍細胞が充実性に増殖し、多数のG F P 陽性細胞が認められた。一方、原発モデルでは腫瘍胞巣内に広範な壊死巣が認められ、GFP 陽性細胞数は転移モデルに比べ有意に少なかった。以上のことから、悪性腫瘍におけるG F P 陽性の血球系細胞は、腫瘍胞巣内の血管新生に関与していることが示唆され、悪性腫瘍の増殖を促進した可能性がある。今後、腫瘍胞巣内で見られた血球系細胞の同定を行い、詳細な機能について検討していく必要があると考えられる。

原 弥革力, 松本歯科大学, 4年生

マウス歯髄におけるプロテオグリカン局在の検討

歯髄組織は象牙芽細胞、線維芽細胞、未分化間葉系細胞、血管および神経などからなるヘテロな細胞集団により構成されており、その性状の維持には歯髄の細胞外環境が重要であると推測される。私はプロテオグリカンが歯髄の細胞の分布や性状を規定する細胞外環境要因の1つとして機能していると予想し、プロテオグリカンのグリコサミノグリカン鎖とコアタンパク質の局在を免疫組織学的手法により解析した。その結果、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびバーシカンの局在は歯髄中心部に強く認められ、ヘパラン硫酸、パールカンは象牙芽細胞下層に明確な局在が観察された。バーシカンはヒアルロン酸結合部位を持つコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり、歯髄中心部ではバーシカン・ヒアルロン酸複合体が存在することが示唆された。パールカンはヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、象牙芽細胞下層のヘパラン硫酸分布はパールカン局在を反映していると考えられる。ヘパラン硫酸は種々の成長因子を保持することが知られており、それにより、象牙芽細胞下層において、象牙芽細胞様細胞への分化や、神経・血管誘導に適した微小環境維持に関与している可能性が考えられた。

松生 理恵子, 日本大学歯学部, 5年生

ワサビによる口腔ケアの有用性

口腔内には,約7 0 0 種類に及ぶ微生物が生息しており、日常的な口腔ケアが欠如するとそのバランスが崩れ、口腔のみならず全身性疾患を引き起こす。Candida a l b I c a n sは高齢者の口腔カンジダ症、そして消化器及び呼吸器系の重篤な真菌感染症の原因菌であり、酵母形から菌糸形への形態変換により病原性を発揮する二形性真菌である。演者はC. a l b i c a n sの増殖ならびに形態変換を阻害する新たな抗菌天然成分を検索し、その抑制機序について検討した。
C. a l b icansに対する抗菌効果を寒天拡散法で検討した結果、広く抗菌成分として用いられているが口腔での使用例のないワサビの抽出物、アリルイソシアネート(A I T C)のジェルが顕著な抗菌効果を示した。A I T Cは臨床応用を想定したレジンプレート付着C. a l b i c a n sの発育および菌糸形変換を抑制した。さらに、C. a l b i cansの菌糸形変換に関与する細胞内シグナル経路の遺伝子発現を抑制し、M A P k i n a s e c a s c a d e のC e k 1タンパクのリン酸化を阻害した。
これらの結果からA I T Cジェルは、口腔内のC. a l b i c a n s 増殖と病原性を抑制することが示唆され、高齢者のカンジダ症の予防、さらにQ O Lの向上に大きく貢献することが期待される。

水嶌 一尊, 新潟大学歯学部, 5年生

食物の認知が咀嚼運動に及ぼす影響

超高齢社会を迎え、食事介助を必要とする要介護高齢者が増加している。四肢の運動や咀嚼・嚥下機能に障害のある要介護者の食事介助では、食物の素材がわからなくなるほどに調理された食物を介助者がスプーンで直接要介護者の口腔内に運ぶという方法が一般的に行われているが、この方法では咀嚼前の食物の認知が十分に行われない状態で咀嚼・嚥下を行うことになる。私たちは同じ食材であっても、それが何であるか認知した状態とそうでない状態では咀嚼運動は異なるのではないかと考え、ゆでたエリンギ、タコ、鶏肉を試験食材に用いて咀嚼開始から嚥下までに要する時間(T M T)、食物の取り込みから臼歯部でのリズミカルな咀嚼が開始されるまでの時間(F T T)、咀嚼回数、咀嚼リズムの安定性を指標としてこの仮説を検証した。全ての食材で咀嚼前の食物認知が伴わない場合のT M Tはそうでない場合よりも有意に長かった。また、複数の食材で咀嚼回数、咀嚼リズムの安定性も咀嚼前の食物認知が伴わない場合とそうでない場合との間に有意さが認められた。このことは口腔摂取前の食物の認知はその後の咀嚼運動を円滑に行うために寄与していることを示唆している。

柳瀬 絵見, 長崎大学歯学部, 3年生

歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisのジペプチド産生レパートリーと担当ペプチダーゼの解明

P. g i n g i v a l i sは糖非発酵性細菌で、ジペプチジルペプチダーゼ( D P P )を含むプロテアーゼによってペプチドを分解し、生成ジペプチドを主に取込み栄養源として利用している。これまでP r o 特異的D P P I Vと疎水性アミノ酸特異的D P P 7が報告されていたが、昨年新たに酸性アミノ酸特異的D P P 1 1が発見され、またこれまで一種類の細菌でしか報告されていなかったD P P I I I 遺伝子の存在がゲノム解析より推定された。本研究ではP. gingi val i sのジペプチド産生レパートリーと担当ペプチダーゼを明らかにすべく4 種類の組換えD P Pを大腸菌発現系で発現し、そのジペプチド産生レパートリーを野生株( A T C C 3 3 2 7 7 )、各種D P P 欠損株、及びジンジパイン完全欠損株( K D P 1 3 6 ) 体のそれと比較検討した。D P P I I I、I V、7、1 1はそれぞれR R -、G P -、M L -、L D – M C Aを最適基質とすること、D P P 7は広範な基質特異性を有しP 1と共にP 2 位置(N 末)にも疎水性アミノ酸を好むことを発見した。また、R R – M C AはK D P 1 3 6では分解されないことから、A r g -ジンジパインがR R 分解を担当し、D P P I I Iは菌体表面ではなく細胞質に存在することが示唆された。以上の結果から、P. g i n g i v a l i sは3 種のD P PとA r g 及びL y sジンジパインにより多様なジペプチド産生能を有することが明らかとなった。

 

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